富士急ハイランド(山梨県富士吉田市)の人気アトラクション『ド・ドドンパ』の乗客にけが人が相次いでいる問題で9月21日、新たに3人が負傷していたことが判明。さらには別の絶叫マシーン『FUJIYAMA』と『ええじゃないか』でも、2人がけがをしていたことがわかった。今回の5人を加えると、同園でけがをした乗客は計14名にのぼる。

 昨年12月から今年8月の間に、乗客4人が首や胸を骨折していた事故が発覚して以来、同園では国と県の事故調査部会がそれぞれ調査を続けている。報道によれば、同社と県が開設した相談窓口には200件を超える問い合わせが寄せられ、そのうち9割を『ド・ドドンパ』に関する内容が占めているという。

8か月で4件の骨折は、はっきり言って異常な数字。過去にも前例がないと思います

 こう話すのは、テーマパークコンサルタントの清水群さん。遊園地の事故調査や安全管理対策に携わる清水さんの目から見ても、違和感を覚える件数だという。

 デートや友人同士、子連れで遊びに行く機会の多い遊園地やテーマパーク。安全性を求められる場所で事故が起きるとき、どういった原因や背景があるのだろうか? 各施設の対策はどうなっているのか? その実態について、清水さんに話を聞いた。

事例から見る2つの事故要因

 前述した『ド・ドドンパ』は、スタートから1.56秒後に最高時速180kmに到達する「世界NO.1の加速力」が特徴の、いわゆる絶叫マシーンだ。身長や年齢制限のほかに、脊髄や首に障害がある人は乗車できないという決まりがある。

 同社は会見で、「機器が正常に動作していたこと、アトラクションの乗車基準に基づき、看板、サイン、映像、放送、係員の指示などで注意喚起を徹底していたこと、乗車時の姿勢が不明であったこと」から、「事故と『ド・ドドンパ』の因果関係は不明」との姿勢を示した。

 また報道によれば、一連の事故を受けて9月3日に立ち上げた第三者委員会が調査したところ、G(重力加速度)の負荷は日常に経験する値を超えるが、ヘッドレストやハーネスが効果的に作用することで、「人体の安全範囲を超えることはない」としている。

 清水さんが指摘する。

「現在も事故原因を調査中のため私の推測になりますが、乗客の乗車姿勢が守られていなかったおそれが考えられます乗車にあたっての注意書きが見過ごされたり、スタッフによる説明が聞き逃されたりした可能性もあります。

 ただ、遊園地やテーマパークでは通常、乗客を乗せる前に毎日、スタッフが乗車して試運転を行っていますし、機器に異常があればそのときに気付くはず。何が起きていたのか事故調査の報告が待たれます」

 ただし、日本にはGについての基準がなく、ヨーロッパやアメリカなどの欧米で定められた規格を適用している施設がほとんど。欧米に比べて業界全体に遅れがあり、国土交通省の主導で法令を改正していく動きはあるものの、「なかなか進まないのが現状」(清水さん、以下同)だという。