米大統領選で共和党の候補者指名レースの首位を走る不動産王ドナルド・トランプ氏(69)は3月、オハイオ州の集会で持論を繰り返した。
《メキシコ国境に万里の長城をつくる。心配するな》
トランプ氏はメキシコからの不法移民を《麻薬密売人で強姦犯》と決めつけ、善良な米国民から猛反発されている。
トランプ財団関連の不売買運動が展開されても持論を曲げず、移民、イスラム教徒、中国、同盟国の日韓まで敵視する。女性蔑視発言も。米経済誌『フォーブス』によると、資産総額は45億ドル(約5000億円)で、懐に余裕がありすぎるせいか、暴言を慎む気はないらしい。
お笑いコンビ『パックンマックン』のパックンことパトリック・ハーラン(45)は、「許しがたい言動が多すぎます」と同じ米国人として嫌悪感をあらわにした。
「トランプ氏はメキシコ国境に造るという壁について“建造費はメキシコ持ち”と言っている。メキシコの元大統領は“そんなクソ壁の金なんて出せない”と返しました。汚い言葉で訳したのは、実際に“ファッキング・ウォール”と言っているから。低レベルの挑発なので、うっかり乗るとこうなってしまいます」
この話には続きがある。
「トランプ氏は“そんなことを言うなら壁を10フィート(約3メートル)高くするぞ”と反撃しました。まるで子どもの口ゲンカです。日本語の“バカ”とか“お前の母ちゃん出ベソ”と同じ。実際に別の場面で“お前の母ちゃんキューバ人”などと言っています」
トランプ氏は思慮なく暴言を放つ。
《イスラム国を叩きのめす》
として、掃討作戦で戦闘員の家族も対象に含めた。逮捕したテロリストは《水責めにすべき》と拷問復活に意欲満々。核兵器の使用も辞さない考えを示している。
さらにイスラム教徒の入国を禁止するという。
「米国内のイスラム教徒まで敵に回した。テロを未然に防ぐための情報を彼らが通報してくれなくなったら、どうするつもりなのか」(パックン)
日本攻撃もすさまじい。トランプ氏はサウスカロライナ州の予備選で勝った2月20日、《米国は貿易で勝てていない。中国や日本が米国にしていることを見ろ》と訴えて歓声を浴びた。アジア人が話す英語のアクセントをまねてバカにしたこともある。
背景には、白人の低所得労働者層に不満がくすぶっていることがある。昨年9月にはロサンゼルス港で、《日本は無関税で何百万台という車をここに送ってきている》とあおった。仕事がないのは移民や日中のせいだとして、“貿易制裁”で35~45%の自動車関税などをかけるとしている。
「ウソばっかり。トランプ氏は根拠を示さないんです。アメリカ人は日本車が大好きです。現地生産工場やディーラーなどで数10万人の雇用も生んでいます。撤退されたら、失業者があふれますよ。逆に米国産車にも報復関税をかけられてしまう」
仕事を奪ったとする移民への怒りも事実無根という。
「彼らの仕事はキャベツ畑やトウモロコシ畑の収穫作業です。ところが米国人限定で新聞に求人広告を出してみたら、応募者は定員割れで、こんなつらい仕事ができるか、とみんな1日で辞めてしまった。実質平均賃金はこの40年上がっていませんが、失業率は5%と低いんです」
トランプ氏は“米国版マネーの虎”ともいえる視聴者参加型テレビ番組『アプレンティス(見習い)』で、ビジネスプランを競う参加者を毎回1人ずつ切り捨てていた。
「決めゼリフは《お前はクビだ》でした。いまさら“雇用を守る”と言ってもパロディーですよ」(パックン)