五木ひろし 様
NHKで、『五木先生の歌う!SHOW学校』という一風変わった歌番組の台本を書いている。
タイトル通り演歌界の大御所、五木ひろしさんが主役。「歌謡曲の素晴らしさを教える学校」という設定で、先生役の五木さんが、生徒役のベテラン&若手演歌歌手の皆さんと今が旬の人気芸人たちにコント形式で歌を教えていく内容。もともとは、五木さんが自分の歌謡ショーでやっていた企画をテレビ化したものだ。
今回勝手に表彰させていただくのは、恐れ多くも「譜面を見ずに歌える曲が3000曲」という五木ひろし御大その人である。
この番組、何が一風変わっているかと言えば、「五木ひろしのアドリブ」満載の部分。一応、担当作家とディレクターがご本人と事前に打ち合わせして大まかな流れは作るのであるが、本番は脱線につぐ脱線。キメキメで作っていくのが普通の歌番組では超珍しい。「五木先生のむちゃぶり」というのが番組の名物になっているのだ。
「この曲、中国語で歌ってみて」「ラップ調でやってみようか」と、その場のノリでガンガンにむちゃぶりなアドリブをかまして、独特のグルーヴを生み出していく。
芸人はただでさえアウェイな歌番組という土俵の上で、むちゃぶりしてくる五木先生に笑いで対抗せねばならないので戦々恐々状態。NHKらしく公開収録だから、客席からの笑いもダイレクト。スベるときは豪快にスベる。板の上に乗ったときの実力がモロに出てしまう怖い番組なのだ。過去に出演した麒麟の川島くんが『アメトーーク!』(テレビ朝日系)で話していたのだが、芸人の間で「あの番組はヤバい」と噂になっているようである(笑)。
担当回の収録には必ず立ち会っているのだが、毎回舌を巻くのは、どんな曲をふってきても即座に対応する、バックバンドとのあうんの呼吸の凄み。バンドは舞台裏にスタンバっていて、演歌だけでなく、どんな音楽ジャンルでもオールOK。五木先生が歌い出したらコンマ何秒で反応し即演奏する。これぞ五木ひろしとバックバンドとの職人芸としか言いようがないものだ。
御年69歳。その衰え知らずのパワフルな歌声とステージングは、年齢と同じくロックだとさえ思う。そんな五木先生に「まだまだむちゃぶりするで賞」を勝手に差し上げ表彰したい。
おかげさまで視聴率も良く、無事2年目に突入したこの『SHOW学校』、五木先生は収録終わりでいつも声をかけてくれる。
「サメジマくん、今回も台本、面白かったよ!」
五木先生にちゃんと名前を覚えてもらえるまで、まだまだ勉強です!
<プロフィール>
鮫肌文殊(さめはだ・もんじゅ)
放送作家。’65年神戸生まれ。古舘プロジェクト所属。『世界の果てまでイッテQ!』など担当。渋谷オルガンバー「輝け!日本のレコード大将」(毎月第2金曜日)、恵比寿頭バー「歌謡曲主義」(毎月第3火曜日)などでの和モノDJ、関西伝説のカルトパンクバンド・捕虜収容所のボーカリストなど音楽活動も数多い。
<鮫肌文殊の最新情報>
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●鮫肌文殊率いる伝説のパンクバンド捕虜収容所、只今20年ぶりのニューアルバムをレコーディング中。今夏発売予定。震えて待て!
●6月10日(土)池袋のクラブKnotにてゲストDJやります。22時スタート。来てね!