「47都道府県と台湾を合わせて122人のキャラクターがおり、コロナ禍で旅行客が減少して苦境に立たされていた温泉地からは、集客にひと役買ってくれたと感謝する声がSNS上で多くあがっていたのですが……」(トラベルライター)
“温泉×萌え”が大炎上
日本全国の各温泉地をモチーフとした2次元キャラクターを制作。地方都市の魅力を国内外に発信するために’16年に作られた、地域活性化プロジェクト『温泉むすめ』が炎上する事態になっている。
「11月15日、10代女性向けのシェルターなどを運営する一般社団法人Colabo代表の仁藤夢乃(にとうゆめの)さんが、ツイッター上で一部キャラクターの設定に書かれていた“夜這いがあるかもと期待する”“いつもスカートめくりをする”といった表現に疑問を呈したことで、“性差別なのでは?”といった批判の声が噴出することになりました」(ネットニュース編集者)
ネット上での指摘を受けてか、翌日には公式サイトが批判を受けたキャラクターのプロフィールを修正。また、後援を行ってきたスポンサー企業の名前が、観光庁以外は消えることになった。
「炎上後、一斉に企業名が消えたことで“スポンサーに迷惑をかけないために、運営元の判断で削除したのでは?”という声が出始めているんです」(同・ネットニュース編集者)
事実関係を確認するため、『温泉むすめ』の運営元であるエンバウンドに問い合わせたが、
「マスコミの取材にはお答えしていない」
と電話を切られてしまった。現在も公式サイトに名前が残っている観光庁も同様で、
「事実確認中のため現時点では回答できない。分かり次第、発表いたします」
との回答に留まった。そこで後援に名前を連ねていた企業の一部に取材を申し込むと、以下の回答が届いた。
「’18年に温泉むすめを担当する声優の額装写真を製作する企画があり、当社の業務用プリンタで出力するビジネスを実施いたしました。
現在は製作していないため、当社から連絡し、11月16日にロゴ掲出を終了していただきました。なお、当社以外のロゴが削除された理由はわかりません」(キヤノンマーケティングジャパン株式会社 広報部)
自主的にロゴ掲出の終了を申し出た企業もあったものの、
「弊社は『温泉むすめ』プロジェクトに賛同する立場ですが、ご指摘の件については、誠に遺憾ながら把握しておりませんでした。サイトから企業名が削除された理由や時期については運営会社にお問い合わせください」(報知新聞社企画部本部)
「“日本全国の温泉地や地方の魅力を国内外に発信する”との趣旨に賛同し、“サポーター”として参加していましたが、ご指摘の件については、誠に遺憾ながら把握しておりませんでした。サイトから企業名が削除された理由や時期については運営会社にお問い合わせください」(読売新聞グループ本社 広報部)
と、運営元の判断で名前を消したと思われる事例も確認できた。“夜這いを期待してしまう”と紹介されているキャラクターの制作にも関わったとSNSなどで情報を発信している温泉宿にも何度か電話をかけたが、つながることはなかった。
「気づかなかった」では済まされない
SNS上では批判コメントと応援コメントが乱立しており、いまだ『温泉むすめ』の炎上が収まる気配はない。広告代理店関係者は「地方活性プロジェクトとしては素晴らしい」としつつも、炎上した部分についてこう苦言を呈した。
「運営元や温泉地の関係者が性的表現についての意識をアップデートできておらず、悪意なくやってしまったという印象です。しかし、だからといって今回のような表現が許される時代ではありません。
こうした性的・差別表現などの理解度は人によってまだまだ差があるのが現状。今後も悪意なく性的表現などをしてしまい、炎上するケースは出てくると思います」
炎上する原因になった“夜這いを期待する”設定のあったキャラクターは、小野小町がモチーフ。彼女の伝説の1つである百夜通い(ももよがよい)がもとになっているというが……。
「小野小町に恋した青年を諦めさせるために“百夜通ったらあなたの意のままになろう”と告げたという伝説を、“夜這い”と表現してしまうのは首をかしげてしまいます。そのまま“百夜通い”でよかったのでは。
仮に“夜這い”だったとしても、観光誘致に繋げるキャラクターの説明であれば、時代の流れを汲んで、柔らかい表現に言い換えるべきでしょう」(同・広告代理店関係者)
今年7月には、千葉県の松戸警察や松戸東警察と協力した啓発運動の一環でご当地VTuber・戸定梨香(とじょうりんか)が出演した動画が、「性的なもの」と全国フェミニスト議員連盟の抗議によって削除されるという騒動が起こったばかり。価値観の相違による騒動がなくなることを願うばかりだ。