目次
Page 1
ー 小中高時代は周囲から疎まれることも
Page 2
ー 女性社員が涙を流した出来事
Page 3
ー 最初にADHDだと気づいたのは妻
Page 4
ー 「ADHDは生まれ持ったキャラクター」

 

「自分がADHDだと知って、僕はすごく楽になりました。なんで変な目で見られるんだろう、なんで怒られているんだろう、何をやらかしたんだろうって、ずっと理由もわからず自分を責めるばかりだったから。

 でもADHDというフィルターを通して過去を改めて振り返ってみると、ガラリと景色が変わってきた。自分を客観的に見ることができるようになって、“そういうことだったのか!”とようやく合点がいったんです(笑)」

小中高時代は周囲から疎まれることも

 書道家の武田双雲(47)が自身のADHDに気づいたのは今から7年前のこと。アインシュタインやスティーブ・ジョブズら世界の名だたる著名人が実はADHDだったと書かれた記事を読み、試しにとインターネット上のADHD診断に挑戦。すると結果は─。

「これもあてはまる、これもそう、全部自分のことだ! と思って、なんだかうれしくなっちゃって。それをブログに書いたら、“武田双雲、ADHDを告白!”と大々的にネットニュースに取り上げられたんです(笑)」

 当時はADHDという言葉がようやく一般に浸透し始めたころで、“ADHDを公表した著名人の先駆け”として大きな注目を集めた。思いがけない反響に驚くも、「ADHDを公表してプラスしかなかった。生きやすくなった」と話す。

 ADHDの主な特性とされるのが「多動性・衝動性」で、自身もその傾向ゆえ社会になじめず、子どものころから疎外感を味わってきたという。「もともと明るくおしゃべりだったので、小さいころは友達もたくさんいたし、にぎやかに過ごしていたと思います。でも大きくなるにつれ、周りからどんどん浮くようになって……」

 天真爛漫で屈託がなく、人気者だった幼少時代。しかし小学校に入学すると、次第にその言動をとがめられる場面が増えていく。時間割の意味がわからず、次の授業の準備ができない。思いつくまま行動し、周囲の和を乱してしまう。授業中に先生の話をさえぎり、ひとりで延々としゃべり続けることもあった。けれど怒られてもその意味がわからない。

「何かやらかしちゃったなと思ってその瞬間はシュンとするけれど、それが続かず3分後にはけろっとしてる。忘れっぽいのもADHDの特徴のひとつで、だから同じ過ちを何度も繰り返してしまうんです」

 小学校高学年になると「周囲からあまりよく思われていないのでは」と気づき始め、中学に入ると友達から孤立し、高校では周りに疎まれた。

「身体が大きいからと勧誘され、高校でハンドボール部に入りました。けれど試合中に空を飛ぶ鳥が気になって眺めていたら、おまえは何をやっているんだと怒られる。だけど怒られている最中もその人の目の色が気になって言葉が全然入ってこない。期待の新人だったはずが、すべて失望と失笑に変わっていきました」