「3年生たちは1年かけて歌ってきたんです。合唱コンクールも頑張ったし、卒業式の日もこれ以上ないというくらい素晴らしいハーモニーでした。それだけに残念です」
沈痛な声でそう話すのは、北海道帯広市にある道立帯広柏葉高校の中西勝範教頭。この学校は中島のほか、DREAMS COME TRUE・吉田美和や、TBSの安住紳一郎アナなどを輩出している。
同校では中島の代表曲『時代』を卒業式後のセレモニーで合唱する計画を、昨年の3月から進めてきた。
「まず、6月にはクラス対抗で『時代』を披露するコンクールを開きました。このときに合唱コンクールがあること、卒業式後のセレモニーで歌うこと、卒業式に寄せてメッセージをいただけたらありがたいです、という旨を生徒が手紙に書いて、中島さんにお送りしたんです」(中西教頭)
この取り組みは注目を集め、地元の放送局が取材。コンクールの様子はテレビで一部放送され、それを録画したDVDも後日、中島の所属事務所へ送っていた。その後、特に返事はなかったが、式の前日にとあるFAXが届く。
「それは、《中島みゆきさんよりのメッセージ》と題して、結びに《皆さんの前途に幸多かれとお祈りします》と手書きされた祝辞でした。A4判1枚分の文章だったそうです」(スポーツ紙記者)
受け取ったFAXについて中西教頭に話を聞くと、
「祝辞が届いたのは2月28日。FAXの印字では午前9時55分とありました。差出人の名はなく、送信元の番号も記載されてなかったのですが、DVDのことが書いてあったので“本物らしい”と思ってしまいました」
“本物らしい”という言葉に表れているように少し疑わしさもあった。しかし、準備に追われているうちに当日に。祝辞は卒業生の代表によって読み上げられ、生徒たちは感激していたという。が、その2日後に事態が発覚する。
「3月3日になって、卒業式の取材に入っていたNHKが中島さんの所属事務所へメッセージについて話を聞きたいと問い合わせたんです。そこで、そのような事実はないとわかりました。学校側へは4日にニセモノだったと連絡が行きました」(前出・記者)
この事態に中島サイドも戸惑いは隠せないが、卒業生の心情を思いやり、「ただただ心が痛みます」とコメント。
あらためて中島の所属事務所に話を聞いてみたところ、祝辞に“式当日は海外にレコーディングへ出ている”とあるが、そのようなスケジュールではなかったという。さらに、同じFAXが事務所にも届いていたことがわかった。ならば、なぜ未然に防げなかったのだろうか……。
「今年の3月1日は日曜日で、FAXが届いた2月28日は土曜日でした。学校も所属事務所も土日休みが基本ですから、確認が遅れたのでしょうね。もし届いた時点で学校側が事務所側に連絡を入れていても、判断は間に合わなかったかと」(前出・記者)
保護者の多くが参加できたと思われるうれしい日曜日の式だったが、そこから起きてしまったトンデモ事件だった。
学校側は“悪質ないたずら”と判断し、騒動を収束。中西教頭は最後にこう語る。
「ニセモノと見破れなかったことが悔やまれます。卒業生たちに残念な思いをさせて申し訳ない。今後は怪しいFAXには気をつけます」