えのきどいちろうさんと面白い話をした。
そこには5、6人の30~50代の男女6人がいたのだが、「男が家庭用の洋式便座でおしっこするのって、大変じゃありませんか?」。そんな話からだった。
「酔っ払っていたら、結構、命中させるの、たいへんだし……」
「朝なんて、膀胱におしっこ溜まっていたら、それなりに向きを定めるの、たいへんだし……」
「だいたい、男が座ってするのって、折り曲げたり、スペースが足りなくて、結構、たいへんだし……」
えのきどさんを中心に男性の立ちション、洋式便器への尿はね話でかなり盛り上がった。
そうなのだ、男性が洋式便座で用を足すのはたいへんなのだ。
だいたい、あれは大便か女性用にできている。どう考えても、男性がおしっこをするようにはできていないのだ。
だから、おしっこは飛び散る。
男性の皆さんは立って、おしっこをする場合、どこをめがけてするだろうか? 水の溜まっている奥? 横? 手前? 水をめがけて?
一番いけないのは、奥を狙ってするのらしい。NHKの『ためしてガッテン』の調査によれば、サイドの壁を狙う247滴に比べて、奥をめがけると約30倍もの7550滴の尿はねが発見されたという(今年9月2日OA「家族が涙!トイレ問題 大解決SP」)。
酔っ払ってしたら、もっとかもしれない。
やっぱり、奥さんに「トイレ掃除はパパの役目ね」と言われてもしかたない。最近、トイレ掃除はパパという家が本当に増えている。
では、どうしたら尿はねが少なくなるのか?
立ってする場合は、便器を真ん中にまたいで真下に向けてする。もしくは座って壁、水面まで12センチ以内にすれば、尿はねはほぼなくなるらしい。
よかった。
先日、国際福祉機器展に行ってきたが、動作空間が広めに取れるように便器がコンパクトだったり、蓋を閉めている間は常に殺菌するようになっている便器だったり、かなりいろいろなアイデアが盛りもまれていた。けれど、まだ尿はね問題にしっくりくるものは見た限りなかった。
便器メーカーは、便器が斜めになる男子がしやすい便器を早く開発すべきだ。売れると思うけどなあ。
男のおしっこの困った問題は、洋式トイレ問題だけではない。
近頃は中年男性の尿漏れ問題も囁かれるようになった。
いや、昔からあったに違いない。
男性全体の6人に1人が、尿漏れの経験があるという。
女性は男性に比べて尿道が短いので、昔から尿漏れを訴えていた(これだってなかなか表面で話すようなことでないので、よくわからない話だったが……)。だから、女性用尿漏れパットは5、6年前からコマーシャルでも見るようになった。
けれど、男性用尿漏れパッドができたのは、最近の話だ。
10月に入って、洋服を着ていても目立たない、薄型の男性用尿漏れパットを各メーカーが相次いで発売している。
「尿漏れパッドを使用するときの不安はなにか?」という衛生材料メーカー、白十字によるアンケートによると、1位が違和感、2位が下着ズボンなどへのシミ、3位が漏れ、4位が装着したときのシルエット、5位が肌トラブルだった。
このアンケート結果を踏まえて、白十字はしっかり吸収、身体に尿が触れにくい「ポケット型」、お肌のケアを考えた「弱酸性」、気になるアンモニア臭を抑える「吸水ポリマー」などなど、不安をクリアする新しいかたちの男性用尿漏れパット「サルバ吸水ポケット男性用」を開発した。また、ユニチャームは20cc、80cc、120cc、200ccとの吸水量の種類の多さが売りでカップ形状の「ライフリーさわやかパッド男性用」、王子ネピアは薄さ2・5mmの「ビーロックインナーシート」を発売している。
シモの話はあまり表立って話すことではないだけに、情報も表に出づらい。だから、一人悩む人も少なくない。
けれど、結構、同じ悩みを持っている人は多いのだ。
〈筆者プロフィール〉
神足裕司(こうたり・ゆうじ) ●1957年8月10日、広島県広島市生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。学生時代からライター活動を始め、1984年、渡辺和博との共著『金魂巻(キンコンカン)』がベストセラーに。コラムニストとして『恨ミシュラン』(週刊朝日)や『これは事件だ!』(週刊SPA!)などの人気連載を抱えながらテレビ、ラジオ、CM、映画など幅広い分野で活躍。2011年9月、重度くも膜下出血に倒れ、奇跡的に一命をとりとめる。現在、リハビリを続けながら執筆活動を再開。復帰後の著書に『一度、死んでみましたが』(集英社)、『父と息子の大闘病日記』(息子・祐太郎さんとの共著/扶桑社)、『生きていく食事 神足裕司は甘いで目覚めた』(妻・明子さんとの共著/主婦の友社)がある。Twitterアカウントは@kohtari