今月15日、九州電力川内原発2号機(鹿児島県川内市)が再稼働された。正門ゲート前には反対する市民ら約120人が集結、シュプレヒコールをあげたが、抗議の声を押し切って決行された。

 福島第一原発事故後に作られた原子力規制委員会の新しい規制基準に基づく再稼働は、8月11日の同原発1号機に続き、全国で2基目。ほかに安全審査に“合格”した原発は、関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)、四国電力伊方発電所3号機(愛媛県伊方町)がある。

 しかし高浜原発は4月、福井地裁による再稼働差し止めの仮処分判決が出されており、動かすことができない。それでも国は「新規制基準に適合すると認められたものについて、その判断を尊重し、再稼働していく」(菅義偉官房長官)としており、動かせる原発から動かしていく方針。そのため、次は伊方原発が危ないと見られている。

「子や孫の世代に危険な原発を残すべきではない。再稼働はやめましょう」

「ふつうに暮らしたいだけなんです」

 伊方原発の再稼働承認をめぐる愛媛県議会での決議に先立ち、5日、住民らは県知事にあてた請願の署名を提出。子どもを持つ親として、あるいは原爆被ばく者として、それぞれが切実な思いを訴えながら県の原子力安全課長らに手渡した。

 およそ60日間で集まった署名は13万1455筆。

「四国4県だけでなく、中国地方や大分県など原発を取り巻く自治体の住民からも多数届いています」

 と話すのは市民団体『伊方原発をとめる会』の和田宰事務局次長。要望は2つ。まず伊方原発の再稼働をやめること。そして住民の声を聞き、原発賛成派、反対派双方の専門家を交えた公開討論会を実施することだ。

 和田さんによると、原発再稼働をめぐり、県と住民との間で対話の場を何度か設けてきたが、県の責任者が席に着いたのは今回が初めて。だが、どこか話がかみ合わない。原発の安全対策について、具体的な根拠を提示したうえで説明を求める住民に対し、県はパンフレットを作り配布しているなどと回答。

「電力が足りているのに、どうして原発を動かす必要があるのですか?」

 そう問いかけた住民に正面から答える県関係者は、誰ひとりいなかった。

 この場をセッティングした逢坂節子愛媛県議会議員は言う。

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「福島事故後、再生可能エネルギーを望む人が、若いお母さんたちを中心に愛媛でも増えた」と逢坂議員

「パンフレットの説明では不十分。読んだこともなく、存在さえ知らない県民は多いと思う。県内の経済団体から早期再稼働を求める請願を出されたのが6月。同月に特別委員会を立ち上げて、9月に結論を出そうとするのは拙速すぎる。愛媛新聞の世論調査では7割近い反対があるのに、議会は数の力で押し切ろうとしています」

 逢坂議員の言葉どおり、愛媛県議会で9日、再稼働を認める決議案が賛成多数で可決された。伊方町議会でも6日、早期再稼働をめぐる陳情を全会一致で採択している。地元の同意を取りつけた格好だが、前出の和田さんをはじめ、住民たちは納得がいかない。

「伊方原発の沖合5キロには中央構造線という長大な活断層帯があり、その真下は南海トラフの震源域。猛烈な地震に襲われる可能性が否定できません。さらに原発の耐震設計で予想される最大の地震動『基準地震動』は平均像から算出されたもの。平均より大きい地震が起きる恐れは十分考えられる。本来であれば基準地震動の7倍は必要です」

 と和田さん。事故が起きたときの影響や対策についても、検証が不十分と指摘。

「再稼働させようとしている3号機はプルサーマル発電です。事故が起きれば制御がより困難かつ使用済み燃料の毒性も高い。また、福島事故のように原子炉が溶融した場合、水とジルコニウムが反応すれば水素が発生して大きな爆発を起こしますが、ジルコニウムの反応量もゆるめた数値で計算しており、原子炉格納容器が破損する危険性も指摘されている。

 そんな事態になったら、どうやって避難するのか。原発があるのは佐多岬半島の付け根。半島西側に住む5000人は、どこにも逃げられない」