
当時の週刊女性のインタビューにぶちまけるXさん。ただ、彼女の怒りは石橋だけに向けられたものではなかった。というのも当時の放送画面に流れたのが、
〈おばちゃんは素人なので、ムダ毛のお手入れをしてないことをご了承ください〉〈素人なので、横からはみ出してしまったことをご了承ください〉
石橋発言に追い打ちをかける、編集によって加えられた「テロップ」だった。この番組側からの扱いに我慢できなかった。
《「確かに私は素人っぽいかもしれませんが、女優なんです。本当の素人さんには、あんなことできませんよ。それなのに……。テロップさえ出なければ、私も裁判沙汰にはしなかったと思いますが……」》
石橋とフジを相手に訴訟を起こした
Xさんは、番組でのセクハラ発言をめぐって、1992年11月4日に石橋と番組ディレクターを相手取り、200万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴。もちろん、番組から降ろされることを覚悟しての行動だ。この訴訟にフジテレビは、
《「Xさん(回答では本名)の合意を得ていたと了承していたので当惑しています。気持ちを傷つけてしまったことは申し訳ありません。感情的ないき違いの部分も含めて、解決に向け話し合っていこうと思います」》
あくまでも「合意」の上での演出だったと主張。石橋サイドにいたっては「局に任せている」と、逃げの対応に終始したのだった。
取材の最後に《「こうなった以上、もう使ってくれないでしょう。きっと“おばちゃんは死んじゃった”なんてギャグにされるんでしょうね」》と寂しく笑ったXさん。
後に石橋、フジとは和解が成立して訴えを取り下げるも、以後は本当にテレビで見かけることはなくなったXさん。とんねるず、フジテレビ全盛時において、彼女の「セクハラを許さない」勇気ある行動は、セクハラ三昧だったテレビ局の悪しき習慣を変えるきっかけになったのかもしれない。