印象に残っている被写体は、ブレイク前後に撮影したあの女性
近年では、壇蜜や加藤紗里といったセクシー系タレントとも仕事をしているが、撮影した被写体は数知れず。
本人は「あまりにも多すぎたから一つひとつ覚えてないな」と言いつつも、印象に残っている被写体として、ブレイク前後で撮影をしたこの人物の名前を挙げた。
「LiLiCoは無名のときに撮って、22年後、もう一度撮ったんだけど、売れる前と後で顔つきもまったく変わっててね。あれは本当にいい時期に撮らせてもらったと思ってる。
最近は撮りたくなるような光を放っている子も少ないよね。いわゆる“ただの美人”なんて俺は興味ないから。
美しいに越したことはないし、写真になりうるグレードってのはあると思うけど、存在そのものがすでに面白いってやつは本当にいなくなったと思う。
タイミングがあればホラン(千秋)なんかは撮ってみたいと思ってるけど」
かつての被写体は、先述したように「感じてしまう」人もいれば、ヌードということに本気で抵抗する人も少なくはなかったという。
「相手もこの“テンメイ”に撮られるってことを意識はしたろうし、泣いた子だっているしね。
俺は遠慮をしないでしょ。若さや美しさといった、見た目を越えたところにある俺の感じる“君の実存のすべて”を撮りたいわけだから。
でも、嫌がったって泣いたって、仕上がりを見れば“これ、私?”ってなるんだよ。自分の想像している自意識とは違う形の自分を、俺が表現できたら喜ばれる。それをやってなんぼだよ、写真家なんて」
常に新しい技術を。目指すは“AI加納典明”
御年82歳となる加納さんだが、常に新しいことを取り入れる姿勢は変わっていない。
近年は写真に加えて、絵画への挑戦を続けている。
「キャンバスにアクリル絵の具で描いたり、デジタル加工もやってるよ。個展も10年くらいやってるけど、簡単に上まで上がれる世界じゃないからね。やれるだけはやってみようと思っている」
YouTubeやTikTokアカウントも開設するなど、全盛期から変わらず新しいメディアや表現を追求し続けている加納さん。
いったいどこからそのエネルギーが湧いてくるのか。
「別に変わってないよ、俺の意識は。時代の趨勢は変えられないものだけど、俺自身は元気なものだから、82歳には見えねえだろ?
今の時代にあるもの、AIなんかはその最先端だと思うけど、自分自身も“AI化”したいくらいだよ。
AIという方法論で見たら、俺の実存そのものはどうなるんだろうとか、それが具体的に何ができるのか。
これから俺なりの“AI加納典明”をどうつくるかというのは、今重要なテーマだね。それも具体的な作品として残していかなきゃいけないから、今後のことに含めて考えているよ」
「100歳まで仕事をする」と、現在も元気ビンビンな加納さん。変わらぬ反逆精神は、AIと出合ってどんな表現を生み出すのだろう。
加納典明(かのう・てんめい)●1942年、愛知県生まれ。写真家でありながら、小説、映画、DJ、レコード制作、映画出演、ムツゴロウ動物王国移住など、写真家の枠にとらわれない数々のパフォーマンスを示す。日宣美賞、APA賞、朝日広告賞、毎日広告賞など受賞多数。
加納典明オフィシャルサイト http://tenmeikanoh.com/
加納典明公式TikTok「オレ!カノー」https://www.tiktok.com/@orekanoh
取材・文/高松孟晋