気楽だけど、少し寂しいひとり暮らし。もし一緒に住んでくれる若い人がいたら……? 最近、新しい取り組みが広がりつつある。

仲良くピースサインをする米田さん(左)と宮本さん。「血がつながっていないからこそ、素直になれる部分もあります」(米田さん)

  ◇   ◇   ◇  

 サザエさんのような3世代同居は昔のこと。平成27年国勢調査によれば、65歳以上のうち男性の8人に1人、女性では5人に1人がひとり暮らしだ。高齢者の単身世帯について、国は、2035年には762万世帯を超えると予測する。

 元気に暮らしているうちはいいけれど、いざというとき、支え合える存在がいるかどうかは大きい。そこで注目を集めているのが、孫世代とシニア世代が赤の他人同士、ひとつ屋根の下で同居する暮らし方。

「老人問題や住居問題にとどまらない、新しい人間関係のプロジェクト。血縁を超えた支え合いや絆が生まれるものなので、慎重に大事に進めています」

 そう話すのは、事業を運営するNPO法人『リブ&リブ』代表理事の石橋ふさ子さんだ。

学生と暮らすと若返ります!

 通常1年間、元気なシニアの自宅に学生が同居するのが基本。住居費はゼロ、月々の生活雑費と光熱費(2万円程度)は学生がシニアに支払う。そして可能であれば、週1~2回は夕食を一緒に食べること。それがルールになっている。

 シニアと若者の双方と面談し、マッチングを実施。めでたく同居が決まったら、入会金2万円のほか、月3000円の会費が必要になるが、都心で一から家を借りることを思えば安いもの。’12年のスタート以来、1年にひと組のペースでペアを増やしているという。

 実際にホームシェアで5人の学生を送り出した宮本さん(70代男性)は、

「妻を亡くし、子どもは独立。ひとり暮らしをしていました。孫ほども違う年の学生と暮らすと若返りますよ! お互いの価値観を認め合って、ほどよい距離感で暮らすのが秘訣だと思います」と語ってくれた。

 また、娘にひとり暮らしを心配されて学生を受け入れた浅見さん(80代男性)も、「孫そっくりの青年が来てくれて安心しました。孫が一緒にいてくれるようなもの。気兼ねなく、互いにマイペースに暮らしています」と満足げ。料理好きの浅見さんは、食事を作ってあげることもしばしばあるという。

 そもそも石橋さんが事業を立ち上げたのは、ヨーロッパで行われていた『世代間交流ホームシェア』を知ったのがきっかけ。

 訪欧し実態を調べて回ったとき、スペイン・バルセロナで、ホームシェアをしているシニアと学生ペアに引き合わせてもらった。“私にはこの子が生きがい。エネルギーをもらって元気でいられるのよ”と語る90代の女性の横には、孫娘のような学生が寄り添っていた。

「そこに理想形がありました。孫のような学生とシニアが仲よく、お互いを思いやって暮らしていたんです」(石橋さん、以下同)

 これを日本でも広めたいとの思いからスタートして5年。2017年、初めて女性同士のペアが誕生した。

「ご本人が受け入れを前向きに考えていたとしても“他人を家に入れるなんて危険”と周囲が止めるケースが多いようです。特に女性は親戚の和を重んじるので、なかなか一歩を踏み出せない方が多いようです」

 何歳になっても、自分の暮らしや生き方は自分で決められる。世代を超えて支え合うことで、活気ある、自由な生活が送れる。そのために、こんな選択肢もあることを覚えておきたい。

<教えてくれた人>
石橋ふさ子さん◎NPO法人リブ&リブ・代表理事 アメリカの大学で行動科学を学んだ後、在日アメリカ大使館で約30年間、国際交流事業を担当。その後、外資系企業で5年間、社会貢献事業を担当し、2012年にリブ&リブを設立した