ライフさん宅のリビング

「50代前半までは、夫婦と子ども2人に加え、多いときで保護猫5匹と共に暮らしていたので、物が散らかって家の中が爆発している状態でした。毎日生きているだけで精いっぱいで……」

持ち物を減らしたら捜し物が激減!

 と話すのは、暮らし系ユーチューバーのライフさん。60歳を迎える少し前から生活を見直し、家の中の不要品を削減。現在は夫婦2人でスッキリ片付いた一軒家に住み、“持たない暮らし”を満喫する。

「最初からうまくいったわけではないんですよ。専業主婦だった私は子どもたちが独立しても『また帰ってくるかも』と思ったり、どこか子離れができておらず、生活が変わることに抵抗があったんです。

 でも『ミニマリスト』の方のYouTubeなどを見て、自分にとって理想の暮らしを考えるようになりました」

「捨てるのを迷うときはその服を着て半日でもいいので外出してみて。肩がこったり、気分的にしっくりこないと感じるなら手放してもOKとしています」(ライフさん)

 まず手放したのは、大量の洋服だった。

「子育て時期にはいていたパンツとシャツを引っ張り出したら、着ていない服ばかり。若いころ、きつくても履いていたヒールパンプスも、履いてみたら、少し歩くのも無理(笑)。今の自分には必要ないと思った洋服は20~30着、靴は10足以上処分しました」

 その代わりに普段着の定番となったのが、一枚で様になるプチプラのワンピースだ。

「ワンピースとフラットシューズが私の制服。ワンピースはユニクロのものも多いです。もともと着回し下手だったので、服選びの手間が省けるようになりました。外出時はイヤリングをするだけで十分おしゃれです」

 物量を減らしたことで、収納スペースも必要なくなり、大きい家具も処分。

「玄関にあった靴箱は捨てて、靴の収納は以前から廊下にあった備え付けの棚を使っています。いろいろ片付けるうち、人生のステージが変わることを楽しみに思えるようになりました」

 身軽になったことで生活のストレスも減ったと話す。

「一番変わったのは捜し物がなくなったこと。今は何がどこにあるかわかるので、そのストレスがありません。無駄買いがなくなり、節約にも役立っています。物を移動させる必要がなく掃除も楽ですし、きれいな空間を保ちやすくなったんです」

 ほかに日々の家事や習慣も無理なく簡素化した。

「毎日やっていた洗濯を今は2日に1回、リビング以外の掃除は1日おきに。シャンプーとリンス、化粧品はオールインワンのものに替えたらケアがラクになりました」

ライフさんが実践【暮らしの簡素化】
◯私服はワンピースと決め、ワードローブを簡素化
◯入れるものがなくなった家具は手放す
◯毎日やっていた掃除と洗濯は頻度を減らす
◯化粧品などはオールインワンタイプに替える
◯お中元・お歳暮をやめ、本当にあげたいときに贈る

遠くの疎遠な人より身近な人との縁を大切に

 気持ちよく暮らすため、もうひとつリセットしたのが昔の人間関係だ。

「学生やOL時代の友人、ママ友とは、気づけば自然と連絡を取らなくなっていたんです。『私って友達がいないかも』と自覚したのが60代前半。

 焦って連絡を取り、数年ぶりに会ったのですが、近況報告をし合ってもお互いピンとこないので、疲れてしまって。この年になれば家族構成や住む場所、仕事もバラバラで、昔のように付き合うのは難しいですよね。

 それに冷静になったとき、疎遠になった友人に変に執着していることにも気づきました。“自分軸”で友達付き合いができていなかったんですよね」

リビングルームは床に置くものが少ないと掃除がしやすい。テレビ台は入れるものがなくなったため撤去した

 さらに付き合いが希薄な親戚と、惰性で送り合っていた季節の贈り物もやめた。断ち切った友人関係に未練はなかったものの、もともと人との触れ合いが大好きなライフさんは、しばらくして寂しさを感じ始める。

 そんなとき、飛び込んだのが、地域の住民がやっている公園掃除のボランティアコミュニティーだ。

「ご近所さんがワイワイ言いながら公園掃除をしているのを見たら、すごく楽しそうに思えて。上着を着てパッと家を飛び出し、『すみませ~ん、私も仲間に入れてください!』ってお願いしに行ったんです。すぐに受け入れてもらえました(笑)

 それがきっかけで自治会にも誘われる。子育て中、PTA役員を率先してやっていた経験を生かし、今は役員となり、イベントを企画するなど、地域で頼りにされる存在に。

「地域の方々との共通点はそこに自宅があるということだけ。個人的な事情に深く首を突っ込んでくる人はいないので、気を使いすぎず、“ちょうどいい距離感”で付き合えるのがありがたいです。

 地域ではお互い、肩書なしの“素”の人間同士で話せます。数年に1回しか会わない友人より、近くの人との関わりが今とても楽しいです」

年齢を受け入れたら世界が広がった!

「実は50代のころ、漠然と年をとるのが嫌だったんです。特に美容にこだわるタイプでもなかったんですが、それでもだんだん見た目が変わって、体力も落ちてくることが悲しくて……。60代になったとき『女の人生が終わったんだ』とガッカリしたことを覚えています」

靴箱をなくしたスペースには大きめの絵と、床には季節の花を飾る。今はあまり使っていなかった廊下の収納棚を靴入れに使用

 年齢を受け入れられず、沈んでいた気持ちを明るくしてくれたのが娘の言葉だった。

「コロナ禍にマスクをした写真を娘に送ったら『お母さん、きれいだね』って言ってくれたんです。

 マスクでシワが隠れていましたし、お世辞かもしれないけれど、言葉にして褒めてもらえたことが素直にうれしくて。初めて『60代でもいいんだ』って、気持ちがストンと落ち着きました」

 周りをよく見れば、60代、70代に見えない女性はたくさんいた。「60代は60代なりに生きよう」と決め、持ち前の好奇心と行動力で3年前からYouTubeチャンネルを開設。知識ゼロから独学で動画撮影・編集を始め、今では登録者数1.5万人に。

「もちろん失敗もありましたが、励みになるコメントを視聴者さんにいただいたり、雑誌の取材で若い人たちと出会ったりと、YouTubeを始めてから新しい交流が生まれました。年齢を受け入れ、シニアライフを楽しむことで世界が広がったように感じています」

 今は迷惑をかけない「自分のしまい方」も見据えている。

「年齢的にも終活に向かうタイミング。身の回りの物を減らすことは、子どもたちに負担をかけないためにも大事なことです。

 私がいなくなったときに『お母さんってすっきり暮らしていたんだね』と、子どもに言ってもらうことが、私にとっての最高の人生のゴールだと思っています」

ライフさん●YouTube「60歳からの幸せライフ」で、60代のシンプルな暮らし術や、夫婦の何げない暮らしを発信。子ども2人が独立した後、夫婦2人で築26年の一軒家に暮らす。すてきなシニアライフに憧れるファンが急増中。

教えてくれたのは……ライフさん●YouTube「60歳からの幸せライフ」で、60代のシンプルな暮らし術や、夫婦の何げない暮らしを発信。子ども2人が独立した後、夫婦2人で築26年の一軒家に暮らす。すてきなシニアライフに憧れるファンが急増中。

取材・文/釼持陽子