大藪教授は、「現役世代がもらえなくては意味がないということです。政府は消費税を増税して年金など社会保障に充てようとしていましたが、増税が先送りになったので財源がないんです」と話す。
前出の森永氏は言う。
「高齢者からみれば年金カットだし、若い人からみれば年金確保です。どんなに経済成長しようとも、ゴールの年金4割カットは変わりません。インフレ(物価上昇局面)が進むほどゴールは早く近づきますし、デフレ(物価下落局面)が続いたとしても年金カットは進むのでゴールは近づきます。デフレから脱却できるという前提で言うと、たぶん30年ぐらいでゴールすると思います」
「足りないので、あとは自分でやってくださいね」
厚労省に問い合わせてみた。今年度の年金額改定の指標となった物価変動率は0.8%で名目手取り賃金変動率はマイナス0.2%。現行制度上、物価が上がって賃金は下がっているので年金額は据え置かれた。もし年金制度改革法案が成立したら賃金下落に合わせて年金も減っていたことになる。さらに5年さかのぼると、うち3年で賃金下落に合わせて減らされていたはず。たしかに年金カットは進みそうだ。
私たちはどう対処すればいいのか。
「働けるだけ働いたほうがいいでしょう。来年1月から専業主婦は確定拠出年金に加入できます。リスクはありますが、節税効果があり運用利益は非課税なので公的年金で足りない分を補うことができます。“足りないので、あとは自分でやってくださいね”という政府からのメッセージとみていい。悠々自適な老後のスローライフなんて裕福な人の話です」(大藪教授)
早めに老後の生活設計を見直したほうがよさそうだ。