ゴンドラが1周する所要時間は6分間。地上からの高さは36メートル。
少しずつ高度が上昇する中、周囲の景色を楽しむ観覧車。先月21日、愛知・東山動植物園で、幼児から中学生まで男女4人が乗ったゴンドラが、扉を開けっぱなしのまま1周する事故があった。
「観覧車を停止させて、逆回転をさせることができます。それで乗降位置に戻して、鍵をかけて運行するのが、本当は正しい手順でした。春休みの忙しい時期で乗り降りに手間どったみたいなんです」(同園施設課)
運行スタッフは2人。うち1人は勤続10年以上のベテランだったが、いざという時の対応ができていなかった。
「その瞬間、スタッフがパニックに陥ってしまったようなんですね。そのため結局、1周させてしまった。不測の事態に備えたマニュアル整備が不十分でした」
遊園地の遊戯施設の中には、乗車する人が自分で固定ベルトを締め、安全確認できるものがあるが、観覧車は外鍵。
「忙しいは言い訳になりません。そういったトラブルもきちんと想定しておかないと」
国交省昇降機等事故調査部会の臨時委員も務める日本大学理工学部の青木義男教授(59)は、人命を預かるスタッフの対応のまずさを指摘する。
同園では同日、『スロープシューター』という斜面を利用したコースター型遊具の追突事故も立て続けに発生した。
「急に停止をして、後続の車両が追突した形になっています」(同園施設課)
事故原因について、こう話す。
「前輪が180度以上回転してしまったことが問題だったと判明してきました。通常は180度以上回りません」
スロープシューターの設置は1961年。2011年に50周年を迎え、名古屋市認定地域建造物資産に認定された。親、子、孫3代にわたる思い出の遊具として人気を集めているという。
長い間、使われている遊戯機械に関して、
「古いものが一概に悪いとは思いません。米国最古といわれる遊園地では、1世紀前のものが動いていたりします。そういうものでも、保守管理をしっかりしていれば安全に運用できると思います。しっかり点検や検査を怠らず、日ごろの運用上でも注意深く観察するという考え方を関係者全員で共有せねばなりません」(青木教授)
青木教授は乗り物によっては自動車事故と変わりない被害をもたらすこともあると話す。そのため、国交省は、遊戯施設の調査・検査の項目、方法、判定基準を明確にしている。それでも、事故はなくならない。
昨年12月、観覧車の扉が、ゴンドラの高度が頂点に達するところで突然開くという事故を起こした西武園ゆうえんちは、「単純なヒューマンエラー」と事故を総括し、次のような善後策をとった。
「オペレーターに対し再教育を行い、講習を行いました。扉を閉める際“ロックよし!”と呼称をつけるようにしました。自分でも再確認しますし、お客様にも確認しているということが伝わります。2度と起こらないよう、再発防止に努めていく所存です」(同園広報)
2011年に転落死事故を起こした遊園地、東京ドームシティアトラクションズは、改札係や乗降車係などひとつひとつの配置について認定制度を設け、
「認定試験に合格しないと、ひとりで配置に就くことができない仕組みとなっています。その中で、危険と感じた際には、乗り物停止ボタンを押すことを徹底して教育しています」(広報IR室)
事故から多くのことを学び、現在もその姿勢をホームページ上でも発信している。
昨年5月と6月に続けて、2人乗りジェットコースターで骨折事故を起こした、香川県にある遊園地「NEWレオマワールド」。事故後の再発防止の改善策について尋ねると、
「被害者のこともあるので、コメントを差し控えさせていただくというのが会社の方針でございます」