ライフラインに大きな影響が出た熊本地震。復旧が進んではいるものの、阿蘇郡西原村、南阿蘇村などでは断水が長引いており、地震から1か月が過ぎた現在も水道が通っていない。
■全国の7割弱の水道が震度6強に耐えられない
表は「水道の耐震化状況」を都道府県別に表したものだ。震度6強程度の地震に耐えられる割合を示す『耐震適合率』は熊本県の場合、25.4%。実に7割強の水道管が激しい揺れには耐えられないということになる。
熊本だけが飛びぬけて低いわけではない。秋田県、和歌山県など25%を切る地域も目につく。
「耐震適合率の全国平均は36%と、それ自体がかなり低いのです。しかもこれは水道管のメインを占める基幹管路を調べたデータ。さらに熊本地震では、基幹から各家庭へとつなぐ細い水道管で老朽化が進んでいたため、被害が広がりました」
そう話すのは水道政策に詳しい、水問題を専門とするジャーナリストの橋本淳司さんだ。
水と安全はタダ。特別な手間をかけなくても簡単に手に入れられる……。そう信じられてきた神話がいま、地震と、加速度を増す老朽化によって崩れつつある。
■人口減少で水道インフラを支えられなくなっている
「水道管の法定耐用年数は40年。しかし実質的には40年を超えているものもかなり多く、水道事業者でさえその実態を把握していないケースがけっこうあります」(橋本さん)
水道管の普及・整備が進んだのは、ほかのインフラと同じ1970年代の高度成長期。厚生労働省によれば、埋設から40年を過ぎた水道管は全体の1割を占めており、年々増え続ける一方で対応が追いついていない状況だという。
「その理由は、お金がないから。これに尽きます。基本的な構造として、人口減少により水道インフラを支えられなくなっているという状況が背景にある」
水道管をひいて維持するには設備費や人件費がかかる。耐用年数を超えた水道管は更新しなければならず、耐震補強も必要になる。
「それらはすべて私たちが払っている水道料金でまかなわれています。ところが水道インフラを支える人口は減っていて、水道事業者に入る料金収入も減っている。対して、水道の保守・管理にかかるコストは変わらないうえに、設備更新の費用はかさむばかり。新しい水道管に取り替えが進まないのは、そのためです」