ただ、この確執も岡田さんの優しさがとかしていった。

最終的には和解をされています。吉永さんも両親を気にかけていたようですから、岡田さんも妻のためを思っての選択でしょう。“殺意を持った”なんて世間に発表する母親を受け入れたのですから」

 紆余曲折あった夫婦の歩みは今年で51年を迎えた。しかし、岡田さんが夫婦の物語から姿を消すことになった─。

 冒頭の場面に戻る。

夫の他界の3日後、現場に姿を見せた

2024年9月6日、吉永小百合は現場で何事もなかったかのように気丈に振る舞っていた
2024年9月6日、吉永小百合は現場で何事もなかったかのように気丈に振る舞っていた
【写真】夫の他界から3日後、落ち込むそぶりも見せずに映画撮影に臨んだ吉永小百合

 9月2日、吉永を乗せた車は、都内の病院を目指して高速道路を走り続けた。夫と、最期の別れをするために。

「この日、吉永さんは群馬県渋川市で2025年公開予定の主演映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』の撮影に臨んでいました。映画は登山家・田部井淳子さんの半生を描く物語です。岡田さんの病状も悪かったのでしょうが、共演者のスケジュールもありますから、迷惑をかけられないと予定どおり撮影に参加されたのでしょう」(前出・スポーツ紙記者)

 岡田さんは、妻の到着を待つかのように9月3日の午前1時15分に息を引き取った。吉永に看取られながら。

 壊れかけた自分を救い、その人生を大きく変えてくれた最愛の夫の死は、身を裂かれる思いだったはず。しかし、吉永は気丈に振る舞う。

 岡田さんが他界した3日後の9月6日、吉永の姿は埼玉県にあった。前述した主演映画の撮影に臨んでいたのだ。撮影が終わった同日午後4時過ぎ、共演者である佐藤浩市天海祐希が現場から帰る中、吉永もしっかりとした足取りで撮影現場を後にした。

「岡田さんの訃報が現場に伝えられたのは、発表と同じ9月13日でした。吉永さんは現場入りしたときも、つらそうな姿は微塵も見せず、いつもどおりの優しい笑顔で“いい作品を作りましょう”と挨拶されていて……。そんなことがあったと知り、胸が痛くなりました」(映画スタッフ)

 全力で女優という仕事に挑み続ける吉永の物語は、まだ終わらない。