動画メッセージでタイムリミットとされた72時間はあっという間だった。身代金2億ドル(約236億円)は人質の家族が用意できる金額ではない。なぜ、「イスラム国」は日本人に狂気の刃を向けたのか。
《あなたたちの政府はイスラム国と戦うために2億ドルを払うというバカげた決定をした。2人の命を救うため、政府が2億ドルを払うという賢い決断を下すため、圧力をかける時間はあと72時間。さもなくば、このナイフは悪夢となる》
イスラム国による殺害予告の映像がネット上で公開されたのは1月20日のこと。タイトルは「日本政府と国民へのメッセージ」。砂漠の上でオレンジ色の囚人服を着せられた後藤さんが後ろ手を結んで立てひざをつき、そばに救出するはずだった千葉市出身の会社経営・湯川遥菜さん(42)の姿もあった。
「イスラム国は米軍による空爆開始直後の昨年8月、人質の米ジャーナリストの首をはねる殺害映像を公開した。同9月以降、米国人2人と英国人2人の殺害映像をネットで流してきた。一方で人質にしていたトルコ人、フランス人、スペイン人を解放した例もあった。人質が解放された各国政府は身代金支払いを否定しているが、水面下で金銭のやりとりなどがあったと報じられた。国連報告では、処刑のかわりにイスラム国がせしめた身代金総額は年間約41億~53億円にのぼる」(中東取材経験のあるジャーナリスト)
つまり、“処刑ビジネス”が成立しているというわけ。イスラム国は、右図に示した支配下地域で、油田盗掘や金品強奪などで荒稼ぎしてきた。しかし、原油価格下落の折、処刑と引き換えに得る身代金は組織の大きな収入源になってきているという。