九月場所を目前にして飛び込んできた親方の不祥事。人気回復が著しい相撲界にとって、まさに水を差すような事態だった。角界の“鼻つまみ者”といわれた親方は暴行事件だけでなく、裏では数々のトラブルを起こしていた―

20150922 hakuho (10)
熊ケ谷親方(元十両・金親)

「“これはいわゆる傷害(事件)というには、あまりにも度が過ぎた行為。叱ったり、間違って傷つけたというものでない。だから本庁のほうで動くことになりました”と、警察から言われたんです」

 9月2日、付き人へ暴行したとして傷害の容疑で逮捕された熊ケ谷親方(元十両・金親)。横綱・白鵬が所属する宮城野部屋の部屋付き親方の不祥事により、13日に迫った九月場所の準備に追われている角界に大きな激震が走った。

「熊ケ谷親方は名古屋場所期間中の7月23日から27日に、名古屋市内のマンションの一室で金属バットや金づち、それにちゃんこを作るときに使う“すりこぎ棒”などで、数十回も殴ったそうです。しかも、付き人は元相撲取りなどではなく、まったくの一般人で、ある有名人の親戚だそうです。そんな人をボコボコにしたのですから、相撲界に残ることは難しいでしょうね」(スポーツ紙記者)

 現役ではないとはいえ、“力士”といわれた人間の暴力が、どれほど恐怖だったか想像すると言葉を失う。’07年には、先輩力士による“かわいがり”という暴行で、17歳の若い力士の命が失われているのだ。

 暴行を受けた付き人は、落語協会所属の真打・金原亭世之介の甥っ子。そして、熊ケ谷親方に彼を紹介して付き人にさせたのは、世之介師匠その人だったという。

「もともと、親方とは現役時代からの付き合いだったんですよ。彼が“付き人が欲しい”というので、いろいろと勉強できると思って、甥っ子を親方に紹介したのが2年前くらいです」(世之介)

 そのかわいい甥っ子が激しい暴行を受けた。ケガの状況を聞こうとしたが、あまりの酷さからか師匠の口も重い。

「見えないところに傷があるようで、さすがにそれを見せてくれとは言えないでしょう。ただ、トイレに行っておしりを拭けなかったとは言っていましたね」(前出・世之介)

 師匠も警察から事情聴取を受けている。そこで、警察から冒頭のように言われたことからも、被害者の傷が尋常でないことを物語っている。

「7月下旬に甥っ子が東京に戻ってきて、暴行を受けたことを初めて相談された。僕は事実が知りたいから、親方に本当のこと言ってくれと言ったんです。場合によっては、間に入ってうまく収めようと思っていたので。でも、彼は“何もしていません”と言うだけ。こっちも、君がそういうなら、僕は間に入れないから知らないよって。電話で話しても仕方ないから、やったことを手紙かメールで送ってきなさいって言ったんですけど、結局、何も送ってこない。あのね、怒るというよりアキレてるんです。何十年という付き合いがあったんですけどね……。彼にはタニマチを紹介してきたし、僕もいろんなところに謝っているところですよ。もう、相撲界では生きていけないでしょうね」(前出・世之介)