ボディメイクの筋トレはあっても、身体のメンテナンスではあまり注目されることはなかったお尻。
ヒップアップだけじゃない、不調予防にお尻ケア
「お尻はメインで運動させるところではないイメージでした。でも身体の専門家に取材し自分でも実践することで、とても重要なパーツだとわかったんです」
と話すのは、運動ギライでも無理なくできるヨガやストレッチをイラストでわかりやすく解説した著書が大ヒット中の崎田ミナさん。長年苦しんだうつや身体の不調を、ヨガやエクササイズをしたことで克服した経験を持つ異色のイラストレーターだ。
その経験をもとに導き出したのは「お尻は、立つときも歩くときもとても負荷がかかっている筋肉。また、セットで動く股関節には太い血管や大きなリンパ節があり、体液循環の重要な“関所”」ということ。しかし、そのわりに放置されがちな部位でもある。
「お尻の表面は脂肪が多くやわらかいので、コリや疲れがわかりづらいんです。私自身、ヨガを習い始めてお尻のストレッチの気持ちよさに感動。さらに、腰痛予防や冷え対策など、メリットが多いと聞き、夫婦で習慣化しました」
そこで、崎田さんが簡単で効果が高いと感じた、1〜2分でお尻と股関節を効果的にほぐせるメソッドをご紹介。動かす→ねじる→伸ばすの流れの組み合わせが効果を高める重要なポイント。腰痛やメタボに悩む家族と一緒にトライしてみよう。
尻×股関節スッキリの3ステップ
(1)回して動かす
太ももぐるりで股関節の準備運動
ゆっくり多方向に動かすことで、股関節をウオーミングアップ。
1.仰向けに寝る。足は腰幅で
2.左ひざを立てる
3.ひざを曲げたり伸ばしたりしながら、足裏を床に滑らせながらなるべくゆっくりとアルファベットの「D」を描くよう大きく10回す。
4.逆回しも10回。右側も同じくやろう。
(2)ねじって伸ばす
骨盤周辺内外への刺激で血行促進
体幹の筋肉や背骨、骨盤内部にも刺激が伝わり、循環がスムーズに。
1.仰向けに寝る。足は腰幅で
2.両ひざを立てる。両手は大きく広げておく。
3.左足のくるぶしを右ひざに引っかけ、そのまま左足の方へゆっくりと下半身を倒していく
4.気持ちよくねじれるところでストップ。顔を足と逆に向けながら20秒深呼吸。この時かけた足は床につかなくてもOK。逆側も同じくやろう。
(3)じっくり伸ばす
お尻、太もも裏、股関節をストレッチ
股関節が硬い人も、お尻と太ももの間あたりに伸びを感じればOK。
1.仰向けに寝る。
2.ひざを軽く曲げながらそっと両足を持ち上げ、足先を両手でしっかりつかむ。
3.足先をつかんだまま少し足を開く。
4.そのままゆっくり膝を「胴体の外側」に置きにいくイメージで手で引くようにおろしていく。
5.気持ちよくお尻、太もも裏、股関節が伸びるところで30秒キープ。足の裏はなるべく天井に向けるようにして深呼吸をしよう。
骨盤内の血流もアップ!身体内外にメンテ効果が
今回紹介してくれた3ステップは、「動かす・伸ばす」を組み合わせることで、ほぐし効果を倍増させた連続技で、「フロー」と呼ばれる。
「お尻の筋肉は腰や背中を支えているので、ほぐすことで腰痛予防や背中のコリにも効果が。また、骨盤内の血流を促進して腸も刺激するため、下半身の冷えやむくみ、便秘ぎみな方にもおすすめです。
リモートワークで運動不足&メタボが気になっていた主人も、このフローを始めてから腰のピリッとした違和感がなくなって身体が軽くなったらしく、自分から身体を動かすようになりました」
幅広い効果がありながら、寝たままできるというのも運動習慣がない人にとってうれしいポイント。
「自分の体重を床に預けているので、腰を痛める心配も少なく、動きやすいと思います。さらに、自然と呼吸がゆっくりになって、リラックスして取り組めるのも魅力です」
特に(3)のじっくり伸ばす工程は、じんわりお尻が伸びていく感覚がなんとも気持ちいいとご主人も絶賛。しかし中には股関節が硬く、足がしっかり開かない人も。
「最初はイラストどおりのポーズができなくても、続けていくとだんだん慣れてきて、気持ちよく伸ばせたり動けるようになります。無理せず、ゆっくりやってみて」
3つのストレッチは、この流れで組み合わせるとより効果的ではあるものの、すべてやらなければダメということはない。
「どれか1つ、2つだけやるのでも、もちろんOKです。身体を伸ばして気持ちいいと感じるだけでも、脳に良い刺激がいきますから」
まずはほぐす心地よさを味わってみよう。
尻伸ばしでほぐれたらストレッチを!
前ページでじっくり尻まわりがほぐれてきたら、プラスしたいのが、もう少し動きのあるストレッチ。
「ストレッチには、20秒かけてじっくり伸ばす“静的ストレッチ”と、一定のリズムで身体を動かし、筋肉を伸縮させる“動的ストレッチ”の2種類あります。組み合わせることで、さらに身体の調子がよくなって、フットワークも軽くなります」
崎田さんのおすすめの動的ストレッチは、骨盤を意識して動かす「尻ムーヴ」。
『ラクラク尻ムーヴ』で身体をさらに軽く
(A)きほんの姿勢
・視線を正面にして立つ。背筋をまっすぐ伸ばし、へその下に力を入れ、肛門を引き締めて
・足は腰幅よりやや少し広く開く。腰骨に手を当てて「骨盤」を意識しよう
・足先は前。外や打ちに向きすぎないように。ひざは軽くゆるめて動きやすく
この姿勢をキープしながら次のストレッチに挑戦。腰を痛めず、効果もUPする。
(1)左右ムーヴ
(A)の姿勢で立ったら、頭と足裏の位置を動かさずに、骨盤を左右にゆっくりゆらす。頭は振らずにしっかり骨盤を動かすイメージで10往復。
(2)前後ムーヴ
(A)の姿勢で立ったら、ヘソの下に力を入れたまま、そ~っと恥骨を少し前に出し、ふわ〜っと肛門を後ろへ向ける。骨盤を前後にゆらすよう、コンパクトな動きで10往復。
(3)回転ムーヴ
(1)(2)の要領でゆっくりと、床と平行に骨盤を回すようなイメージで円をえがく。逆回しも同様に10往復。身体の真ん中からほぐれるとホカホカ温まってくる。
「骨盤まわりのほぼすべての筋肉を動かしてほぐすので、血流が良くなって腸の動きも活発になります。さらに、深い呼吸を意識しながら行うと、横隔膜の動きが良くなって普段の呼吸も深くラクになりますよ」
毎日好きな時間にストレッチで健康に!
崎田さんのご主人は朝に尻ムーヴ、夜に尻×股関節の3ステップを10日間行った結果、腰痛が緩和して、身体が疲れにくくなったそう。さらに、朝スッキリ起きられるようになった、腸の動きが良くなったなどの効果を実感!
「私自身も、ストレッチやヨガを始めたことで、ストレスや疲れがあふれ出して体調を崩す前に、自分で対策できるようになりました。
20代のころにギックリ腰を経験しましたが、今はそうなる前に、腰がこりだしたな、そろそろきちんとケアしたほうがいいな、と自分の身体の調子がわかるので、未然に予防できます」
ストレッチを行う時間は、いつでも思い立ったときでいいそう。
「思い出したときにリビングで、寝る前にベッドでやったり、時間はまちまち(笑)。とにかく気持ちいいので、たくさん歩いて疲れた日とか、腰が痛くなりそうなときにも、ぜひやってみてください」
教えてくれたのは…
イラストレーター、漫画家。ヨガ通いにより長年のうつ病を克服。ベストセラーになった『ずぼらヨガ』シリーズのほか、『肩コリ・腰痛・冷え・メタボ・不眠をリセット! くう、ねる、うごく! 体メンテ』(マガジンハウス)など、心身ケアをテーマにした著書が話題。