日本を代表する夫婦漫才の第一人者、宮川大助・花子さん。昨年からほぼ寝たきりになってしまった花子さんを大助さんが自宅で介護している。花子さんが便秘のときには指を直腸に入れる摘便も行い、「いいうんちが出るよう、歌を歌いながらやっています」と楽しそうに語る。自身も腰痛を抱えながら夫婦2人で暮らすことにこだわるその理由とは―。
ひとりの人間としてお手伝い
血液のがん「多発性骨髄腫」で闘病中の妻・花子さんを支える、宮川大助さん。花子さんは放射線治療のために入院し、ようやく自宅療養が可能となり退院したばかりだ。
「花子が戻ってきてホッとしています。家にいないとさびしいですよ。健康なときはわかりませんでしたが、こういうときに『嫁はんは自分の身体の一部なんやな』と感じます」(大助さん、以下同)
昨年末から右足が動かなくなり、ほぼ寝たきり状態となった花子さんを、24時間つきっきりで介護。そんな大助さんの日常のひとつになっているのが、排泄の介助だ。
「抗がん剤の影響で便の状態が不安定で、いつ出るかわからないんですね。朝早く起こされることもあるし、夜遅くに始末が必要なことも。下痢のときはポタポタと垂れてくるし、便秘のときは踏ん張っても出にくいから、肛門に指を入れて、便をかき出してあげるんです。そりゃもちろん手袋をはめてますよ」
便の状態は、花子さんの体調がわかる貴重なバロメーター。「ちゃんとした便が出たときは最高にうれしい」と話す。寝るときは、自力でトイレに行けない花子さんのために、尿道カテーテルを挿入してから介護ベッドの隣で就寝するのが日課だ。
「男なら女性のパンツの中を見るなんて誰でも興奮しますが(笑)、もうそんな感情はありません。ひとりの人間として、嫁はんの生活をお手伝いさせてもらっとります」
やるべきことは身体的介護だけではない。食事の用意から掃除、庭の草取りまで、家事全般のすべてを担う。
「朝昼晩の食事は僕が準備します。特別な料理はしないので娘が冷凍ごはんやおかずを作っておいてくれたり、花子のお姉さんが畑でとれた新鮮な野菜を持ってきてくれたりするので、助かります。車いすに乗せて、2人で向かい合って食事をするときが、いちばん幸せな時間だね」
約6年にも及ぶ高齢者同士の老老介護で最も神経を使う瞬間が、花子さんを抱えて移動させるとき。しかし、大助さんは過去に腰部脊柱管狭窄症で手術を経験。今も慢性腰痛を抱える。
「移動するとき、嫁はんの呼吸が整うまで同じ体勢で待っているんですが、僕も腰が痛くてしんどい……。だから病院の先生に相談して、今度はヘルニアを治す手術を受けることに。1か月くらい入院して調子が良くなれば、もっとラクに移動の介助ができる。そしたら嫁はんを車に乗せて買い物に行って、外の空気を吸わせてやりたいんですよ」