■『不動産』ではなく『負動産』

 著書『空き家問題』(祥伝社新書)で警鐘を鳴らした、不動産コンサルタントの牧野知弘さんは、空き家が生まれる原因のひとつに、相続問題があると明かす。

「昔は子どもがみんな、親の家を欲しがりました。しかし今は、きょうだいで親の家を押しつけ合う状態。欲しいのは現金だけです」

 その結果、生まれる空き家は今、こんなふうに呼ばれているという。

「『不動産』ではなく『負動産』。貸せない、売れない、住まない不動産を、そう呼んでいます。人口減少に高齢化、どうにも止めようがないんです」

 使われない家は、固定資産税と家の維持費用がかかるだけの厄介ものでしかない。

■家はどんどん安くなる。売るなら今

 長嶋さんは、手持ちの不動産を空き家にしないための方策を、次のように指南。

「建物は時間がたてばたつほど、傷んできちゃうので、特に利用する予定がないのであれば、売れるものは1秒でも早く売っちゃうのがいいと思いますよ。今がいちばん高いと思いますよ。今後、市場に大量に物件が出回りますから、その前に、少し安いと思っても売るべき。これからどんどん安くなりますし、タダでもいらないって言われちゃうかもしれない。それ自体に価値がなくなる可能性もありますから」

 日本に根づいてきた土地神話、不動産神話の崩壊する日が、やがて訪れることを見通す発言。現代はまさに、神話崩壊の前日で、早いとこ、それに気づいて手放すことができれば、固定資産税ばかりがかかる不良債権を持たずにすむ。

ただし、例外もあるという。

「いつか、自分たちがそこに戻るとか親族が暮らすとかって予定があるならば、売る必要はないですけどね。ただ、その場合には、管理だけはしっかりしていないといけない」(長嶋さん)

 長い間ほったらかしにすれば、「建物が傾いている」「ガラスが割れている」「不法投棄物がある」など“特定空き家”に認定される条件に抵触し、解体を余儀なくされてしまうおそれもあるからだ。

〈プロフィール〉

長嶋修さん●不動産コンサルタント。株式会社さくら事務所会長。空き家問題をはじめ業界・政策への提言も行う。メディア出演多数。

牧野知弘さん●不動産コンサルタント。オラガHSC株式会社代表。ホテルや不動産のアドバイスのほか、講演活動も行っている。