覚せい剤などの薬物事件で逮捕される人は、1997年がピークで2万人以上だったが、ここ数年も毎年、1万人以上が逮捕されている。
「1997年の逮捕者は、約半分が10代と20代でした。でも、現在は40代と50代が半分を占めています。30代も若干増えていますね」
というのは、これまで数多くの薬物事件を手がけてきた小森榮弁護士。年を追うごとに若者の検挙人数は減少し、対照的に40代~50代が増えているというが、それには2つの理由があるという。
「ひとつは、覚せい剤を新たに使用する若者が減っているため。もうひとつは、1997年ごろに覚せい剤を使い始めた青少年たちが、そのまま年をとって中高年になっているのです」(小森弁護士)
中高年は再犯の割合も高く、40代は約70%、50代では81.3%が覚せい剤の前科者。かつては青少年の問題だった覚せい剤が、今は中高年の問題になり、この層への対策が課題になっているという。
また警察庁が発表している資料によれば、覚せい剤などの薬物によって逮捕された人の中で、暴力団関係者などではない人の割合は約半数。つまり、「覚せい剤なんて、いわゆる怖い人たちの世界の話」という認識は通用しないのである。
では、覚せい剤に手を出す女性の割合は?
「2割程度。基本的に男性中心です」(小森弁護士)
というのだが、こう続ける。
「全体的な数は多くなくても、女性刑務所の入所者の3分の1は、覚せい剤による逮捕者。身を誤る原因として覚せい剤はバカにできません」(小森弁護士)
小森弁護士によると、覚せい剤に手を出してしまう人は、3つのタイプに分類ができるという。
「ひとつ目は“宴会型”。宴会は、お酒がなくてもできますが、あったほうが盛り上がりますよね。そのように、副次的に覚せい剤を使うタイプです。2つ目は“仕事型”。
主に中高年が、仕事で責任ある立場を任されたものの、体力や集中力がついていかず、その解消のために使ってしまうのです。最後の3つ目は“ヤケ酒型”。どうなってもいいや、とお酒を飲むかわりに覚せい剤を使ってしまう人たちです」(小森弁護士)
この中で特に問題になっているのは“仕事型”だと指摘する。
「覚せい剤から離れるには、仕事を変えるなど、生活環境を変えないといけないので、なかなか難しいのです」(小森弁護士)
また、普段からいろいろな薬を飲んでおり、薬への抵抗が少ない人も覚せい剤に手を出しやすい傾向にあるという。
「特に女性で、心が繊細だったり、情緒不安定だったりする人は、日常的に睡眠薬や向精神薬を使っていることが多い。薬がないと自分は普通でいられない、と自己暗示をかけてしまっている人もいますし、処方された薬で乱用状態になっていることも」(小森弁護士)