幸か不幸か、安倍首相のおかげで安全保障関連法案そのものへの関心が高まった。この時流に先駆けて、東京新聞論説兼編集委員で’92年より防衛庁取材を担当している半田滋さんに自衛隊にまつわるトリビアを聞いた
自衛官は外人部隊で通用するの?
陸上自衛隊初の海外派遣となったカンボジアの国連平和維持活動(PKO)では、近くにいた仏外人部隊に自衛隊を辞めた日本人がいた。必要な能力があるから採用されたはずだが、「平和な自衛隊」より「戦う外人部隊」を選ぶ人もいるということ。
海外派遣で勲章がもらえるらしい
正確には勲章ではなく防衛記念章。海外派遣でもソマリア沖の海賊対処、PKO、インド洋の洋上補給、イラク派遣に参加した自衛官にはそれぞれ別の記念章が授与される。大きさは横36㎜、縦11㎜と小さなもの。他国の軍隊ならメダルつきの正章と一緒にもらえる略章と同じサイズだ。なお、自衛隊に正章はない。
自衛官は裁判員裁判の裁判員にはなれない!?
「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」で、自衛官は裁判員になれないと明記。ほかに国会議員、大臣、裁判官、検察官、弁護士、巡査部長以上の警察官などもなれない。
怪獣や宇宙人が攻めてきたら……
自衛隊の任務は日本の平和と独立を守ることなので、怪獣や宇宙人が攻めてきたらおそらく防衛出動が下命され、自衛隊は戦うことになる。勝てるかどうかは別。映画『ゴジラ』シリーズでは、けなげに戦ってはいるものの、毎回、残念な結果に……。
自衛官は雨が降っても傘をさすのは禁止?
制服を着ているときには禁止。いざというときのために両手を自由にする必要があるとの理由から。なお、航空自衛隊だけは現在、実験的に通勤時に限り、制服着用でも傘の使用を認めている。
これに対し、陸自、海自からは「さすが空自」と皮肉る声が。空自のイメージは「勇猛果敢、支離滅裂」とされているから。ちなみに陸自は「用意周到、頑迷固陋」、海自は「伝統墨守、唯我独尊」。言い得て妙?
海外派遣で捕虜になったらどうなるの?
紛争当時国の軍隊であれば、人権上の取り扱いが配慮されるジュネーブ条約が適用されて捕虜となり、いずれ生還できる。1992年、PKOで海外派遣が始まり、政府は「わが国は憲法上の制約があるが、ジュネーブ条約上、軍隊と認識されるものと思う」と答弁した。「安心してほしい」という意味だ。
ところが、安保関連法案の国会審議で「他国軍のために後方支援(武器・弾薬を輸送することなど)をする自衛官」が拘束された場合を問われ、岸田文雄外相は「自衛隊の後方支援は武力行使に当たらない範囲で行われるので条約は適用されない」と衝撃の答弁。捕虜にはならず、相手国の刑法で裁かれる可能性があるというのだ。だ、大丈夫……!?
監修:半田滋(はんだ・しげる) ●東京新聞論説兼編集委員。’92年より防衛庁取材を担当している。2007年、東京新聞・中日新聞連載の「新防人考」で第13回平和・協同ジャーナリスト基金賞(大賞)を受賞。