目次
Page 1
ー 震災をきっかけに自衛官を志したが…
Page 2
ー セクハラで笑いを取るのは普通
Page 3
ー 部隊の誰もセクハラを証言してくれない
Page 4
ー “あなたの話だけでは信用できない”

 

「反響の大きさに驚いています。最近は雑誌などメディアのインタビューも受け始めました。これを機会に洗いざらい、自衛隊に今も浸透する“間違った体質”を変えてほしい。再発防止と謝罪が私の望みです」

震災をきっかけに自衛官を志したが…

 6月29日、あるYouTube動画が話題になった。元自衛官だった22歳の女性が性被害を告発。みるみるうちに動画は拡散された。

女性の名前は、五ノ井(ごのい)里奈さん。今年6月まで、陸上自衛隊に所属。そこで受けたあまりにも酷いセクハラが重なり、療養期間を経た後に退職した。

「少しでも自衛隊の体質が改善されることを願っています。私のいた部隊は、隊員58人中、女性隊員は5人でした。

 志を持って自衛隊に入った人が、業務外のセクハラが理由で辞めることになるって、こんなに悔しいことはない」

 五ノ井さんが自衛隊を志し始めたのは、小学生のころ。

「2011年に東日本大震災があったとき、私は東北地方に住んでいました。避難所暮らしをしていたころ、そこに女性の自衛官が来てくれたんです。私たちが入るお風呂の準備をしてくれたり、避難民ひとりひとりの話を聞いてくれたり。

東日本大震災がきっかけで自衛隊に入隊した五ノ井さん
東日本大震災がきっかけで自衛隊に入隊した五ノ井さん

 私は柔道をしていたので腕力には自信があったのですが、女性自衛官は腕相撲をしてくれたりして、とても頼もしく見えたんです」(五ノ井さん、以下同)

 中学高校と柔道を続けた彼女は、自衛官が入校できる『自衛隊体育学校』に入りたいとも思った。

 2020年4月、自衛隊に入隊。約半年間の研修を経て、配属されたのは、福島県にある『郡山駐屯地』のとある部隊だった。

「配属が決まったとき、先輩の女性隊員たちから“あそこはセクハラが多いから気をつけて”と言われていました」

 入隊後ほどなくして、実態を知ることになる。