政治評論家の有馬晴海氏は「これだけ連日ワイドショーなどで取り上げられたら、本物を見たい人も出てくる」としたうえで次のように話す。

「来年夏に都議選が予定されています。もし、いま都議選があって、小池新党ができていれば圧勝ですよ。都道府県議や区市町村議ら地方の政治家を目指す人にとっては、このブランド力は大きい。プロフィールに『小池塾1期生』と書くだけで票が集まりますから。5万円でその肩書を買えるのだから、むしろ安いといえるでしょう」(有馬氏)

 いまの小池氏の勢いが続けば、一流企業の勤務歴や一流大学卒の学歴よりもインパクトが強い肩書になるという。

 ただし……と付け加える。

「豊洲新市場の移転延期にせよ、五輪会場の見直しにせよ、小池氏はブラックボックスをこじ開けただけ。成果を出しているとはいえません。本人も人気がいつまでも続くとは思っていないはずです。市場と五輪問題をどう着地させるか。来年度予算で福祉や子育て施策にどの程度お金をつけることができるか。このままでは都民ファーストというよりも、やりたいことだけやっている“小池ファースト”になってしまいます」(有馬氏)

新党として組織化するのは簡単ではない

 政治塾とは本来、政治を勉強する場所にすぎない。しかし実際は、政党候補者をリクルーティングする場所として活用されることが多い。

 橋下氏が2012年に立ち上げた『維新政治塾』には3326人が応募し、選考をパスした888人が入塾。同年末の総選挙で複数の塾生が国会議員のバッジをつけた。

 この年は地方首長による政治塾ブームが沸き起こり、河村たかし・名古屋市長の『河村たかし政治塾』や大村秀章・愛知県知事の『東海大志塾』、嘉田由紀子・前滋賀県知事の『未来政治塾』が設立されている。さて、小池塾は小池新党につながるのか。

 政治評論家の浅川博忠氏は「その可能性は低い」とみる。

新党として組織化するのは簡単ではありません。政党支部をつくり、事務所を借り、専従職員を置く必要があります。1期生の受講料で1億円以上集めたとしても、まだまだ足りないでしょう。塾生といっても、政治家になるための“身体検査”をしたわけでもありませんしね」(浅川氏)

 小池氏は開塾式で「ひとりひとりが批評家ではなくプレーヤーとなって参加してもらえる方向を目指したい」と話した。プレーヤーとは政治家だけを指すのではなく、政治活動を支える人なども含まれるという。そもそも小池氏は自民党籍を捨てていないため、表立ってリクルーティングすることはできない。

 前出の有馬氏は言う。

新党結成は“あるぞ、あるぞ”と脅しているときがいちばん効果的。小池氏が都議会自民党と正面対決する展開になれば別ですが、うまく脅して都政運営を回すのが狙いでしょう。小池氏を支えるのは音喜多都議らの会派『かがやけTokyo』の3人だけですから、もう少し仲間が欲しいところです」

 小池塾の応募資格は18歳以上で日本国籍を持っていることなど。18日必着で1期生を追加募集している。