安保関連法に反対するママの会は5日午後、JR新宿駅西口で「新宿ジャック」と名づけた街頭演説会を行った。

「私は南スーダンに派遣される自衛官の母親です。もし息子に何かあったら、誰が責任を取ってくれるんですか。命を返してくれますか。お金を払ってチャラですか」

 全国から約60人のママ友が集まり、慣れない街宣車でマイクを握ったり、通行人に選挙の投票を呼びかけるチラシを配った。冒頭の平和子さんは北海道千歳市から駆けつけ、安倍首相に向けて書いた手紙を読み上げた。

「裁判では税金が動くだけ。あなた方が自腹を切るわけではない。私はこの活動をするにあたって、息子一家と縁を切りました。息子に恨まれるより、死なれるほうがつらいからです」(平さん)

 スピーチを見守る母親たちは息をのんだ。

「息子に書いた絶縁状には、《生き抜け。自分のところに来てくれた宝もの。奥さんと子ども2人、この家族を守って天寿をまっとうしてくれ。それが私の願いだよ》と書きました。私たち母親に求められているのは、人間として大切なことを伝えること。安倍政権がやっていることは何ひとついいことがありません」

 北海道の椙木晃子さんは、熊本地震で、千歳市内の駐屯地から「災害派遣」と書かれた自衛隊車両が次々と出動していく様子を見た。

「人の命を救う自衛隊であってほしい。戦闘地域で銃を向けたり、向けられたりするような軍隊にはなってほしくありません」と話した。

 埼玉県川口市の佐藤裕子さんは、熊本地震発生後も鹿児島・川内原発が稼働していることに疑問を投げかけた。

「川内原発をなぜ止めないのか不安に思うお母さんが、子どもとどう逃げるか、本気で孤独にシミュレーションしていると思います。地震と違って戦争と原発は人が止められます。子宮が泣いています」

 通行人にうるさいと思われないよう、落ち着いて話すことを心がけたという。沖縄の与那覇沙姫さんは米軍基地問題を取り上げた。

「戦後、私の住む読谷村は85%が基地で埋め尽くされました。沖縄のおじい、おばあは私たちの未来のために闘い続けてきた。闘ってくれたから今、私たちは“基地はいらない!”と声をあげられる。過去と現在はつながっているし、未来につながります」

 サックス演奏や詩の朗読を交え、スピーチは約1時間におよんだ。ママ友たちは通行人にメッセージを書いてほしいと呼びかけた。

 この日の東京の最高気温は27.4度。夏日の太陽が照りつける中、平和を呼び込むという招き猫の着ぐるみを着たママ友もいた。

 ママの会発起人で京都の西郷南海子さんは「グーを突き上げてエールを送ってくれる人がいました」と手ごたえ。同会事務局の長尾詩子弁護士は「“平和の木”にたくさんのメッセージが集まってうれしい」と喜んだ。

 大木を描いたメッセージ板。木の葉型の色紙には「平和な日本で子どもとイチャイチャしたい」と書いてあった。