熊本県熊本市にある、由緒正しき真言宗のお寺『本蔵院』。門前には、偉人たちによる“格言”が月替わりで紹介されているのだが、この場所に先月、思わず目を疑ってしまうような言葉が掲げられていた。
《手を抜く方が疲れる SMAP木村拓哉》
確かにこれまでも「ちょ、待てよ」「ぶっちゃけ」など、数々のドラマで名ゼリフを残してきた木村。しかし、お寺に掲げられる標語といえば、歴史上の人物が残したちょっとおカタいものが一般的な気も。
この言葉はドラマの中のセリフではなさそうだけど、なぜ仏の世界に彼のメッセージが響いたのか。『本蔵院』で、第二十世の住職を務める蔵本崇正氏に話を聞いた。
「芸能人の方たちが何気なく発している言葉が、仏教徒につながる精神を述べておられることが実はよくあるんです。なので、私どものお寺では難しい仏教の言葉をそのまま使うのではなくて、タレントさんの言葉もみなさまにご紹介するようにしているんです。とはいえ、なんでもかんでも掲げているわけではありません。やはり、仏教の教えに沿う言葉でないと掲げる意味はありませんから」
木村の言葉はどこで耳にしたのだろう。
「あれはラジオだったかと思います。“いつも忙しいから疲れることも多いでしょう?”という質問に対して、“いえ。手を抜くほうが疲れますから”と答えていらっしゃいました」
これは、裏を返せば“常に全力で取り組んだほうが疲れを感じない”ということ。この言葉のどのあたりが、仏教につながる精神なのか。
「“悟り”の境地に至っても、平穏がずっと続くということはなくて、常に現在進行形で坂道を上っている状態のことを“仏”というんですね。これって、少しでも手を抜いたら、坂を転げ落ちるということでしょう。常に歩み続けるということが人間の本来の姿であり、木村さんの言葉はまさにそのものだなと。自然とこんなことが言えてしまうなんて、本当に素晴らしい方だと思います」
木村の発言が選ばれたのは、しっかりとした理由があってのことだったのだ。ちなみに、11月は誰の格言が掲げられているのだろうか。
「武田鉄矢さんです。《今の自分を励ましてくれるのは、過去の自分だけである》というもので、最近のバラエティー番組で話されていました」
過去には、GACKTやレディー・ガガ、壇蜜やアンパンマンによる名言も掲げたことがあるんだそう。
「案外、仏教の精神を表す言葉ってそこら中にいっぱい落ちていますからね。それらを探す作業は日々、怠らないようにしているんですよ」