2015051219 shakai (18)
バイトの女子高生ら3人が射殺された『ナンペイ大和田店』跡地の駐車場には、警視庁が目撃情報を求める立て看板がある


 阪神・淡路大震災、オウム真理教の地下鉄サリン事件、国松警察庁長官狙撃事件など大きな事件が相次いだ’95年の7月、東京都八王子市のスーパー『ナンペイ大和田店』で未解決の凶悪事件が起きた。

 営業が終わったスーパーの事務所内で、女性パートのAさん(当時47)、アルバイトだった高2女子のBさん(同17)、その友人で同じくアルバイトだった高2女子のCさん(同16)が、何者かに至近距離から拳銃で撃たれ、殺害された。あれから20年。

 Bさんが通っていた私立高校で当時、学年主任だった伊藤孝久・現中学校教頭(63)は、

「口数は少ないけれども、いつもニコニコしている明るい子でね。ESSに所属していました。将来は幼稚園の先生になるのが夢で、オルガンを習い始めたばっかりだった。校長からの第一報を耳にしたときは、まさかをはるかに超えて想像を絶する域でした」

と振り返る。

 スーパーの近所に住む主婦は、次のように覚えている。

「事件は盆踊りをやっていた時間帯で、その音に紛れて銃声が聞こえなかったという人も多いんです。盆踊りを見越してやったのなら、犯人は日本人だろうという人もいれば、いや、残酷なやり方で銃も特殊なものだったので、外国人ではないかと疑う人もいる」

 別の住民は「実際に現金は盗まれていないので、誰かを狙った怨恨ではないかという人がいる」と話す。

 犯人が残した物的証拠は銃のほかにも数点あったものの、目撃情報がほとんどなかったため、解決の糸口が見つけられないまま歳月だけが過ぎた。その間、さまざまな真犯人説が浮上しては、消えていった。捜査特別報奨金制度(公的懸賞金制度)の対象にもなった。

 そして今年2月、一部報道で新たな真犯人説が報じられた。被害女性を縛ったガムテープから、被害者やこの事件の捜査にあたった全捜査員とは異なる指紋を検出し、警視庁が保有する指紋データベースと照合した結果、約10年前に死亡した日本人男性と一致したという。本当ならば限りなく"クロ"に近い。

 事実関係を確認すると、

「粘着テープから指紋の一部が検出されたのは事実だが、日本人男性の指紋と一致してはいない。指紋の一部に似ている点があるというだけである」(警視庁)と否定。

 この男が犯行にかかわっていた可能性については「不明。事件と関連があるかどうかも含めて現在、捜査しているところ」(同)という。とりわけ凶悪な事件に関しては時効が撤廃されている。警視庁によると、事件発生からの捜査員数は延べ約17万2000人。現在も約20人の捜査態勢を敷いている。

 この20年間、Bさんの母校では毎年、事件の日に追悼礼拝が行われ、当時の同級生たちが彼女の死を悼んできた。並行して、彼女の死を無駄にしないため、2度とこうした事件が起きないように、『銃器根絶を考える会』を立ち上げた。全国各地へ出向いて、街頭でビラ配りなどをしながら市民へ訴え続けている。

 かたや、Cさんの母校の都立高校は11年前に閉校。翌年から同じ校舎で新たな都立高校に生まれ変わった。中学校の新入生に目をやりながら、伊藤教頭がやるせない表情でポツリとつぶやいた。

「もう20年ですか。無事だったら、Bさんはこの子たちの親になっていたころかもしれませんね」