中年になると代謝が落ちてやせないのよね~。そんな言い訳は今後、通用しなくなるかもしれない。医学博士・医学ジャーナリストの植田美津恵さんが解説する。
中年太りは代謝のせいじゃない
「生きるために最低限必要なエネルギーを基礎代謝といいます。基礎代謝は加齢に伴い低下する一方、食事でとるエネルギーが過剰になり、中年太りにつながるといわれてきました。
ところが世界29か国の共同研究で、中年期の代謝の減速は1年に0.7%だったことが明らかに。基礎代謝を含むエネルギー消費量は10代後半から50代まで、ほとんど変わりませんでした」
つまり、代謝が落ちたから太るのではないということ。
「中年太りは単に食べすぎ、またはホルモンが関わっている可能性もあります」
鼻が大きいとアソコも大きい!?
昔からよく聞く話だけど、都市伝説じゃなかったの!?
「そうとも言い切れません。京都府立医大の研究チームが死後3日以内の男性126人の献体を調べたところ、鼻の大きさと勃起時のペニスの長さには関係があったと学術誌に報告しています」
そう話すのは秋津医院・院長の秋津壽男さん。亡くなっている人の勃起時のサイズなんて、どうやってわかるの?
「勃起時の長さは、平均指標から導き出した推定値です。なぜ鼻の大きさとペニスの長さに関連があるのかについては、まだわかっていません」
さらに、人さし指より薬指が短い男性はペニスが大きいという研究報告もあるそう。
「男性ホルモンの量が影響しているのではないかと見られています」(秋津さん)
歯を失うと認知症のリスクUP!?
芸能人じゃなくても歯が命! 歯は見た目だけでなく、認知症のリスクにも関わってくる。東北大学の研究グループが3万5744人の高齢者を調査・解析した結果、歯を失ったことで認知症の発症リスクが上昇していた。
「男性の場合、家に閉じこもる人の率が増したこともわかっています。歯を失ってしゃべりにくくなり、他人との交流を避け社会性が損なわれたことで、認知症になりやすくなったのでしょう。
一方、女性は野菜や果物の摂取量が減っていました。歯を失うと噛む力が衰え、栄養状態が悪化し体重も減少するため、認知症のリスクが上がってしまいます」(秋津さん)
症状がなくても定期的に歯科医にかかって、若いうちからケアをすることが重要!
男性のための避妊用ピルがある
妊娠の不安にさらされるのも、望まない妊娠で傷つくのも女性だけ……。そんな状況を変えるかもしれない研究がアメリカで進められている。
「男性用の飲む避妊薬が米ミネソタ大学で研究・開発されています。特定のタンパク質の働きをピンポイントで抑制することで、精子の数を少なくして、妊娠を防ぐというわけです。マウスによる動物実験では99%の避妊効果があったといわれています」(植田さん、以下同)
これまで男性の避妊方法には、コンドームか、パイプカットしか手段がなかった。
「男性の選択肢が増えることで、女性の負担が軽くなるのを期待したいですね。避妊をめぐる問題はカップルの関係性も重要。避妊を相手任せにしてはいけないというメッセージも伝えていく必要があると思います」
コレステロールは低すぎても危険
なにかと悪者扱いされているコレステロール。低ければ低いほどいいようなイメージがあるものの、「実は間違い」と秋津さん。
「血液中のコレステロールの数値が高いと問題がある。これは事実です。コレステロールが高すぎると動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞などのリスクにつながります。
ところが複数の研究調査の結果、コレステロールが低すぎると死亡率は上がることがわかってきました。コレステロールは血管の壁や細胞を包む膜を作る材料にもなっています。そのためコレステロール値が低すぎると、血管がもろくなってしまうんです」
どれぐらいの数値だったら問題ないの?
「男女ともに70~120ぐらいがベスト。70を切ると、下がりすぎの弊害が出るおそれがあります」(秋津さん)
逆境はメンタルを弱めてしまう
逆境や困難に負けず、たくましく乗り越えていく。ドラマや映画でおなじみのストーリーだけど、現実は厳しい。
「特に子どもの場合、暴力やDV目撃などの過酷な体験をすると、“大人になってからも心身の健康を損なうリスクがある”とニュージーランドの研究で指摘されています」(植田さん、以下同)
虐待や親との別離など、子ども時代に受けた逆境の体験をACEと呼ぶ。前述の研究では、ACEがあった人はそうでない人に比べ成人後もうつや不安に陥りやすく、心臓病やぜんそく、関節炎にかかりやすい傾向がみられた。
「ACEの悪影響を挙げるだけでなく、そうした子どもに必要なケアについても研究を重ねてほしいところ。サポートの仕組みを作っていくことも大事だと思います」
便秘は命に関わる
女性に多い便秘は放っておいたら、ダメ絶対! その理由を秋津さんが教えてくれた。
「いきむと血圧が上がるため心筋梗塞や脳梗塞、脳出血のリスクが高まります。実はトイレで脳出血を起こす人は多いんです。また、便秘の期間が長くなると、腸閉塞や腸捻転を引き起こすおそれが。
便秘になって2週間ぐらいで息に便のにおいが混じるようになり、入院騒ぎになります。3週間を超えるとたまった便が胃のほうまでせり上がり、嘔吐するように。手術が必要な場合もあるほどです」
どうやって防げばいいの?
「まず水分や食物繊維をとる。排便のために時間をかけることも重要です。朝、時間がないからトイレに行かないというのはNG。5分もあれば、たいていの人は出ますから」(秋津さん)
野菜から出る灰汁=悪ではない
「野菜から出る灰汁の中にはマグネシウムやカリウムなどのミネラルが含まれています。
加えて種類別に言うと、ゴボウやナス、レンコンから出る灰汁には抗酸化作用のあるポリフェノールが、小豆や大豆から出る灰汁には、免疫力を向上させるサポニンが豊富です。
せっかくの栄養成分を取り除いてしまっては、もったいない。灰汁抜きは長時間、やりすぎないことが基本です」(植田さん、以下同)
ただし、山菜については話が別。
「フキやフキノトウには身体に有害なピロリジジンアルカロイドが、ワラビにはブタキロサイドという有害物質が含まれています。塩を入れた湯でゆがいて、さらに水にさらす方法で必ず灰汁抜きをするようにしましょう」
ヘッドホンの声は共感しやすい
コロナ禍ですっかり定着したリモートワーク。ヘッドホン越しに話をしている相手の声、いつもと違って聞こえている可能性が。
「米カリフォルニア大の研究で、ヘッドホンを通して声を聞くと、話し手に共感しやすくなると報告されています。頭の中で声が響く『頭内定位』という現象が起きて、話し手を身近に感じられるためだといわれています。
ただ、頭の中で声が響く感覚を不快に思う人がいるのも確か。頭内定位を感じさせないヘッドホンが開発されているぐらいです」(植田さん、以下同)
この現象を悪用し、共感させてダマす輩も出てきそう。
「だからこそ話の中身が肝心ということ。声や雰囲気に惑わされず、内容を吟味するよう心掛けたいところです」