春になっても寒暖差の影響でなかなか改善しない「冷え」、月経由来の鉄分不足による「貧血」、また、女性ホルモンの乱れからくる「肌あれ」や「不妊」といった女性特有の悩みが温泉につかることで改善できるとしたら朗報だ。
「長年、温泉を巡っているおかげで冷えや肌あれとは無縁です。以前、婦人科系の病気で手術をしたのですが、そのときも湯治をしたことで傷の治りが思ったより早かったです」という温泉エッセイストの山崎まゆみさんが“女に効く”温泉をピックアップ。
不調の改善だけでなく、非日常感を味わって気分をリフレッシュするためにも、温泉での休日を過ごしてみてはいかが。
【冷え】“万年冷え”を炭酸&硫黄泉で改善
金山町温泉「せせらぎ荘」(福島県)
奥会津の金山町温泉は、周囲を森と湖に囲まれた、まるで妖精が出てきそうな里に湧き出ている。そんな金山町温泉の保養施設「せせらぎ荘」は、100%源泉掛け流しの天然炭酸温泉が人気の日帰り温泉施設だ。
シュワシュワ炭酸泉が血管を広げて血行促進
大浴場の大黒湯は39・5度という低温なので、身体に負担がかからずじっくりと温まるのがいい。シュワシュワのサイダーのような炭酸泉が体内に浸透すると、指先の毛細血管の血行までよくなる。 また、敷地内には玉梨温泉という炭酸ガスが溶け込んだ町の共同浴場もあり、2つの温泉を楽しめるのもポイント。
「私が以前、金山町温泉を訪れたのは2月でした。日中でも気温が氷点下の時期で、ブルブル震えるほどの極寒でしたが、大黒湯に入ったところ、文字どおり身体の芯から温まりました。そのあと玉梨温泉にも入ったら身体がほてって夜眠れなくなったほどです(笑)」(山崎さん、以下同)
住所:福島県大沼郡金山町大字玉梨字新板2049-1
電話番号:0241-54-2830
営業時間:9:00~21:00 無休
料金:大黒湯は大人500円。玉梨温泉は大人200円
アクセス:JR会津川口駅より路線バスで約10分
草津温泉「奈良屋」(群馬県)
湯冷めも防ぐ硫黄泉で身体がヌクヌクに
草津温泉といえば思い浮かぶのが、大量の湯けむりが舞う湯畑。そのそばに建つ「奈良屋」は、湯畑の近くで湧出する白旗源泉を引く宿。この源泉は源頼朝が発見して入浴したという、草津温泉の中でも特に伝統と歴史に彩られた源泉だ。
刺激の強い強酸性硫黄泉だが、湯守という名の職人が源泉を寝かせて温度を調整し、さらに湯もみすることで成分を均一にして、温泉の効果をアップ。
「炭酸泉と並んで冷えに効果があるのが硫黄泉。温泉に含まれる硫化水素が、末梢神経の血液の流れを高めてくれるので冷えを改善し、短時間の入浴でもしっかり温まります」
住所:群馬県吾妻郡草津町草津396
電話番号:0279-88-2311
料金:2万9150円~(1泊2食付き・2名1室1名の場合)
※日帰り入浴可
アクセス:草津温泉バスターミナル下車、徒歩約5分
【貧血】鉄分不足が原因の貧血には含鉄泉がおすすめ
小赤沢温泉「楽養館」(長野県)
豊富な鉄分が婦人科系機能を高める
長野県と新潟県の県境で、まさに日本の秘境ともいえる秋山郷にたたずむのが「楽養館」。クラシカルな木造の建物が趣深い日帰り温泉だ。古くから苗場山の登山口に湧く療養温泉として知られ、鉄分を多く含む「含鉄」の赤い湯が特徴。
「この温泉で偶然一緒になった60代くらいの女性から『ここに入ったら止まっていた生理が再開したの!』という話を聞いて、びっくりしました。女性に不足しがちな鉄が多いお湯だからかもしれません」
住所:長野県下水内郡栄村堺18210-10
電話番号:025-767-2297
営業時間:10:00~18:30
休:水曜
料金:大人600円
※冬季休業中。4月28日再開予定
アクセス:関越自動車道石打塩沢ICより車で約1時間30分
花山温泉「薬師の湯」(和歌山県)
温泉を飲んで鉄分を直接取り込む
小赤沢温泉と同様に高濃度の含鉄泉として知られるのが花山温泉「薬師の湯」。浴槽に結晶化するほどのミネラルや鉄分を含み、高濃度の炭酸ガスの圧力で自然に噴き出る天然温泉として人気だ。
26度の源泉風呂、41・5度の大浴場、さらには38度の低温風呂と、さまざまな温度の浴槽があり、故障を抱えたアスリートが身体を休めに来ることも多い。
「ここは飲泉ができるのもポイントです。鉄分のほか、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムなども含まれているので貧血以外にもいろいろな効果が期待できます」
住所:和歌山県和歌山市鳴神574
電話番号:073-471-3277
料金:1万1150円~(1泊2食付き・2名1室1名の場合)
※日帰り入浴あり。木曜午前10時以降休館
アクセス:JR和歌山駅から車で約10分
【美肌】温泉の有効成分で肌の角質オフ&保湿
女塚温泉「改正湯」(東京都)
都会の真ん中にある銭湯で肌なめらか
昭和4年創業の「改正湯」は東京23区内にある天然温泉。何といっても、地層の亜炭層を通過するモール泉の通称・黒湯が人気。黒湯は弱アルカリ性なので洗浄力が高く、古くなった角質や汚れを落とす効果がある。
「このお湯につかるとガサガサになったかかとやひじが、ツルツルになるような感じがします」など、美肌の湯の呼び声も高い。
また、炭酸ガスを注入したオリジナルの黒湯炭酸温泉や、白湯と呼ばれる超微細気泡のシルク風呂も楽しめる。銭湯では珍しく、髪染め専用ブースも設置するなど、女性にうれしい美容ポイントも。
住所:東京都大田区西蒲田5-10-5
電話番号:03-3731-7078
営業時間:15:00~23:30(時短営業の場合も。金曜休)
料金:480円
アクセス:JR、東急線蒲田駅より徒歩約8分
玉造温泉「湯之助の宿 長楽園」(島根県)
弱アルカリ性のお湯が美人の湯の秘密
出雲の国・島根県の玉造温泉は国内屈指の美肌の湯として知られ、『出雲風土記』や『枕草子』にも記されているほど。その中でも江戸時代から松江藩より湯之助の官職を与えられ、温泉の管理を任された歴史のある宿が「長楽園」だ。
「手掘り式では日本一の広さといわれる庭園露天風呂は開放感たっぷり。硫酸塩泉と塩化物温泉のお湯は肌がしっとりすべすべになります。出雲大社が近いので、開運も望めそうです」
住所:島根県松江市玉湯町玉造323
電話番号:0852-62-0111
料金:1万6750円~(1泊2食付き・2名1室1名の場合)
アクセス:JR玉造温泉駅よりシャトルバスで約5分
壁湯天然洞窟温泉「福元屋」(大分県)
“生まれたて”のお湯が肌に活力を
「福元屋」は明治40年創業、全9室の小さな宿。300年以上前から自然に噴出していると伝わる源泉が、岩壁の大きくせり出した洞窟温泉だ。39度の低温の遠赤外線効果でじっくりゆっくりと温まるので湯疲れしにくい。
「岩の浴槽のすぐ下の源泉から生まれたてのお湯が極小の泡となって湧き出てきます。だからいつでもお湯がフレッシュ。新鮮であればあるほど、肌に力がみなぎり、スッキリと清められる気がします。日本にはたくさん温泉がありますが、このような温泉は珍しいです」
住所:大分県玖珠郡九重町大字町田62-1
電話番号:0973-78-8754
料金:1万7500円~(1泊2食付き・2名1室1名の場合)
※立ち寄り湯あり
アクセス:JR豊後森駅から路線バスで約30分
【子宝】細胞を活性化していざ妊活
栃尾又温泉「自在館」(新潟県)
ラジウム泉が自律神経の乱れ改善
栃尾又温泉は開湯が8世紀。この地で約400年も湯守を続けてきたのが「自在館」だ。泉質はラジウム泉で、36度の低温の温泉に長時間つかるのが伝統的な入浴法。これによって副交感神経が高まると自律神経の乱れが改善され、ホルモンバランスが整い細胞の働きが活性化。それが子宝の秘訣だとか。
「宿に来るお客さんの中には、『両親がここに湯治に来て授かった子どもが私です』とおっしゃる人も珍しくないそうです」
住所:新潟県魚沼市上折立66
電話番号:025-795-2211
料金:1万3460円~(1泊2食付き・2名1室1名の場合)
※日帰り温泉は要予約
アクセス:JR小出駅より路線バスで約35分
【開運】非日常の温泉につかって運気をアップ
熱川玉の湯温泉「熱川プリンスホテル」(静岡)
太陽と月が織りなす絶景見て開運
伊豆半島の東海岸にある「熱川プリンスホテル」には海抜80mの屋上露天風呂がある。温泉と海岸線が溶け合い、空中に浮いているかのような感覚になるのが人気。泉質はアルカリ性温泉で、メタケイ酸も多く含むので、保湿効果が高く肌がなめらかに。
「ぜひ露天風呂から見ていただきたいのが朝日です。神聖な太陽の光が海からまっすぐに昇ってくる様子には言葉を失います。また満月の夜には、月光が海上に反射して美しいムーンロードが現れます。この絶景を目の当たりにすると、運気がグンと上昇するような気がしますよ」
露天風呂だけでなく大浴場にも個性豊かな風呂がたくさんあり、満足度も高い。
住所:静岡県賀茂郡東伊豆町奈良本1248-3
電話番号:0557-23-1234
料金:1万8700円〜(1泊2食・2名1室1名の場合)
アクセス:伊豆急行線・伊豆熱川駅より送迎バスで約5分
湯泊温泉共同浴場(鹿児島県)
心の壁を取り除いて恋愛運アップ
世界遺産・屋久島の湯泊という海岸にあるのが湯泊温泉。町の共同浴場であり、男女は衝立1つだけで仕切られている混浴湯。24時間開かれていて、目の前の海の波音を聞き、沈む夕日や星空を見ながら入浴できる。
「混浴なので最初は抵抗があるかもしれませんが、思い切って入ってしまえば一緒に入っている人との心理的な距離感がぐっと縮まります。オープンハートになれるのが混浴の醍醐味。恋愛運に効果があるかもしれませんよ」
近ごろ恋から遠ざかっている人は湯泊温泉へゴー!
住所:鹿児島県屋久島町湯泊1714-28
電話番号:0997-48-2806
料金:こころざし(200円)
アクセス:宮浦港から路線バスで約1時間30分
「温泉には“幸せの一期一会”が待っています。いいお湯との出会いはもちろんですが、宿の女将さんをはじめ、温泉で働く人には素晴らしい人が多く、私はこれまで大切な出会いをたくさんしてきました。だから私は温泉をずっと巡っているのだと思います」
温泉は身体の不調だけでなく、メンタルにもいい影響を与えてくれる。春は出会いのシーズン。女の心と身体に効く幸せの一期一会を、日本全国の名湯に探しに行こう。
教えてくれたのは山崎まゆみさん
●温泉エッセイスト。新潟県長岡市生まれ。32か国1000か所以上の温泉を訪れ、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなどのあらゆるメディアで温泉の魅力を伝える。跡見学園女子大学で観光温泉学の講師も務める。近著に『女将は見た 温泉旅館の表と裏』(文春文庫)。
<取材・文/東野りか>