5人に1人が75歳以上の後期高齢者となるのも、もうすぐ。多くの人が望む“最期は自宅で”を叶えるために尽力する看護師、介護士たちの半数が、実は、これまで知られてこなかった経験をしていた。
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“ときどき入院、ほぼ在宅”。いわゆる団塊の世代全員が75歳以上の後期高齢者となる’25年に向け、国が推し進めている地域包括ケアシステムのコンセプトだ。急変時だけ大きな病院で診てもらい、あとは住み慣れた地域に戻って治療を継続していく。
このシステムの推進にあたり、在宅訪問による介護や医療への注目がさらに高まりをみせている。
しかし、内閣府が行った高齢者の健康に関する意識調査によると55パーセントの人が“自宅”での最期を望むという結果だったのに対し、厚生労働省が発表した「死亡場所の構成割合の推移」では、死亡場所の75パーセントは病院で、自宅はわずか13パーセントほどと報告されている。
つまり現状では、本人が希望する自宅での最期を迎えられない場合も多いようだ。
では、将来、住み慣れた居心地のよい自宅で最期まで過ごしたいという希望を叶えるにはどうすればよいのかというと、自宅を訪問して、看護や介護などのサービスを提供してくれる人たちの協力が不可欠だ。しかし、ごく一部の悪質な利用者のせいで、質のよい在宅訪問医療や介護を受けられなくなる日が来るかもしれない。
というのも、報道ではこれまで、今年5月に群馬県富岡市の有料老人ホームで入所者が元職員に殴られた事件のように、医療や介護従事者による利用者への性的嫌がらせや暴力が多く取り上げられてきた。
だが、実はその反対の事例も存在しているというのだ。利用者やその家族による性的嫌がらせや暴力を受けた訪問看護師や介護職の割合は、およそ50パーセントにものぼる。
介護や医療の従事者が受ける性的嫌がらせや暴力など、その人権や職域を侵害するような環境や言動のことを、“ケア・ハラスメント”という。では、いったいどのような“ケアハラ”が行われているのか、介護現場における暴力やセクハラの実態に詳しい、城西国際大学福祉総合学部福祉総合学科の篠崎良勝先生に、事例を伺った。