テレビに雑誌にSNSに今、ちまたには数え切れないほどの健康ネタが交錯中。でも、これってホントに効果ある? と感じたことはないだろうか。そんな不安を吹き飛ばすべく、名医たちが本当に正しいと太鼓判を押す、健康長寿に役立つ情報をピックアップ。まずは、解説をしてくださる5人の先生をご紹介します。
【最強の医師団】
◎世界標準の糖尿病研究の旗手:坂本昌也先生
国際医療福祉大学医学部教授。三田病院内科部長。高血圧、糖尿病、脂質異常症のトリプルリスクを診るスーパードクター。
◎オックスフォードで難病の特効薬発見に貢献:下村健寿先生
福島県立医科大学病態制御薬理医学講座主任教授。英オックスフォード大研究員時代に新生児糖尿病の特効薬の発見に貢献。
◎AIを駆使する内視鏡診断治療の先鋒 :炭山和毅先生
東京慈恵会医科大学内視鏡医学講座主任教授。AIを駆使した内視鏡手術の達人で早期の胃・大腸がんも内視鏡で摘出。
◎日本を代表する認知症治療の権威:齋田良知先生
順天堂大学スポーツ医学・再生医療講座特任教授。PRP注射を駆使した最先端の関節痛治療のほか生活習慣病予防にも尽力。
◎公認心理師の資格も持つ慢性痛治療の専門医:北原雅樹先生
横浜市立大学附属市民総合医療センターペインクリニック内科診療部長。トリガーポイント療法「IMS」の第一人者。
食生活・ダイエット部門〜前編〜
■やせたければ“ゼロカロリー”にこだわるな!
「ゼロという言葉に安心するのは危険です」と、坂本昌也先生。
いつもゼロカロリーの食品や飲み物を選んでいるのに、いっこうにやせる気配がない、という人は確かに多い。その原因は、ゼロという言葉に安心して、それ以外の食べ物をむしろしっかり食べてしまう傾向があるから。
「ゼロカロリーの食品や飲料に含まれる人工甘味料は糖尿病の発症に影響するということが動物実験レベルで明らかになっているし、栄養バランス無視でゼロカロリーにこだわるのは、むしろ不健康」(坂本先生)
■糖質制限で心血管病のリスクが高まる
「人気の糖質制限ダイエットですが、その効果に対してはっきりとした結論は出ておらず、医学的には糖質制限でやせるとは言い切れません」(下村健寿先生)
また、糖質制限は長期間続けることが難しいため、糖質制限でダイエットに成功した場合も、1年後には残念ながら元の体重に戻る事例が多い。
さらに糖質制限には、長期的に見ると死亡率や心臓、血管などの病気のリスクを上げるという報告も。健康的なダイエットをしたいなら、結局のところ適度な運動とバランスのよい食事がいちばんの近道に。
食生活・ダイエット部門〜後編〜
■日本人は内臓脂肪がたまりやすい体質
「日本人は欧米人と比較して、内臓脂肪がたまりやすくて、インスリンが分泌されにくいという体質なのです。これは、古来より日本人が穀物を多く摂取する食生活を続けてきたことに由来します。近年の糖と油の多い欧米風食生活は、内臓脂肪がたまりやすいので注意。とはいえ、内臓脂肪は体質よりも、生活習慣による影響がいちばん。特に学生時代は運動習慣があったのに、社会人になって急に運動をやめたパターンが最も危険です」(前出・坂本先生)
体質に関係なく太りやすい状況にあると強く認識すべし。
■血糖値を気にする人もスイーツOK!
近年、日本の糖尿病患者数は急速に増加。ところが、日本人のカロリーと糖質摂取量はむしろ1950年代よりも減少しており、逆に患者数増に伴い増加しているのが、エネルギー摂取量に占める脂質の割合。つまり、糖尿病患者が増えたのは糖質摂取量が増えたからではなく、食の欧米化にあると考えられるのだとか。
「糖尿病になりにくい食生活で心がけるべきことは、1日3食、穀物や野菜を取り入れたバランスのいい食事を心がけることが第一。さらに夕食は油分を控え、量も少なめにしてできるだけ早めの時間帯にとるようにできればベスト。そのうえで、適量であれば甘いものを食べても問題なし」(坂本先生)
■補正下着+早食いで逆流性食道炎のおそれ!
お腹まわりをギュッと引き締め、美しいボディラインを演出する補正下着。魅力的なアイテムだけれど、健康の面では取り扱い注意。
「補正下着で胃のあたりを締めつけると、胃を膨らませようとゲップが出て空気や胃酸が逆流し、胸焼けや逆流性食道炎を引き起こすおそれがあります」
一方、逆流性食道炎を招く要因として、もうひとつ注意したいのが早食いの習慣。
「早食いは血糖値の上昇による満腹感を得ることができず、食べすぎや肥満の原因になることはご存じのとおり。さらに、一気に流し込むと食べ物より軽い胃酸が上に上がり、補正下着と同様に逆流性食道炎の引き金になる危険性も。ゆっくり食べ、胃を締め つけなければ長生きできます」(炭山和毅先生)
補正下着をつけた状態での早食いは厳禁といえそう。
運動・エクササイズ部門〜前編〜
■ぶら下がり健康器で健康長寿も夢じゃない
「身体の伸ばしづらい部分を伸ばすと長生きできます」と言うのは、齋田良知先生。
最近、目にすることも減ったぶら下がり健康器。実は、主に肩こりや腰痛の改善に確かな効果が認められている。というのも、肩こりや腰痛対策には身体のストレッチが特効薬となるものの、自分で身体を伸ばすのにはどうしても限界が。ぶら下がり健康器を利用すると自力では伸ばしきれない部位までしっかり伸ばすことが可能。その結果、身体のこりや痛みの解消に高い効果が期待。
「たかが肩こり、腰痛とあなどっていると、痛みによるストレスからうつ状態になるなどほかの病気を招くおそれもあります」(齋田先生)
実家に眠っているぶら下がり健康器を再活用してみては?
■健康寿命を延ばしたければ腹筋を鍛えよ
筋力はいつまでも自活するために欠かせないもの。特に腹筋は、日常生活では鍛えにくいのと同時に、加齢とともに衰えやすい部位。腹筋が衰えると骨盤の位置にずれが生じ、腰痛や、股関節が詰まるなどの弊害が。股関節が詰まると、連鎖的にひざや足首が痛むことも少なくないので、動ける身体を維持するためには腹筋の強化が大切。
「筋力アップというと、ジムに通って長時間のトレーニングをイメージしがちですが、家庭でも十分できます。テレビを見ながらでもできる1日10分間の腹筋エクササイズなら、運動習慣がなくても始められますよ」(齋田先生)
さっそく、今日から始めよう。
【齋田先生考案! 1日10分間が目標・簡単腹筋エクササイズ】
◎腹式呼吸
1. おへその下あたりに空気をため込むイメージで、お腹をふくらませながら鼻から大きく息を吸う。
2. 口からゆっくり息を吐きながら、お腹をへこませる。
◎おへそのぞき込みポーズ
横になって両ひざを立て、お腹の上に両手をのせて、あおむけに寝る。息を吐きながらおへそをのぞき込むように頭を上げ、ゆったり呼吸しながら3~5秒キープし、元の姿勢に戻る。勢いをつけないように。
運動・エクササイズ部門〜後編〜
■週7日運動すると死亡率が上がる
齋田先生は「疲労を回復できないと免疫機能を落とします」と言う。また、運動習慣と心疾患による死亡率の因果関係の調査結果をまとめた論文によると、最も死亡率が高かったのは全く運動をしない人で以降、週に1回、2回と運動習慣が増えるにつれて死亡率は下がるという結果が出た。
ところが、同時に週6日以上、つまりほぼ毎日運動をすると、1日おきに運動する人よりも死亡率が上昇する結果が明らかに! これは、せっかく運動をしても、疲労回復をきちんと行わなければ逆に免疫力が落ちることの裏づけと考えられる。まさに「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」。
■慢性痛は脂肪の量より筋肉の量が問題
長期的な運動不足で筋肉量が減ると疲れやすくなるうえに、残った少ない筋肉に大きな負担がかかり、痛みも発生しやすくなる。
「太っている人の場合は、適切な食事や運動療法で体重を落とすと痛みが和らぐことも多いんです。それは脂肪の下に、ある程度、筋肉がついていることが多いから。逆にやせていても筋肉量が極端に少ない人の場合、慢性痛を改善するのはなかなか難しいから注意が必要です」(北原雅樹先生)
特に女性は、更年期を迎えると、自然と筋肉が減少。見た目の細さだけを追求していると、年をとってから大きなしっぺ返しを受けるおそれが。以下のチェック項目にひとつでも思い当たれば筋肉量が足りていない可能性大。生活習慣の見直しを。
【筋肉量チェック】1つでも当てはまったら要注意!
□気を抜くと、ガニ股歩きになってしまう
□ハイヒールで歩くとつま先とヒールが交互に床にあたり、音が鳴る
□ラクに立つと、背中は丸まり下腹が前に突き出る
□出産経験はないが、尿漏れの経験がある
(構成/中村明子)