高齢化の道をひた走る日本社会。認知症の患者数も増え続け、'14年には65歳以上の7人に1人の割合に。'25年には700万人に達すると予測されるほどだ。
アルツハイマー病は治せる
長寿と認知症研究の専門家である白澤卓二先生が解説する。
「認知症で最も多いのがアルツハイマー型で、全体の6~7割を占めています。それから脳の血管障害で起きる脳血管性認知症が2割ほど。ほかにも幻視が特徴のレビー小体型など、さまざまな種類があります」
これまで認知症は、はっきりとした原因がわからず、効果的な治療法も確立していないと言われてきた。現に、もの忘れ外来などで出されているアルツハイマー病の処方薬には、《認知症の進行を抑制するという成績は得られていない》《本剤の有効性は確認されていない》といった趣旨の注意書きが記されている。
ところが、白澤先生は、「アルツハイマー病は、いまでは治せる病気になりました」と断言する。
「画期的な治療法が登場したことが大きい。アルツハイマー治療の世界的権威であるアメリカのデール・ブレデセン博士が開発した『リコード法』です」
その特徴はアルツハイマー病が起こる背景に着目し、原因を突き止めた点にある。
「従来、アミロイドβというタンパク質が脳内に蓄積してダメージを負った神経細胞が次々と死滅し、アルツハイマー病を引き起こすという説が有力視されてきました。予防も治療も、アミロイドβをいかに取り除くかということにばかり主眼が置かれてきたのです」
しかしリコード法では、アミロイドβは脳を守ってくれているものだと考える。
「アミロイドβは、言うなれば消防士。火が燃え盛るほど、鎮火のために集まる消防士の数は多くなりますが、消防士を排除したところで肝心の火は消えません。アミロイドβはアルツハイマーを引き起こすいろいろな要因に対し、防御反応として脳に蓄積され増えていくのであって、原因物質ではなかったのです」
では、何がアルツハイマー病を引き起こすのか? リコード法では「(食事などによる)炎症」「(認知機能にとって重要な)栄養素の不足」「重金属やカビといった毒素」など、36個の原因をあげている。
「ブレデセン博士はアルツハイマー病患者の脳を“36個の穴のあいた屋根”にたとえています。それぞれの穴は認知症を起こす原因ですが、どこにどのような穴があいているかは個人によって相当違う。そのため穴を個別に、大きなものからふさいで治療します」
『お茶の水健康長寿クリニック』では、リコード法をもとに、解毒と神経細胞の再生治療を行っている。
投薬治療で認知機能が改善
「どの神経細胞がダメージを受けているかを検査したうえで、それに合った飲み薬を服用してもらいます。アルツハイマー病の場合、多くはギャバという神経細胞が傷害を受けており、ギャバトロフというサプリメントを使って治療します。初診のときには乱れた脳波だった人も、服薬を続けて半年もたてば正常になり、神経細胞が再生されます」
全国から来院した約100人の患者に半年間、投薬治療を続けた結果、ほぼ全員に神経細胞の再生が確認でき、認知機能の改善も多くみられたという。
通院が難しい読者にもできることは?と尋ねると、白澤先生は「本当は検査をして、ピンポイントで原因を取り除くことが重要ですが……」としながらも、こんな提案をしてくれた。
「もし歯の治療をされていて、アマルガム(銀歯)があったらはずしたほうがいい。あれは水銀ですから毒素がアルツハイマー病につながります。それから日光に当たること。紫外線によって体内でビタミンDが生成され、認知機能を上げる効果がある。日焼けサロンに行くのもいいでしょう」