懸念される“地方格差”

 石渡さんは、

「無償化は言い換えれば義務教育化ともいえます。文部科学省『学校基本調査』では、中学校卒業者の高校進学率は98・6%でした。98%台は、'10年以降15年連続、95%超は'90年以降35年連続です。ほぼ全員が高校に進学しているわけで、実質的には義務教育と変わりません。その高校進学に年収要件を持ち出すと、保護者間、あるいは生徒間で無用な心理的な壁が生じることもありえます。そうした弊害を考えれば、年収要件をなくした無償化のほうがいいのではないかと思います」

 と、メリットを話す。しかし、国からの助成金で足りない部分は各自治体の負担になる。東京都や大阪府は所得制限なしの無償化に舵を切っているが、税収の少ない地方の自治体ではどうなってしまうのだろうか?

2024年10月1日に発足した石破内閣。石破新首相のお腹がポッコリ出ているようにみえる
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「初めに指摘しましたが、今回の無償化で影響を受けるのは公立です。都市部を中心に人気がない学校は生徒数が減り、廃校になるところが出るでしょう。地方は公立・私立とも多くはないので、短期的な影響は軽微です。

 ただ、長期的には公立・私立とも人気が低下し廃校となる学校が増える可能性も。今後は中学校までは地方でも、教育費が無償になるなら寮生活や移住をして、高校は都市部のものを選択という生徒や家庭も出てくるでしょう。

 こうした地方格差について、税収の少ない自治体が打てる手は多くはありません。高校維持のためだけに予算を使うことはできませんから。なので、この格差を少しでも埋めるには、国からの一層の財政支援が必要になるでしょう」(石渡さん)

 無償化の原資は国民の税金。そのために増税をして「タダほど高いものはない」にならなければいいのだが……。