存在は認識しているのに、あまり見たことがない、お手入れ方法も謎の部位……それが“膣(ちつ)”。生理でお世話になったけど、そろそろ閉経だしお疲れさま~なんて思うのは大間違い!
乾燥、萎縮、臓器脱、閉経で膣の老化が加速!
「加齢で女性ホルモン・エストロゲンの分泌量が減ると、膣の筋力低下や乾燥により痛みやかゆみなどの症状が出ます。また、膣のゆるみとともに骨盤底筋の衰えも閉経で進みます。
クシャミやせきなどちょっとした腹圧での尿もれや、お風呂上がりのお湯もれ、膣から臓器が出てしまう臓器脱などさまざまな不調が現れます。50代以降の女性は特に早めのケアが必要です」
教えてくれたのは、膣ケア・膣トレのパイオニアとして注目を集めている“ちつ姉”こと山口明美さん。出産時に会陰裂傷で14針縫い、尿もれや便もれに悩んだことが膣に意識が向くきっかけとなった。
「産後は日常生活が送れないほどつらく、2か月以上大きなオムツをしていました。そんなとき助産院のリハビリで出会った尿もれ体操が膣トレでした。始めて1週間でオムツがナプキンサイズになり、半年で完治。
その効果に驚きながら膣ケアも一緒に行うと産後にできた顔のシミは消え、落ちなかった体重が26kg減ったんです。膣をケアして鍛えることが、美しさと健康につながることを実感しました」(山口さん、以下同)
そう話す山口さんの肌はツヤツヤ、ノーファンデ歴12年も納得の美肌っぷり。ジムに通わずして体重もほぼキープしているという。でも膣のメンテナンスがなぜ美容にも影響するのだろう?
「ポイントは膣と子宮の炎症を抑えることと、血流改善にあります」
粘膜である膣口は雑菌やウイルスが侵入しやすく、炎症を起こすことがある。身体のどこかに炎症があると、顔にくすみや赤みとなって現れるので、膣ケアで清潔を保てば肌トラブルの解消につながる。
そしてマッサージやトレーニングで膣周りの血流がアップすると、全身のめぐりが良くなり、代謝が促進されてダイエット効果も期待できるのだ。
「膣ケアや膣トレで一番変わるのはマインドです。今までおざなりにしてきた部分を意識することで女性性が開花します。変化が見えれば続けていこうと思えるはずです。
日本人女性の平均寿命は87歳、平均健康寿命は74歳で10年ちょっとは誰かの手を借りることになります。最後まで自分でトイレに行き、健康できれいな100歳を迎えるために。お金がかからず一番効果的な膣ケアと膣トレを今すぐ始めてほしいです」
こんな人は今すぐ膣ケア!
□ 閉経した
□ ホットフラッシュがある
□ 手足が冷える
□ 尿もれがある
□ 性交痛がある
□ 膣にかゆみや痛みがある
におい、かゆみが解消!正しい膣のお手入れ法
膣ケアで初めに押さえておきたいのが“洗い方”。角質層が薄く粘膜もある膣周りの皮膚は、刺激に弱いので細やかな注意が必要だ。
「通常、膣は酸性なので石けんやボディソープを使うと膣内がアルカリ性に偏って自浄作用が弱まってしまいます。そうなると雑菌が繁殖しやすく、においやかゆみなどのトラブルに。
洗うときは、デリケートゾーン専用のボディウォッシュを使いましょう。ドラッグストアやネット通販で購入できます」
洗う手順は、まずシャワーの水圧を弱めて膣周りを軽く流し、泡立てた専用ウォッシュを全体にのせる。
次に大陰唇と小陰唇を人さし指と中指でUの字に洗い、小陰唇を指で挟んで洗う。クリトリスは皮をむいて洗い、会陰は右、中、左と円を3つ描くようにそっと洗って、膣口は軽く洗う(膣の中は洗わなくてOK)。
肛門は円を描くように洗う。最後に水圧が弱めのシャワーで全体を流したら、タオルで1回軽く押さえて終了。
「どの部位も、指に力を入れず、やさしく泡を滑らせるのがコツです」
次に大切なのが保湿とマッサージ。更年期が近い人やVIO脱毛している人は乾燥しやすいので念入りな保湿を心がけ、マッサージで血行促進すれば不調改善に効果的。
やり方は、デリケートゾーン専用のオイルかジェルをクリトリス以外の全体に塗り、膣の周りを人さし指、中指、薬指の3本でUの字にマッサージ。会陰は洗うときと同様、3か所に円を描くようにマッサージし、最後に肛門に塗る。時間がないときは、手軽な膣周りパックで潤いを与えよう。
「ほかにも、排便したら後ろから拭き取って膣に菌が付着するのを防ぐこと、性交時にできた傷が炎症になる場合もあるので、性交痛は医師に相談することを、特に気をつけていただきたいですね」
正しいケアのために!知っておきたい膣周りの構造
閉経すると膣のバリア機能が低下。乾燥から膣炎になることも!
膣周りをきちんと洗えていないと“恥垢(尿やおりものが混ざった白っぽい垢)”が、小陰唇のヒダの間にたまって、においやかゆみの原因に! 複雑な構造だからこそ丁寧なケアで清潔に保つことが大事。
更年期世代必見!膣ケア5か条
1 ボディソープで洗わない
2 乾燥させない
3 うんちは前に拭かない
4 性交痛を我慢しない
5 膣と骨盤底筋を緩ませない
尿もれ、便もれ予防に!すぐできる“膣トレ”
膣と同じくらい見過ごせない骨盤底筋は膀胱(ぼうこう)、子宮、腸をハンモックのように支え、尿道や肛門を締めたり緩めたりする筋肉。こちらも加齢や閉経で弱り、尿もれ、便もれ、臓器自体が下がる原因になる。
道具を使わずに、すぐできるエクササイズで予防に励もう!
「私が伝授した膣ケアと膣トレを90歳から実践した祖母は、105歳で亡くなる1か月前までオムツをせずに自分でトイレに行っていました。今始めれば将来が変わってきますよ!」
(1)あおむけになり全身の力を抜く。骨盤のでっぱり部分に手をあてて、骨盤を意識する。かかとを押し出すように片方ずつ骨盤を上下に動かす。脱力すると左右に動きやすい。
(2)イスに座り、鼻で4秒息を吸いながらお腹をふくらませる。口から8秒息を吐きながら膣を身体の中に引き上げるイメージでギューッと力を入れ、10回繰り返す。腹筋を使わず膣だけ引き上げることを意識する。
ズボラでも美ケア!膣周りパック
表皮がなくて乾燥しやすい膣周りは、保湿で潤いをキープ!忙しいときや気軽にチャレンジしたいときは、お風呂上がりにペタッと貼るだけのお手軽パックがおすすめ♪
用意するもの
・ケバのないガーゼかコットン
・デリケートゾーン専用のオイルかジェル(ドラッグストアやネット通販で購入可)
【やり方】
(1)ガーゼかコットンにオイルやジェルを垂らす。スポイトタイプは1回、プッシュタイプは2~3回が目安。
(2)膣周りに貼り、20分程度時間を置いてから取る。
*パックの上からパンツをはいてもOKですが、オイルは付くとシミになるので注意。
(取材・文/廣瀬亮子 イラスト/赤松かおり)