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ー 『KOC』王者の先輩・う大がシンパシーを感じる理由

 

 かもめんたる・岩崎う大が、注目のお笑い芸人の今後を予想する連載企画。今回の芸人はサルゴリラ

『KOC』王者の先輩・う大がシンパシーを感じる理由

 本日はキングオブコント2023で優勝したサルゴリラを紹介したいと思います。2人はネタによってボケとツッコミが変わるのですが、主に児玉智洋がボケで丸刈りの赤羽健壱がツッコミを担当しているコント師です。

 2人は'79年生まれで幼稚園からの同級生というキングオブコント史上最年長コンビとなりましたが、実はこの2人はかつて「ジューシーズ」という人気トリオのメンバーでした。

 僕の印象でも、早くから脚光を浴びたアイドル的なエリート芸人というイメージでした。それが、2015年に解散して2人だけでコントを始めたと聞いて驚いたのを覚えています。

 僕はサルゴリラにすごくシンパシーを感じています。僕も昔は5人組でコントをやっていて、それを解散してから同じメンバーだった槙尾と組んで、かもめんたるを結成しました。

 5人組でやっていたときは、主に台本は別のメンバーが書いて、なるべく万人を大笑いさせるようなネタを目指してやっていました。

 反動でコンビを組んだ際は本当に自分たちが好きなネタしかやりませんでした。

 それがサルゴリラもまったく一緒の流れだったらしく、初めて彼らのネタを見たときに、「ああ、本当はこういうことがやりたい2人だったんだ」と強く感じたのを覚えています。

 2人のネタは、「なんか変」とか「なんか嫌」とか、曖昧なので、その変さや嫌さを説明するのが難しい類いの事象をコントにしていることが多いです。おのずと、そこに違和感を持たない人などには伝わらない笑いとなります。

 でも、そこを共感できる人にはずっとくすぐられているような、他の芸人がコントにしないような触れられたことのない部分を刺激してくれる快感があります。

 そして、そういう曖昧なものを表現するのには演技力や表現力が非常に重要になってきます。

 僕が彼らにシンパシーを抱くもうひとつの理由が、2人ともお芝居が好きで演劇に精を出しているということです。昨年のキングオブコントで「演技力」がキーワードになったのを覚えているでしょうか。

 実はサルゴリラはまさに演技力のコンビなのです。というのも彼らが表現しようとしている、なんか変、なんか嫌という曖昧なものはしっかりした演技力がないと表現できません。

 今回のキングオブコントで、サルゴリラが披露した「マジシャンと手品番組のディレクター」のコントでは、児玉演じるうだつの上がらないマジシャンが伝わりにくいマジックばかりを見せ、ディレクターがだんだんイライラしてきて、最後はそんな手品を平気で披露してくるマジシャンの人間性が許せなくなってくるというコントでした。

 児玉はマジシャンのダメなくせに変な世界観だけある感じ、ところどころに見せる必死さと諦めを見事に演じていましたし、赤羽は違和感にすぐにツッコむのではなく自分の中の混乱をなんとか収めようとしながら懸命にマジシャンのことを理解しようとした結果、激高してしまうという流れを丁寧に演じていました。

 彼らは今、同期のしずるとライスと3組で演劇ユニット「メトロンズ」をやっています。簡単に言ったら劇団をやっているということなんで、そこも僕と同じです。

 シンパシーを感じずにはいられないサルゴリラなのですが、メディアに踊らされるもよし、自分の道を探求するもよし、久しぶりに訪れた快晴のときでしょうから、思う存分謳歌してほしいです。

岩崎う大 1978年東京都生まれ。早稲田大学卒。かもめんたるとして槙尾ユウスケとコンビを結成。キングオブコント2013年優勝。お笑い芸人だけでなく、脚本家、放送作家、漫画家として多彩に活躍中