たまった疲れや身体の痛みは、マッサージや整体などプロの手を借りてラクになりたいけれど、そんなに時間やお金の余裕はないし……。そこでオススメなのが、自分の手でプロの整体の技法を行うメソッド「自力整体」だ。
「鍼灸(しんきゅう)、整体、ヨガを基に開発された動きで、血液やリンパの詰まりやすい場所を効率的にほぐします。簡単で即効性があり、冷たくて硬かった身体が温かくやわらかい身体に変わり、痛みや疲労、コリなどが改善されます」
そう教えてくれたのは、自身も自力整体に救われたという整体師の矢上真理恵さん。
「高校を卒業後に単身で欧米に渡り、当時の夢を追いかけてがむしゃらに頑張る生活を10年続けていたら身も心も疲弊してしまって……。うつ状態になってしまったんです」(矢上さん、以下同)
その時にたどり着いたのが、父であり鍼灸師、整体治療家の矢上裕さんが考案した自力整体だった。
「最初にお腹をほぐす整体をやってみたら、自分のお腹がびっくりするほど冷えて硬くなっていることに気づきました。その後、継続することでそれらも改善して心身共に健康になり、自分の身体と向き合うきっかけにもなりました」
自宅でたった3分!健康になってスリムに
温かくやわらかい身体は健康維持に必須という。
「身体にある自律神経には、身体を緊張させて活動を促す交感神経と、リラックスさせて身体を休ませる副交感神経があります。
交感神経が優位だと血液が脳に集まり手足が冷え、逆に副交感神経が優位だと、リラックス状態で筋肉は脱力し、血液が末端まで流れて身体は温まります」
自力整体は自律神経に働きかけるので、緊張状態からリラックス状態になり血流が改善、やがて身体がやわらかくほぐれて不調から解放されていく。
その効果は、肩こりに腰痛、ゆがみ、高血圧、不眠、更年期の不調の改善……と多岐にわたる。さらに、自力整体には痩身の効果も。
「不要に思われがちな脂肪ですが、贅肉(ぜいにく)はゆがんだ骨格と弱った筋肉を支えるためについています。
例えばウエストは、腰の腰椎がゆがんで筋肉が硬くなると、そこを支えるためにコルセットのように贅肉がつきます。自力整体ではゆがみも整うため、自然と贅肉も落ちていきます」
実際に多くの体験者が不調の改善とともにダイエットに成功し、適正体重を手に入れている。
自分ファーストで身体の声に耳を傾けて
不調に陥りやすい人の特徴として50代女性に多いのは、睡眠の質の悪さ、身体を冷やす食事、骨盤のゆがみなどが挙げられる。
「子育てや介護で自分より誰かを優先して不調を我慢してきた方も多い印象です。自分の身体に意識を向ける時間を持ち、身体のちょっとした違和感に気づけるようになることが健康への第一歩です」
チェック項目に当てはまる人は、根本から生活習慣を見直すことも大事。
布団やカーペットの上で簡単にできてお金もかからない。回数や長さも自分のペースでOKなのでムリなく続けられる。今回は、腰痛と便秘などに効果がある下半身のほぐしワザを紹介するので、さっそくトライしてみて!
こんな人は要注意!不調のもととなる習慣
□身体を冷やす食材(甘い物、生野菜、小麦製品など)をよく食べる
□睡眠時間が短い・睡眠の質が悪い
□食事の時間が不規則で胃腸が休む時間が少ない。便秘ぎみ
□若いころにムリなダイエットをした経験がある
□骨盤のゆがみを放置している
□自分以外の人を最優先にして不調は我慢してきた(または、薬やサプリで一時しのぎをしてきた)
はじめに【眼窩ほぐし】
自力整体の最初に行って身体をゆるめる準備を
目頭の上のくぼみに親指を当て、10秒間やさしく指圧する。目は多くの経絡(東洋医学でいう気の通り道)とつながっているので、全身の経絡の流れがスムーズになり効果がアップ。
《MEMO》目と子宮の経絡はつながっているので、生理痛がひどい人などにもオススメ
【ひざ立ちでほぐす】
腰まわりの緊張をほぐすと排便がスムーズに
(1)片ひざを立てて鼠径部をグーッと伸ばす
片ひざを立てて両手をのせ、ゆっくり重心をかける。このとき、もう片方の脚は後ろへ流し鼠径部が伸びているのを感じて。
(2)鼠径部を伸ばしながら横腹をほぐす
(1)の姿勢のまま、鼠径部を伸ばしているほうの骨盤の上に手を添えて軽くもむ。反対側も同様に。目安は(1)〜(2)合わせて3~5分。
《MEMO》腸腰筋をほぐすことで、腰椎の神経をリラックスさせ、便通を促す。左右で硬いと感じるほうを長めにやるとよい
【タオルを使ってほぐす】
股関節のバランスを整えて
(1)脚を上げタオルを足裏に引っかけて前後にユラユラ
あおむけになって、足裏が天井と平行になるように真っすぐ上げ、脚の裏側やアキレス腱を伸ばす。足裏にタオルをかけて手で軽くゆすりながら脚を前後に動かす。ひざが伸びない場合は、イタ気持ちいいと感じるところまででOK。
(2)両ひざを開いて脚を下ろしひざを左右交互にゆする
両ひざを開いて脚を下ろしたら、かかとをお尻に近づけるようにタオルを寄せながら、ひざを左右交互に上下にパタパタとゆらす。(1)~(2)合わせて2~3分を目安に。
《MEMO》梨状筋の縮みをほぐし、左右差を整えるイメージで、ひざをゆらす
教えてくれたのは……自力整体師 矢上真理恵さん●矢上予防医学研究所ディレクター。自力整体ナビゲーターとして世界各地でワークショップを開催するなど国内外で自力整体を伝えながら、女性のための予防医学に取り組んでいる。近著に『すぐできる自力整体』(ダイヤモンド社)。
取材・文/荒木睦美