コロナ第3波の猛威が止まらない。東京都の822人(12月17日)を筆頭に、1日あたりの感染者数は連日のように記録が更新されている。
医療を専門とするジャーナリストの村上和巳さんが言う。
「気温が下がれば部屋の換気を怠りやすく、室内にこもりがちに。加えて、年末年始は会食や家族で集まる機会が増える時期なので、感染拡大が続くと言われています」
とりわけ注意したいのが家庭内感染だ。東京や大阪などの流行地域を中心に、家族を含む同居者間での感染が相次いで報告されている。
「基本的にウイルスは外から入ってくるので、外出先から家の中へ持ち込まないことに尽きる。ただ、感染防止にあたって見落としがちなポイントも実は多いんです」(村上さん、以下同)
マスクの扱い方でリスクを減らせる!
まず例に挙げたのは、もはや生活必需品となったマスク。
「中国の研究報告では、家の中でもマスクをつけていれば家庭内感染のリスクを8割ほど減らせる、としています」
さらにマスクの選び方によってもリスクは変わることが明らかに。スーパーコンピューター『富岳』のシミュレーションを使った最新の研究ではウレタンや布製より不織布マスクのほうが飛沫の飛散防止効果が高い傾向にあった。
「厳密に感染対策をするのであれば、マスクをつける前に手を洗い、ずれるなどしてマスクを直したときにも手を洗う。マスクをはずす前、はずした後にも、やっぱり手を洗う。これはWHOが推奨している方法です」
不織布マスクは使い捨てが原則。1度はずしたら、ポリ袋などに入れて早めに捨てるのが望ましい。
「ただし、不織布マスクは通気性が悪いので、肌が弱い人に向いていません。体質、コストなど総合的に判断して選ぶのがいいでしょう」
うがいクラスターに要注意
ステイホームの過ごし方も重要になる。
「食事をとるとき、例えば3人家族なら2対1に分けて、まずお母さんと子ども、その後にお父さんというように時間差で食べる。それだけでずいぶんリスクを減らせます」
何気ない生活習慣にも盲点が。子どもを真ん中に挟んで「川の字」になって眠る親子は微笑ましいものだけど、感染対策としてはNG。
「川の字に頭が並んでいる状態は互いの飛沫を吸い込みやすい。頭の向きを交互にするなどの工夫が必要です」
沖縄・那覇市では12月初旬、洗面所での歯磨きがクラスターにつながったとして物議を呼んだ。
「歯磨きと同様に、うがいをするときも要注意。勢いよく吐き出すと洗面台や鏡に飛沫が飛び散ります。歯磨きやうがいのあと、除菌クリーナーでふくよう心がけて」
1つのコップに家族全員の歯ブラシをまとめて入れている家庭はよくあるけれど、
「やめたほうがいい。もし1つの歯ブラシにウイルスがついていたら、そこから接触感染を起こしてしまいます。旅行用の歯ブラシについているようなプラスチック製のキャップでガードしましょう」
そう話すのは、医学博士で愛知医科大学客員教授の植田美津恵さん。
タオルや布団、食器類など、家族で共用するものにも注意を呼びかける。
「タオルは自分専用のマイタオルを決めておき、それだけを使うようにする。味気ないですが、箸は割り箸に替えて、コップも紙コップにして使ったら捨てましょう」
一方、トイレは家族との共用を避けられない。排泄後に手を洗うため、気がゆるみがちだが、感染者の排泄物からも新型コロナウイルスは検出されている。
「用を足したあと、ふたを閉めてから流すことです。ふたの内側や便器、便座、トイレのドアノブを1日2回、定期的に消毒するのも効果的です」(前出・村上さん)
家庭内感染で特に気をつけなければならないのが、高齢者や持病のある人と暮らしている場合。村上さんは「自室だけで暮らしてもらい、家族の中でも常に同じ人が食事を運ぶなどの工夫が必要になります」と話す。植田さんは、入浴の順番も重要だという。
「高齢者や持病のある人を優先しましょう。外から帰ってきた人が先に入浴すると、浴室や脱衣所で触れたところにウイルスが付着して、あとから入る人が接触感染を起こすおそれがあります」
家族との集まりはどうすればいい?
家族が集まる席でも、コロナの冬は平時のようにはいかない。村上さんによると、
「その場に高齢者がいるなら短時間の滞在にとどめて。もし自分が感染してウイルスが排出されたとしても、接触時間が短ければ相手は感染を免れる可能性があるからです」
移動手段の選び方次第で外から家の中にコロナを持ち込むリスクは下げられる。
「新幹線は指定席をネットで予約するときに、車両の混み具合を事前に確認できます。前もって調べておくといいでしょう」(前出・植田さん)
だが、すいている席に座っても油断はできない。
「JALと理化学研究所の共同研究によれば、リクライニングシートを使用した状態では飛沫が前後左右の座席に多く飛びやすいことがわかっています。機内や新幹線の車内ではリクライニングは避けて、マスクも常に着用を」
と、植田さん。外出先では飛沫が飛びやすい方向にも意識を向けたい。
「エレベーターに乗るときはほかの人たちと向き合う状態にならないよう注意。会話も控えましょう」
インフルワクチンがコロナ対策になる理由
家庭内感染のほか、第3波にはもう1つの特徴がある。
「第1波、第2波に比べ無症状感染者が増加しています。家庭内感染が続出しているのは、そのためでしょう。若い人は感染してもほとんど症状が出ません。実際、アメリカの『ニューイングランド医学誌』に発表された研究報告で、米海兵隊への調査の結果、無症状感染者を介して感染拡大したことがわかっています」
そう指摘するのは、内科医で、医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さん。無症状感染者からの家庭内感染を防ぐには、PCR検査体制の拡充が必要と警鐘を鳴らす。
「帰省や家族で集まる予定のある人、あるいは高齢者や赤ちゃんのいる家庭の方、受験生を抱えるお母さんなどは、症状がなくてもPCR検査を受けておいたほうがいい。3000円程度で受検できる民間の検査機関が各地に登場しています。1週間の間に2回受けて、両方とも陰性なら、まず問題ありません」(上さん・以下同)
ほかにも、意外だけど有効な方法がある。
「インフルエンザワクチンはコロナにもかかりにくくなるという研究報告があります。両者の症状は似ているうえ同時感染するおそれもあるので、接種しておくことをおすすめします」
■「コロナの冬」を乗り切る10のポイント
(1)不織布マスクがベスト。はずしたらそのつど、つけ替える
(2)マスクをつける前も、はずしたときも、そのつど手を洗う
(3)歯ブラシは常にキャップをつけておく
(4)トイレはふたを閉めて流す
(5)入浴の順番は、高齢者や持病のある人から
(6)うがいや歯磨きの飛沫は感染リスクに
(7)家族と同室で寝るときは「川の字」になるのを避ける
(8)エレベーターに乗るときは向き合った状態を避ける
(9)飛行機や新幹線に乗るときはリクライニングを使用しない
(10)インフルエンザワクチンはコロナ対策になるので接種する