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村田沙耶香 撮影/齋藤周造
あなたはLINEグループをいくつ持っているだろうか。学生時代の友人、ママ友、職場の仲間……。愛称や旧姓などグループによって呼ばれ方が違い、話題も楽しみ方も違えば、自分のキャラさえも使い分けている人もいるかもしれない。
村田沙耶香さんの新著『世界99』の主人公・如月空子も世界(1)、世界(2)、世界(3)など、いくつかのコミュニティーを持つ。各世界のメンバーに会うときはアクセサリーも化粧も話し言葉も、それぞれにふさわしいものをチョイス。
同じ時間を生きているのに、違う世界線
ある世界でよしとされることや尊敬される人物が、別の世界では全否定されることも。空子はそんな世界間を自在に行き来する。相手に合わせて呼応し、“相手が望む自分”をつくって生きてきた。
「私自身、趣味や仕事などアカウントはいくつかありますが、そこで流れるトレンドワードや話題、ニュースはまるっきり別のもの。同じ時間を生きているのに、世界線が全然違うのが、すごく気になっていました」
村田さんはひと言ひと言丁寧に言葉を選びながら話してくれた。
'16年に芥川賞を受賞した『コンビニ人間』は170万部を突破し、40か国語に翻訳された。マニュアル化されたコンビニの一部でいることで正常を保つ主人公は異常なのか。
その後も村田さんは進化を続け、不思議な世界をつくり続ける。その集大成といえるのが、この『世界99』。初めての連載小説であり、3年8か月をつぎ込んだ大作は、私たちをとんでもないところまで連れていってくれた。