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「むくんでる。昨夜は飲みすぎた」「クマが目立つのは疲れがたまっているせい?」

 鏡に映った顔を見て、私たちは日々、体調を推測している。これを診断法として究めたのが、顔を観察して病状を判断する「顔診法」だ。

「東洋医学では古くから、それぞれの病気ごとに、どんな兆候が顔に表れるかを研究。診断に活用してきました。実は、顔には身体の中で起こっていることが鏡のように反映されているのです」と話すのは、みうらクリニック院長の三浦直樹先生。

「私が顔診法を知ったのは20年以上前。さっそく診療に用いてみると、患者さんの状態と顔診法の理論が、かなり合致しているとわかりました」(三浦先生、以下同)

セルフでもできる「顔診法」

 以来、顔診法を診療に取り入れるように。

「顔を見れば、患者さんの弱っている部位を推測できるので、検査項目を決める判断材料にしたり、主訴以外に不調がある部位を探ったりするのに顔診法を役立てています」

 実際に顔診法を活用した症例を教えてもらった。

「70代の男性であるAさんは、初診時、くっきりと血管が浮き出た赤い鼻をしていました。これは血圧が高く、心臓に負担がかかっている人に見られる特徴です」

 この見立てが正しいことを血液検査などでも確認。

「Aさんには漢方薬の処方とともに、心臓によい食材の摂取や運動などのセルフケアを実践していただきました。その結果、2か月で鼻はきれいな状態になり、症状もよくなっていったのです」

 顔の兆候は病気の改善とともに消えていく。顔診法は治療が患者さんに合っているか判断するのにも役立つのだ。

 自分の体調チェックにも、もちろん顔診法は使える。

「洗顔など鏡で顔を見る時間が1日の中に必ずあるはず。顔診法の知識があれば、そのときに体調を推測して、対処することが可能となります」

 三浦先生自身もセルフケアに顔診法を役立てているそう。

「例えば、目や眉間には肝臓の状態が表れます。肝臓が疲れている兆候があれば、その日はお酒を控えています」

 初心者は自分の顔を毎日、観察することから始めよう。

「ここで紹介する3つのチェックポイントを意識すると、変化に気づきやすくなるはずです。顔診法で重要なのは、昨日と今日で自分の顔に変わった点がないか比較すること。顔つきや体質には生まれつきの違いがあるので、人との比較は意味がありません

 寒い時季、初心者でもわかりやすいのはくちびるの色や状態などの変化。

「色が紫っぽく変化したら、身体が冷えている証拠。温かいものを食べるなど、冷え対策をとるといいでしょう。また、皮がむけたり端が切れたりするのは、胃腸に負担がかかっているサイン。食事の量や内容を見直しましょう」

 顔診法で不調に早めに対処して、冬を元気に乗り切ろう。

【チェック1】左右差を見る

 顔のパーツの位置や大きさなどに左右差がないか確認。不調がある臓器や筋肉は縮むので、そちら側にあるパーツが下がったり小さくなったりする。ついでに服のシワもチェックを。この場合、縮んでいる側にシワが入る。

左右差がないかチェック イラスト/石崎伸子

【チェック2】吹き出物、シミ、アザを見る

 新たな吹き出物やシミ、アザは不調のサイン。その色で異常がある部位や食事の問題点が推察できる。

■赤
<身体の不調>心臓と循環機能、肺と呼吸機能、神経の異常
<食生活の問題点>水分、果物、酒類、甘いもの、香辛料など刺激物のとりすぎ

■黄
<身体の不調>肝臓と胆のう、すい臓、腎臓と排泄機能の異常
<食生活の問題点>肉、卵、魚介類、塩、にんじん、かぼちゃなどのとりすぎ

■紫
<身体の不調>腸と消化機能、神経、生殖器などの異常
<食生活の問題点>果物とジュース、甘いもの、薬、化学物質のとりすぎ

■白
<身体の不調>神経過敏、肝臓、胆のう、すい臓などの異常
<食生活の問題点>乳製品を含む脂肪分の多い動物性食品、塩のとりすぎ

■青
<身体の不調>肝臓の機能障害、すい臓と脾臓の機能の異常
<食生活の問題点>動物性食品、酒類、甘いもの、炭水化物、刺激物、塩のとりすぎ

■茶
<身体の不調>腸と消化機能、腎臓と排泄機能の異常
<食生活の問題点>果物とジュース、甘いもの、タンパク質と脂肪のとりすぎ

■黒紫(暗く陰った色)
<身体の不調>紫腎臓、腸、生殖器とそれらに関わる機能の異常
<食生活の問題点>果物とジュース、甘いもの、薬、化学物質のとりすぎ

吹き出物やシミ、アザの色で身体の不調をチェック

【チェック3】顔の各パーツを見る

 顔のそれぞれのパーツと内臓には相関関係がある。色の変化やできもの、ふくらみ、へこみなどが現れたら、そこに該当する臓器に不調があるサイン。見落としのないように、頭頂部→ひたい→まゆと上のパーツから順番にチェックしよう。

■髪の生え際~頭頂部「腎臓や膀胱、副腎の不調がわかる」
 頭頂部を指で押すと痛みがあったり、片頭痛で痛んだりするのは、腎機能が低下しているサイン。冷えや尿もれ、膀胱炎などに注意したい。生え際の髪が薄くなってきたら、副腎からのホルモン分泌が減っている可能性あり。

■ひたい「小腸と関連。排泄不調や免疫力低下に注意」
 ひたいに吹き出物などができたり、押すと痛かったりするときは、小腸が弱っている。消化吸収が正常に行われなくなるので、下痢や便秘、免疫力低下などの危険性が。咀嚼不足が原因になるのでよく噛んで食べよう。

■まゆ「歯の問題や生命力が反映される部位」
 目尻側のまゆには、歯の問題が反映される。一部だけ薄い、白髪は、虫歯がある可能性が。また、まゆは生命力を表す部位。長くふさふさしたまゆは生命力が強い証。逆に細く短くなってきたら生活の見直しを。

■目「肝臓と関連。まぶたや目のふちもチェックを」
 目のふちがぐるりと赤くなったら、急性の肝障害の可能性が。涙が出やすい人も肝臓の機能低下が疑われる。まぶたに黄色い脂肪腫ができるのは、中性脂肪値が高いサイン。油や砂糖、卵などのとりすぎに注意。

■目の下「腎臓に対応する部位暴飲暴食に注意を」
 目の下のむくみやたるみは、過度の飲酒、深夜の飲食などで腎臓に負担がかかっているサイン。クマができるのは腎臓の硬直を表す。目尻の下にプチプチと小さな吹き出物ができたら、腎結石ができている疑いあり。

■耳「ホルモンバランスや腎臓と関連する部位」
 ホルモンバランスが崩れると、耳が硬くなったり片耳が赤くなったりする。皮膚全体が荒れたら腎臓疾患の可能性が。また耳には身体の各器官に対応する反応点があるため、ピアスの穴でその部位に不調が出ることも。

■ほお「肝臓と関連。まぶたや目のふちもチェックを」
 もみあげの手前付近が黒ずんでくるのは、肺機能が低下しているサイン。片側だけに黒ずみがあるときは、そちら側の肺が弱っている。肺の下部に異常があるときは、眉間に横ジワができるので、あわせて確認。

■鼻「赤い鼻は心臓の不調や高血圧の可能性」
 鼻は心臓の状態を表す部位。いつも鼻が赤い人は心臓に負担がかかっている、もしくは高血圧になりつつある状態。さらに病状が進むと、鼻の毛細血管が浮き出てきたり、鼻の頭の色が紫に変わったりすることも。

■口「胃腸の状態を反映荒れやできものを確認」
 口は消化管の始まりで、胃腸の状態を表す部位。上くちびるは胃の状態、下くちびるは腸の状態なので、荒れやできものなどが上下どちらにあるかをチェック。また、下くちびるの中央は肛門に対応している。

色、たるみ、クマ……顔でわかる大病の兆し

 自覚症状がまだないときでも、顔には病気の兆しが表れている。ここでは中高年に多い6つの病気の兆候と、おすすめ食材などのセルフケアを紹介。顔にこれらの特徴が現れたら、病院を受診して早期発見&早期治療につなげよう。

 顔診法は大病の兆しを発見するのにも役立つ。

「70代男性のBさんは、耳たぶに深いシワが入っていました。これは脳卒中の兆候ですから検査をすすめたところ、脳血管のつまりが判明。大事に至る前に治療できたのです」

 このように症状が出たり悪化したりする前に、対処できるのが顔診法のいいところ。

ただし、顔診法は診察法のごく一部。それだけで身体の状態すべてがわかるわけではありません。ですから兆候にかかわらず、体調に異変があれば受診を。他人に顔診法を用いるのも控えましょう」

■眉間の縦ジワに注意……糖尿病
 糖尿病の兆候は主に眉間の右側に表れる。眉間のやや右寄りがふくらんだり、眉間右側に縦ジワができたりしたら要注意。おすすめの食材は、塩だけで味つけして煮込んだあずきやかぼちゃ。血液をきれいにする効能がある。

眉間の縦ジワ イラスト/石崎伸子

■切れそうなくらい深いシワ……脳卒中
 耳は人体の縮図で、耳たぶは頭(脳)に該当するといわれる。ここに深いシワが入るのは脳卒中の前兆で、シワがある側の脳に異常の疑いが。食べ物では、血液をサラサラにするしいたけ、血管を強くするひじきなどを食べるとよい。

切れそうなくらい深いシワ イラスト/石崎伸子

■不自然な腫れは……心臓病
 鼻の頭が赤いのは、心臓にストレスがかかっているサイン。鼻が不自然に腫れている場合、心臓が肥大している可能性が。心臓によいのは苦みのある食べ物なので、焼きおにぎりや玄米コーヒー、ゴーヤ、ピーマンなどがおすすめ。

不自然な腫れ イラスト/石崎伸子

■白目の色をチェック……肝臓病
 眉間左側の縦ジワは肝機能低下、眉間の赤みは肝炎の前兆、眉間中央のふくらみは肝臓肥大や脂肪肝、黄色い白目は肝臓病の進行の疑いがある。肝臓にいいのはシジミやカキなど貝類。肝臓の負担となる酒類や添加物は控えめにしたい。

白目の色 イラスト/石崎伸子

■目の下に異変はないか?……腎臓病
 目の下がふくらんだりたるんだりするのは腎臓肥大の兆し。目の下のクマは毒素の排泄が滞り、腎臓が硬直しているサイン。あずきや黒豆など色の濃い豆類、海藻類がおすすめ。腎臓は冷えに弱いので腰にカイロを当てるのもよい。

目の下の異変 イラスト/石崎伸子

■ほおの黒ずみは……肺の不調
 眉間に横ジワは肺の下側に悪いものが滞っているサイン。ほおに縦の黒ずみができるのも、肺の不調の疑いがある。食材でおすすめなのはれんこん。特に節の部分は薬効が高い。1日20~30回、腹式呼吸で深く呼吸するのも肺によい。

ほおの黒ずみ イラスト/石崎伸子
『顔を見れば隠れた病気がわかる』(マキノ出版)顔診法の詳細な説明、症状別エクササイズなどを紹介。

(取材・文/中西美紀)

教えてくれたのは……三浦直樹先生
みうらクリニック院長。薬だけに頼らない各種自然療法を研究。顔診法が学べる望診法講座を全国で開催している。著書に『週一断食で万病が治る』(マキノ出版)など。