インフルエンザが勢力を増す季節。病気知らずで冬を乗り切るために、強力なアシストをしてくれるのがりんごだ。
免疫力を底上げする「りんご」
「私も毎日食べています。健康と美容にうれしい栄養がつまっているからです」
と、教えてくれたのは医師の石原新菜先生。栄養成分の中でも特に注目すべきなのが食物繊維とポリフェノールだ。
「りんごに含まれるペクチンは水溶性の食物繊維で、腸を守る働きがあります。腸内環境が整うと免疫力や基礎代謝アップにつながります」
ペクチンは100度以上で加熱することによって6〜9倍に増えるといわれているため、お腹を整えたいときは加熱する料理が向く。
「身体のサビ防止には抗酸化物質のポリフェノールが活躍。リンゴポリフェノールの6割を占めるプロシアニジンは、高い抗酸化力が特長で、細胞や血管の若返り、動脈硬化予防などが期待できます」
プロシアニジンは熱に弱いので、生のまま食べるほうが抗酸化力を生かせる。
「プロシアニジンは皮にも果肉にも含まれますが、ほかの抗酸化成分も摂取するには皮ごと食べるのがベター。
植物は強い紫外線や汚れた空気から自分を守るため、外側に抗酸化物質を蓄えています。りんごの皮にはアントシアニンが含まれていて、目や身体の老化予防に働きかけます」
皮ごと食べにくい場合は、薄切りやすりおろしに。消化の負担も軽くなる。
りんごの主な栄養成分と効果
・食物繊維(ペクチンなど)……整腸作用
・リンゴ酸・クエン酸……疲労回復
・ポリフェノール……抗酸化作用
・ビタミンC……美肌・免疫力アップ
・カリウム……血圧上昇の抑制
よく咀嚼することで食べすぎも防止!
代謝が落ちる中高年は太りやすくなるのも悩みの種だが、りんごを継続的に食べることで血液中の中性脂肪が平均21%減少したという研究があり(※)、生活習慣病の予防にも一役買ってくれそう。
※農研機構 果樹由来の腸内有用菌増殖因子の同定及び動物性食品との相互作用の解明より
「りんごはカロリーが低く、血糖値を上げにくい低GI食品です。歯応えのある食感は咀嚼(そしゃく)する回数を増やし、満腹中枢を刺激するので少量でも満足感があります」
そう話すのは管理栄養士の吉野愛さん。肥満防止の栄養指導でもりんごをすすめる。
栄養満点なりんごを効率よくとる方法を次からご紹介!
36年間飲んでいるジュースのおかげで平熱は37度です
不調改善にはりんごを習慣的に取り入れることが大切。石原先生には自身の実体験から飲み続けているジュースがある。
「りんごとにんじんをミックスしたジュースで、子どものころから飲み続けています。初めて飲んだのは生後5か月でした」(石原先生、以下同)
もともとは医師であるお父様が、スイスの自然療法病院で重病の患者に提供されているのを知ったのが始まり。
「高校まではずっと飲んでいたのに、大学進学後から研修医のころはジュースをやめて食事内容が偏りがちに。便秘、冷え、ニキビ、生理痛もひどくなってしまいました。これではいけないとジュースを復活させて以来、朝ごはん代わりに毎日飲んでいます」
今では冷えが解消されて平熱は37度をキープ、腸の調子がよく、吹き出ものができることもない。
先生が愛飲するこのジュースは食材同士の相性が抜群で、寒い地域で採れるりんご、根菜のにんじんが共に身体を温める食品であり、にんじんには強い抗酸化力を持つβ―カロテンが含まれている。疲労回復に黒酢を足すこともあるそう。
りんごプラス○○、不調に合った食材選び
「りんごとさつまいもを電子レンジで加熱してはちみつをかける料理も定番。不溶性の食物繊維とオリゴ糖でさらに腸が整い、シナモンを振りかければ血行がよくなります」
複数の食材を組み合わせれば飽きることなく、栄養の相乗効果も狙えて一石二鳥!
吉野さんには、りんごを活用したお手軽メニューを提案してもらった。
「りんごは甘さと酸味のバランスがいいので塩、こしょうした肉とソテーしてもおいしいです。赤い皮は色みになるので、野菜感覚で使ってみてください」(吉野さん)
りんごにんじんジュース
石原先生の朝の定番!
材料と【作り方】(作りやすい分量)
にんじん2本、りんご1個をよく洗い、それぞれ小さく切る(どちらも皮はむかず、りんごは芯付きのまま)。すべての材料をジューサーにかける。*ミキサーやブレンダーで作ってもOK。
アップルミネストローネ
野菜のうまみにさわやかなりんごがなじむ♪
材料と【作り方】(2人分)
(1)りんご1/2個は皮付きのまま4等分のくし形切りにしてから薄く切る。玉ねぎ1/4個、セロリ20gはみじん切りにする。
(2)鍋にオリーブオイル小さじ1を熱し、(1)の野菜を炒める。しんなりしたらカットトマト缶1カップ分、水1/2カップ、コンソメ顆粒小さじ1、塩少々を加え、ひと煮立ちさせる。
(3)ひよこ豆の水煮30g、(1)のりんごを加えて4~5分煮込む。
《POINT》ひよこ豆のタンパク質、セロリの不溶性食物繊維、トマトのリコピンも1杯でとれる
りんごと甘酒のホットスムージー
やさしい甘みにスパイシーなしょうがをきかせて
材料と【作り方】(1人分)
(1)耐熱容器にお好みの甘酒1カップ、すりおろししょうが小さじ1を加えて混ぜ、電子レンジで軽く温める。
(2)りんご1/4個は皮付きのまますりおろしてレモン汁少々を混ぜ、(1)に加える。
《POINT》酒粕甘酒には食物繊維、米麹甘酒にはオリゴ糖が豊富。しょうがで血行を促進!
りんごとチーズのハニートースト
手軽にタンパク質がとれるチーズをプラス
材料と【作り方】(1人分)
(1)りんご1/4個は皮付きのまま薄切りにする。
(2)食パン1枚にスライスチーズ1枚と(1)をのせてオーブントースターで焼く。
(3)取り出して、はちみつとシナモン適量をかける。
お手軽&おいしい!りんごの意外なレシピ
りんごの肉巻きハニーマスタードソース
豚肉に包まれたりんごが甘酸っぱくジューシー
材料と【作り方】(2人分)
(1)りんご1個は皮付きのまま8等分のくし形切りにする。りんごに豚バラの薄切り肉8枚を1枚ずつ巻きつける。
(2)フライパンにサラダ油小さじ1を入れて熱し、(1)の肉の巻き終わりを下にして中火で焼く。転がしながら焼きつけて皿に取り出す。
(3)フライパンに酒大さじ1/2、しょうゆ大さじ1、はちみつ小さじ2を入れて軽く煮詰めてから、粒マスタード小さじ1を混ぜる。(2)にかける。
《POINT》肉をやわらかくするりんご酸。豚肉のビタミンB1とともに疲労回復をサポート
りんごドレッシングがけカルパッチョ
おだやかな酸味のりんご酢を使った粒々ドレッシング
材料と【作り方】(2人分)
(1)りんご1/4個は皮付きのまま1cm弱の角切りにする。ボウルにりんご酢大さじ1/2、はちみつ小さじ2、塩小さじ1/4、オリーブオイル大さじ3を入れて混ぜ合わせる。りんごを加えて10分ほど置き、なじませる。
(2)刺身用のホタテ8個を食べやすい大きさに切って皿に盛りつける。(1)をかけ、刻みパセリ適量をのせる。
りんごとほうれん草の白あえ
抗酸化力の高いほうれん草&ごまで老化予防
材料と【作り方】(2人分)
(1)絹ごし豆腐100gはペーパータオルで包み、重しを乗せてしっかり水きりする。
(2)ほうれん草100gは塩少々を入れた熱湯でサッとゆで、冷水にさらして水けをしぼる。長さ3cm程度に切り、しょうゆ少々をまぶしてから再度しぼる。
(3)りんご1/4個は皮ごと8等分にしてから太めの細切りにする。
(4)ボウルに(1)、だし汁大さじ1~2、白ねりごま大さじ1、しょうゆ小さじ2、砂糖小さじ1~2を加えて混ぜ合わせる。なめらかになったら(2)、(3)を加えてあえる。
りんごで簡単「ラクうまおやつ」
りんごの簡単クラフティー
タンパク質やアミノ酸が豊富な卵で栄養バランス◎
材料と【作り方】(2人分)
(1)りんご1/4個は薄切りにする。
(2)ボウルに卵1個、砂糖小さじ2を入れて泡立て器で混ぜ合わせる。
(3)薄力粉30gを加え泡立て器で混ぜる。粉っぽさがなくなったら牛乳1カップを加えてよく混ぜ合わせる。
(4)小さめのフライパンにバター10gを入れて熱し、(1)を並べて(3)を流し入れる。ふたをして弱火で10分ほど焼き、オーブントースターで3分ほど焼く。仕上げにはちみつ適量をかける。
りんごとさつまいもの春巻き
パリッ、ホクッ、シャキッの楽しい食感!
材料と【作り方】(10本分)
(1)りんご1/2個は皮付きのまま1cm弱の角切りにする。
(2)さつまいも150gはひと口大に切り、水にさらして水けをきる。耐熱容器に入れてふんわりとラップをかけ、電子レンジでやわらかくなるまで5分ほど加熱する。
(3)さつまいもが熱いうちにバター10gを入れてフォークでつぶしながら混ぜる。(1)、牛乳大さじ2~3、はちみつ大さじ2も加えて混ぜたら冷ます。
(4)薄力粉大さじ1、水大さじ1を混ぜる。春巻きの皮10枚に(3)を1/10ずつのせて包み、水溶き薄力粉で端を留め、10本作る。
(5)鍋にサラダ油適量を入れて170度に熱し、(4)を入れて上下を返しながらきつね色になるまで揚げる。
※電子レンジは600Wを使用しています。※はちみつは1歳未満の乳幼児には与えないでください。
《POINT》りんごとさつまいものカリウムがむくみ解消に◎。さつまいもの皮にはアントシアニンも!
料理に合わせてりんごの品種を選ぼう!
「塩味をきかせるおかず系には、しっかりした甘みのある“サンふじ”。甘さとしょっぱさのバランスがとれて食感もいいです。ジャムやアップルパイのようなスイーツには、キリッとした酸味の“紅玉”を。メリハリのきいた味になります」(吉野さん)
教えてくれたのは……
取材・文/廣瀬亮子 撮影/矢島泰輔