年金や貯金額が減り続け、老後破たんが増える
「住宅費・教育費・老後の費用が人生の3大出費です」
と、前出のあんびるさん。
「幼稚園と高校以降は私立校に通ったり、大学進学でひとり暮らしを始めたりするのはよくあること。すると教育費は私立文系でも1500万円を超えます。日本の教育費における公費と私費の割合は、高等教育段階では4対6。経済協力開発機構(OECD)の平均は7対3ですから、日本は世界的に見ても家庭の負担が大きいのです」(あんびるさん)
教育費にばかりお金をかけてはいられない。長い老後が待っている。
厚労省の推計によれば、女性が生涯で使う医療費の平均額は、およそ2500万円。そのうち49%が70歳以降に使われるという。
前出の森永さんは、
「(年齢や所得に応じて負担上限が定められている)『高額療養費制度』を使えば70歳以上の場合、医療費はどんなにかかっても月4万円程度。ただし、国が承認していない最新の薬や治療を利用すると全額実費になるため、膨大なコストがかかってきます」
おまけに、高額療養費制度は8月以降、70歳以上を対象に自己負担の上限額が引き上げられる。
「病院にかかったときの窓口負担も引き上げられるおそれが。将来は5割負担もありうるかもしれません。晩婚化や高齢出産で老後資金を貯める期間が短くなり、年金も減っている。老後破綻は他人事ではありません」
暗い老後を避けるための自衛策として、まず出費の見直しを、と丸山さん。
2人以上の世帯のうち、勤労者世帯の消費支出は月平均で約31万円だが、
「携帯を格安スマホに替えれば月3000円弱に収めることも可能。電気やガスは自由化されているのでプランを見直してみる価値はあります。今は普通預金の金利が0・001%の時代ですから、個人型確定拠出年金やNISAなど、投資で増やすことにも関心を持って。自分も稼いで、さらに“お金にも稼いでもらう”考えができる人は、お金が貯まります」(丸山さん)
<プロフィール>
あんびるえつこさん◎生活経済ジャーナリスト、「子供のお金教育を考える会」代表。新聞社を退社後、各メディアで家庭経済に関する記事執筆を続ける傍ら、講演活動も精力的に行っている
森永卓郎さん◎経済アナリスト、獨協大学教授。金融からオタク文化まで幅広い分野で論評を展開。近著に『消費税は下げられる! 借金1000兆円の大嘘を暴く』 (KADOKAWA)
丸山晴美さん◎消費生活アドバイザー、ファイナンシャルプランナー。20代から年に200万円近くも貯めた節約のプロ。家計や節約術についてのやさしくわかりやすい解説には定評あり