その時、イノッチだけがフロリダの太陽のように陽気だった。「なんか楽しくなりそう!」ととびっきりの笑顔で言った。
なんか元気になってきた。
「よし、やってみますか!」とロケがスタート。マイアミのテニス会場をあてのないまま練り歩く。
イノッチがいろんな人に声をかける。「日本からシャラポワにセーラー服を着てもらおうと来たんです!」と明るく言うと、みんなが大爆笑。
「おめー、おもしれーな」「無理! 無理! 無理でしょ!」と人が寄ってくる。1秒もシャラポワに会っていないのにロケがどんどん盛り上がってくる。なんだ、この楽しさは! 気がつくと、やっぱりそこにもイノッチの笑い声があった。
結局、シャラポワに会えずにロケは終了。みんながトイレに行くというので、自分は一人、荷物番をしていたその時、向こうからブロンドヘアーの長身の女子がやってくる。目を凝らして見るとシャラポワだ! カメラ? カメラ? とあたりを見回すが、ない! 日本から持ってきたマイデジカメで撮るしかない!
気が動転して、ポケットからなかなかカメラが出てこない。早くしないと、シャラポワが通り過ぎちゃう。やっと取り出し電源を入れると、メモリーがいっぱい! 慌てて数枚の写真を消去して、動画モードに切り替える。そして撮影開始。
わすが5秒で「メモリーがいっぱいです」の表示が点滅。粒子の粗いガサガサな画像に、なんとか人らしき映像が映っていた。それをイノッチに見せると大爆笑。あの笑い声が夕闇のマイアミに響き渡った。
そんなイノッチとこの夏、『V6の愛なんだ2017 史上最高の夏まつり!』(TBS系)という番組でご一緒できる。またイノッチやV6の笑い声が聞けるよう楽しい番組を作ろう。あの笑い声さえあれば、まだまだテレビは大丈夫!
<プロフィール>
樋口卓治(ひぐち・たくじ)
古舘プロジェクト所属。『中居正広の金曜のスマイルたちへ』『ぴったんこカン・カン』『Qさま!!』『ぶっちゃけ寺』『池上彰のニュースそうだったのか!!』などのバラエティー番組を手がける。また小説『ボクの妻と結婚してください。』を上梓し、2016年に織田裕二主演で映画化された。最新刊は『ファミリーラブストーリー』(講談社文庫)