大御所と渡り合える度胸に「あの子はスゴい」
最後に女優としての芳根の魅力を、彼女にとって3作目の映画『向日葵の丘・1983年夏』でメガホンを取った太田隆文監督に聞いてみた。
「オーディションのときです。今回、事前に応募者にシナリオを見せる時間がなくて、応募者はどんな映画なのか知らなかったんです。ところが彼女に高校時代の思い出を質問したら、友人たちと映画を作ったことだと言うんですね。この作品のシナリオとピタリと合致していて驚きました。ありえませんが、“こいつシナリオを見たんじゃないか”と思いましたね(笑)。全員一致で彼女に決まりでした」
朝ドラで見せるおっとりした感じとは違い、普段は「チャカチャカしてます」(太田監督)という彼女。小学生のようにひとときもじっとしてないみたい。それにもかかわらず、監督が“あの子はスゴい”と感じたのは、大御所とのシーンだったとか。
「津川雅彦さんを相手に堂々と渡り合っていたこと。津川さんはオーラがすごいんですよ。圧倒されてほかの役者もスタッフも、なかなか話しかけづらいものがあるんです。芳根は全然平気でしたからね。度胸がありますね」
それでいて涙もろい一面も。
「泣くシーンがあって、誰でも準備が必要なんですが、“芳根! 大丈夫か?”って聞いたんですね。そうしたら“私は泣くの得意ですから”って言うんです。普段から涙もろいのは知っていましたが演技をするのと違いますからね。
あんな元気な子がそう簡単に泣けるのかって思っていたら、その場で『仰げば尊し』を歌っているんですよ。当時まだ学校は卒業してなかったのにもかかわらず、“『仰げば尊し』を歌うと、みんなと別れることを想像しちゃうから悲しくて泣けちゃうんです”と言って、ひとりで歌っているんですよ」(太田監督)
まさに、天真爛漫! 日本中が彼女の一挙手一投足にドキドキする朝がまだまだ続きそう――。