「築50年の家」のおしゃれライフが話題のロコリさん(写真/林ひろし)『72歳、好きな服で心が弾む、ひとり暮らし』から抜粋

「プチプラに見えない!」「部屋もおしゃれでまねしたい」などのコメントが多く寄せられ、人気シニアYouTuberの仲間入りをしたロコリさん。

個性的なファッションや暮らしの工夫をYouTubeに

 年金約月5万円で、プチプラコーデを楽しんだり、築50年の家でおしゃれなインテリアに囲まれて暮らしている。

「『不安にとらわれないこと』がモットーです。たしかに年金は少ないし将来はどうなるかわからない。でも、少ないのはお金だけで心の豊かさとは関係ありません。

 毎月の出費は8万700円ほどに抑えて、年金やアルバイトのお給料とYouTubeの収益で賄っています。お金がないなら節約したり稼げばいいだけです」(ロコリさん、以下同)

 少ないお金で豊かに暮らせるのはこれまでの人生で培ったもののおかげだという。

(写真/林ひろし)『72歳、好きな服で心が弾む、ひとり暮らし』から抜粋

ロコリさんの1か月の収支

収入
年金…………約5万円
バイト代……約2万5000円
合計…………約7万5000円
 +
YouTube……月によって変動

支出
食費……約2万5000円
光熱費・水道代……約1万円
医療保険・がん保険・火災保険など……約1万円
健康保険・介護保険……約1万円
通信費・携帯電話・NHK……約1万7000円
美容院・化粧品……約7000円
お花の定期便……約1700円
合計……約8万700円

 カツカツになりがちなやりくりの中でも、生活の彩りのためにお花の定期便を利用している。

「洋服代やインテリアはお気に入りのものがあったときだけの購入です♪」

負債2000万円を抱えどん底を見た30代

 ファッションが好きで、高校卒業後は婦人服専門店に就職するために上京。その2年後、父親が余命半年だという便りが届き、地元である北九州に帰郷した。

 経験を買われ、新しいファッションビルでブティック出店の声がかかり、オーナーとしてお店を開いたのが25歳のときだった。

「最初はうまくいって、2店舗目も出店しました。ところが、近くに別のファッションビルがオープンしたことで、お客さまの流れが一気に変わり、お店は廃業に追い込まれました」

 なんと35歳で総額2000万円の負債を抱え、返済に追われる生活が始まったという。

「そのころは最低な人生だと思っていました。お給料を負債の返済に充てるとほとんど残らないし、いつになったら返し終えられるのかもわからない……。

 でも、今思えばこのときに安くて素敵なものを発見する目やプチプラでおしゃれをするコツが身に付いたんだと思います」

 どん底にいたロコリさんを奮い立たせたのが、自己啓発本だった。

「本屋さんに立ち読みをしに行ったり、図書館へ足を運んだり。一番よかったのは、知人が貸してくれたアメリカの女優・シャーリー・マクレーンの人生指南書。たくさんの勇気とパワーをもらって、自分を信じて前に進めば、きっと大丈夫だと思えました」

10年にも及んだ壊れゆく母の介護

 借金生活は20年ほど続き、なんとか返済。しかし、ロコリさんの苦労は終わらなかった。85歳の母親が認知症を発症したのだ。

「母は71歳でカラオケ講師になり、80代半ばまでカラオケ教室を続けていたくらい、アクティブで前向きな女性で私の憧れでした。もともとしっかりした母が認知症を患ってから、ゆっくりだけど徐々に変化していってすごく怖かった。

 症状が進んでいくごとに私のイライラ感も高まって、強い言葉を投げつけたり、声を荒らげたりして、自己嫌悪を繰り返す毎日でしたね」

 このときも不安に潰されないように努めたという。

「母とふたりで公園に行って、きれいな景色を見ながらおやつを食べるとお互いに優しくなれました。生活感のない空間に行くと毎日の苦しさから逃げられたんです」

 介護が10年を過ぎたころ、母親は病院で静かに息を引き取った。

年金5万。でも、毎日幸せ!

「ずっと母とふたり暮らしでしたが、母が亡くなってからしばらくすると『貯金も年金も少ない!これからどうしよう』という焦りがのしかかってきました。それまでは将来のことを考える余裕すらなかったんですけど、一段落ついたら急に不安になっちゃって。

 そこで、69歳のときにマクドナルドのアルバイトを始め、そして71歳のときにシニアYouTuberとしてデビューをしました。YouTubeはずっと好きだったので抵抗はなかったんです」

 どちらも始めるには決して若いとはいえない年齢。しかし、年齢のせいにして諦めるのはもったいないと思ったという。

「マクドナルドのバイトは若いお客さんと接する機会が多くて楽しいし、アルバイトの仲間とはSNSでつながっています」

 YouTuberも天職だと感じているそう。

「10分の動画を撮影するのに3時間かかったり、丸2日編集をしたりと大変なこともありますが、プチプラの服をあれこれコーディネートして自己表現ができるのは楽しいです。動画を見てくださった方からたくさんの“いいね”やコメントをいただくとすごく励みになります」

 現在、アルバイトは週に2日。足りない生活費はYouTubeの収益で賄っている。

「YouTubeの収益というとすごく稼いでいるように思われるんですが、私の場合は投稿頻度が少ないのでそんなに高くはないです。でも、若い人たちと接したり、好きなファッションを仕事にしている今がとても幸せです。

 将来の夢はYouTubeチャンネルの登録者数10万人!まだまだ挑戦していきます」

おしゃれが元気の源♪『ファッション』

パンツを切っても袖をはいてもOK!おしゃれは自由でなくっちゃ♪

 ちょっとサイズが合わない、なんだか飽きてきた。そんなとき、ロコリさんは着方を変える。

 例えば、見慣れたロングパンツは好きなところで切ってショートパンツにしたり、サイズが合わない本革シャツは袖だけ切り取ってレッグウオーマーに変身させたり。

「誰かがやってるおしゃれなんてつまらない。アイデア次第で服はもっと楽しめるんです」

ジル・サンダーのパンツは10年以上前に古着屋さんで購入したもの。足にはいているのは革のシャツの袖。ヤフオクで5000円で購入した。ジャケットはユニクロ+J(約3000円)(写真/林ひろし)『72歳、好きな服で心が弾む、ひとり暮らし』から抜粋

メンズ・キッズ売り場もくまなく探すのが「ロコリ流」!

 男性用や子ども用の服もロコリさんの手にかかれば上品なアイテムに早変わり♪

 特にキッズは穴場で、ユニークでかわいいTシャツやカラフルでポップなパンツなど、運命の出会いがあるそう。

「キッズは価格も抑えてあるのでおすすめ。男性ものは個性的な魅力が出ます。大人のレディースサイズじゃないといけないなんて固定観念、損ですよ!」

キッズコーナーで見つけたキャラクターTシャツにメンズライクなアウターを重ねて、ポップでハンサムなコーデに♪(写真/林ひろし)『72歳、好きな服で心が弾む、ひとり暮らし』から抜粋

自分のペースで楽しく丁寧に!『YouTube』

今日も画面の向こうに友達がいる幸せ

 収益はもちろん大切だが、チャンネルの登録者が増えるたびに友達が増えているようで、それが原動力なのだとか。

編集作業をするロコリさん。機械関係は昔から好きだったため編集は楽しいのだそう(写真/林ひろし)『72歳、好きな服で心が弾む、ひとり暮らし』から抜粋

大好きだから続けられる

 チャンネル開設前からYouTubeは大好きだったロコリさん。ある日シニアYouTuberが少ないことに気づき、ならばやってみようと思い即行動!

「始めようと思った瞬間からすごくワクワクして、それは今でも続いています」

YouTubeチャンネル開設前に徹底的に研究し、ノートにまとめた(写真/林ひろし)『72歳、好きな服で心が弾む、ひとり暮らし』から抜粋

無理せず精いっぱい『マクドナルドバイト』

エネルギーもお金ももらえるバイトやらない手はない!

 70代目前で勤めていた百貨店が閉店し無職に。年金だけでは生活できないと始めたのがマクドナルドのアルバイト。「70代も活躍中」という貼り紙を見つけ、勇気を出して応募したのだとか。

「最初は緊張しましたが、今では楽しいです。運動にもなるし毎日にリズムが生まれる。しかも若い人とつながりを持てるのでエネルギーもチャージできちゃいます(笑)」

マクドナルドのニューヨークスタイルでスタイリッシュな店内がお気に入り♪(写真/林ひろし)『72歳、好きな服で心が弾む、ひとり暮らし』から抜粋

一番長くいる場所だから心地よく♪『インテリア』

築50年の日本家屋だからこそポップに明るく

 ロコリさんのマイブームはデザイナーズチェアのリサーチ。

「カラフルでおしゃれな家具を置くと部屋全体が一気に明るくなるんです。毎日メルカリで探してます(笑)」

設備など古いものだが、きれいに使っているため味わいがある。ダイニングテーブルには季節のお花を飾り、心にも栄養チャージ(写真/林ひろし)『72歳、好きな服で心が弾む、ひとり暮らし』から抜粋

 さらにお花の定期便も利用している。

「ぜいたくかなとも思いますが、我慢ばかりじゃ心まで貧しくなってどんどん悪い方向に行っちゃうもの。年を取ったら自分の機嫌は自分でとらなきゃ。そのためにお金を使うのは大切です」

編集部屋兼撮影部屋。ヤフオクで購入したデザイナーズチェアは見た目も座り心地もよくてロコリさんお気に入りの場所(写真/林ひろし)『72歳、好きな服で心が弾む、ひとり暮らし』から抜粋

使わなくなった思い出の品もひと工夫で自分らしく

 20代のころに背伸びして購入したヴィトンのボストンバッグ。使わなくなってしまい込んでいたら中がカビだらけ!

 きれいに洗って100均の植物を入れて廊下の手すりにかけてみたらいい感じ♪経年変化で色が変わったり柔らかくなっているのも、あのころからの成長の証し。

今ではブランドロゴの入ったアイテムを使うことはないため、ハンドルとファスナーはハサミで切って口が開くようにした(写真/林ひろし)『72歳、好きな服で心が弾む、ひとり暮らし』から抜粋

楽チンだけど身体が喜ぶものを!『食事』

栄養満点の朝食でパワフルに1日をスタート!

 食事はできるだけ労力をかけずに必要な栄養をきちんととることを心がけているという。

「朝食は、豆乳ヨーグルトに冷凍のブルーベリーやキウイを入れています。豆乳は苦手なんですが、フルーツを入れれば豆乳っぽさが薄まり食べやすくなるのでリピートしています」

最近は健康のためにオートミールも食べ始めたという(写真/林ひろし)『72歳、好きな服で心が弾む、ひとり暮らし』から抜粋

余らせがちな野菜も賢く保存

 野菜をまとめ買いしたときに使っているのが野田琺瑯の保存容器。友人からおすすめされ、愛用している。

「蓋が壊れたら蓋だけでも買えるので、長く使えるし使い勝手もよいので、結果的にお得。多めに買った野菜もムダなく使い切れます」

野菜はカットしてからホーローに入れて保存。中身が見やすくて使い勝手抜群!(写真/林ひろし)『72歳、好きな服で心が弾む、ひとり暮らし』から抜粋

我慢はしないできっちり浮かす『ちょこっと節約』

お風呂のお湯を替えるのは2日に1回

「毎回お湯を替えるのはもったいない」とロコリさんが利用しているのが、「ふろ水ワンダー」(花王)という錠剤。

 お風呂上がりに1粒入れるだけで水をきれいに清浄してくれるから、水道代が節約できて、毎日のお風呂掃除が必要ないのもうれしい♪

1粒15円程度。100円ショップで購入した小物入れに入れて収納している(写真/林ひろし)『72歳、好きな服で心が弾む、ひとり暮らし』から抜粋

おしゃれな節約にはフリマアプリが必須!

 定価で高いと思うものはメルカリやヤフオクを活用!洋服ならサイズや重量をチェック、小物や家具ならブランド名、メーカー名や名称、○○製で検索。

「気に入ったもの、いいものを手頃な値段で手に入れられるのは本当にありがたいです。節約生活には欠かせません」

ロコリさん●ブティックに勤めていた経験と独自のセンスを活かした唯一無二のコーディネートをYouTubeで紹介。初の著書『72歳、好きな服で心が弾む、ひとり暮らし』(KADOKAWA)も好評発売中。
お話を伺ったのは……ロコリさん●ブティックに勤めていた経験と独自のセンスを活かした唯一無二のコーディネートをYouTubeで紹介。初の著書『72歳、好きな服で心が弾む、ひとり暮らし』(KADOKAWA)も好評発売中。
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取材・文/相原郁美 写真/林ひろし(『72歳、好きな服で心が弾む、ひとり暮らし』から抜粋)