ホームレスが250万円の大金を集められた理由

 そんなある日、「鬼ごっこの人数調整で名古屋に来てください」と50円で依頼をしてきた女性と恋に落ち、出会って二日後に籍を入れ、あろうことか「彼女のために盛大な結婚式を挙げたい」とスットンキョウなことを言い出した。

 もう一度言っておくが、ホームレス小谷はホームレスだ。

 結局、浅草の『花やしき』という遊園地を貸しきってド派手な結婚式を挙げることにしたんだけれど、1日の売り上げが50円のホームレス小谷の月収は1か月フルで働いても1500円で、とてもじゃないが費用が足りない。

 そこで目をつけたのが、クラウドファンディング

 ホームレス小谷がクラウドファンディングで結婚式の開催費用を募ったところ、開始早々、モーレツな勢いで支援が集まり、なんと3週間で250万円もの大金が集まった。名もないホームレスにだ。

 では、どんな人が支援してくれたかというと、その正体は、これまでホームレス小谷のことを50円で買った人達。

「あの小谷君が結婚式を挙げるなら、そりゃ、もちろん支援するよ!」と、このタイミングで恩が返ってきたわけだ。

 その後、ホームレス小谷は、やはり50円で1日を売り続け、『信用』を積み重ね続け、何かの企画の折に立ち上げるクラウドファンディングは全戦全勝。

 彼は、お金持ちじゃないけど、「信用持ち」なのだ。

 信用の面積がバカみたいに大きいから、数値化(お金化)した時の額が信用の面積に比例して大きくなる。

 今の時代、クラウドファンディングやオンラインサロンなど、マネタイズの手段はたくさんある。

 ならば、ホームレス小谷が図らずも証明してみせたお金は「信用の一部を数値化したもの」という定義に基づいて、「表現者は信用の面積を拡大化させたら、それだけで生きていけるのでは?」と考えた。

《プロフィール》
西野亮廣(にしの・あきひろ) 1980年、兵庫県生まれ。1999年、梶原雄太と漫才コンビ「キングコング」を結成。活動はお笑いだけにとどまらず、3冊の絵本執筆、ソロトークライブや舞台の脚本執筆を手がけ、海外でも個展やライブ活動を行う。また、2015年には“世界の恥”と言われた渋谷のハロウィン翌日のゴミ問題の娯楽化を提案。区長や一部企業、約500人の一般人を巻き込む異例の課題解決法が評価され、広告賞を受賞した。その他、クリエーター顔負けの「街づくり企画」、「世界一楽しい学校作り」など未来を見据えたエンタメを生み出し、注目を集めている。2016年、東証マザーズ上場企業『株式会社クラウドワークス』の“デタラメ顧問”に就任。

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