「結婚式をしなかったオレたちに山田監督が」
この映画のおかげで、蛾次郎は山田監督と運命の出会いを果たす。そして、彼とある約束をしたという。
「山田監督にオレが結婚するときは仲人になってくれってお願いしたの。監督は“いいよ”って。それで、婚姻届に山田監督と奥様がサインしてくれてね。
でも、オレたち結婚式をしなかったのよ。そうしたら、山田監督が『男は─』の第10話『寅次郎夢枕』で、近所の女の子が花嫁姿で寅さんやおいちゃんおばちゃんのところに結婚報告に来るっていう設定を、わざわざ監督が書いてくれたの。その花嫁役がカミさん。それで、そのシーンの撮影が終わったら、監督が“蛾次郎、衣装部屋に行って来い”って言うんだよ。
“しょうがねーなって”行ったら、紋付き袴が用意されていて。それで寅さんやおいちゃんたちみんなで写真を撮るっていうことになったんだけど、そのとき、篠山紀信が渥美さんを少年誌の表紙撮影するために来てたのよ。それで、監督が“実は篠山さん、これこれで”って頼んでくれたら、彼も“わかった”って二つ返事で。篠山紀信が結婚式の写真なんて撮ったの、これが唯一じゃないの(笑)。
だから、監督や寅さん、倍賞さんにまで、会うたびに“奥さんを大事にしてる? 変な女に引っかかってない?”って言われてね。オレが女好きなのを知ってるんだわ」