関越自動車道バス事故からたった4年、再び多くの犠牲者を出した。現役のバス運転手は「明日はわが身」「起こることはわかっていた」と表情を曇らせる。なぜ悲劇は繰り返されたのか。運転手の勤務実態や背景に迫る。

「貸し切りバスは48歳になったら降りろ」

 バス業界にはかつて、そのような教訓があったという。バス専門誌『バスラマ』の和田由貴夫編集長が明かす限界説だ。

「いろんな場所に行けて、おいしいものを食べて、いい仕事と思われがちですが、運転手は一様に“スキーバスさえなければ”と返答する。夜中の真っ暗な山道で雪の中に寝転がって重たいチェーンをつけることもある。スキーバスは過酷な仕事なんです」

 今月15日、長野県軽井沢町の国道18号の道路脇に、スキー客を乗せたバスが転落した事故。4月から社会人として就職先も決まっていた大学生ら15人が、寒い冬の未明に、命を奪い取られた。

 運転手は65歳と57歳。高齢の男性が、夜行日帰りツアーのハンドルを握っていた。

 バス事業者向けに安全教育をするNPO法人『交通事故予防センター』(茨城県水戸市)の久保田邦夫顧問は、業界の闇をこう解説する。

「人材が集まらず、どこのバス会社も運転手は不足ぎみです。待遇などで劣る小規模・零細事業者は、年配のドライバーに頼らざるをえなくなる。人件費を固定費にしたくないから、常時雇用ではなく臨時雇用にしがちです」

 バス業界を襲う高齢化の波。国土交通省によると、バス運転手の平均年齢は48.5歳。6人に1人は高齢者だ。

 技術が高く、健康であれば、60代でも従事できる仕事だが、体力や視力の衰えをカバーするのは難しく、都内の複数のバス会社は、「60歳以上は夜行バスには乗せていません」。

 労働条件も格段に下がった。明らかな法令違反、ブラック業務に現場の運転手は引きずり込まれ、「辞めたい」と思う頻度が高いという。

「法定休日は月8~9日だけど、4日程度しか休めないね。今は繁忙期だから、人手が足りなくて最高14日連続で乗ったこともある。夜行もある。泊まりの仕事だと、寝る時間は6時間くらい。帰りは眠気に襲われることもあるよ」(バス乗務20年の50代男性観光バス運転手)