物価高で家計の厳しさは深刻だけど、家事や孫の世話で忙しくて、パートに出るなんて無理、スキマ時間にサクッと稼げる割のいい副業があれば……。
「副業こそ楽しく」が継続の鉄則
趣味起業コンサルタントの戸田充広さんは、副業を始めるときに第一に考えるべきは“割がいいかどうか”ではなく、“楽しいかどうか”だと話す。
「副業に費やす時間は多くないとはいえ、仕事内容がつまらなかったり、むやみに労力を要するものであれば、多くの場合、長続きしません。
お金を稼ぐためにはまずは継続することが大切。自分が楽しいと感じられること、あるいは得意なことの延長線上に見つけるべきです」(戸田さん、以下同)
しかも、「今こそ、自宅で手軽に副業を始めやすい時代」と戸田さん。
シニア世代を含め、あらゆる人がスマホやパソコンを使って新しい情報を得るだけでなく、新型コロナウイルスの影響でテレワークが特別なものでなくなり、遠く離れた人とのオンライン通話にも抵抗がなくなったのが大きな要因だ。
「今は多くの面から見て、副業を始めるハードルはグンと下がりました。例えば、アクセサリーなどのハンドメイド作品をネット販売する場合、以前はイチからウェブショップを構築して、自ら情報発信して集客……と大変な労力が必要でした。
ところが今は、『minne』や『Creema』といった、作品を販売したい人と購入したい人をマッチングする通販サイトが充実しています。ウェブの知識がなくても簡単に販売できますし、ハンドメイド好きの人がサイトを訪れるので集客効果も期待できるというわけです」
他にも“翻訳が得意な人”と“翻訳を頼みたい人”をつなぐ「Gengo」や“教えたい人”と“学びたい人”をつなぐ「ストアカ」など、副業したい人と仕事を依頼したい人をマッチングするサイト(プラットフォーム)が続々と誕生しているのだ。
とはいえ、きちんとした資格や経験を持つ人しか稼げないのでは?
「決してそんなことはありません。例えば、趣味で水彩画を始めたばかりの人は、『自分の作品を販売、ましてや人に教えるなんて無理』と思いがち。
ですが、まったくの未経験者から見れば、熟練のベテランよりも、このあいだ始めたばかりの人のほうが親しみやすく、質問もしやすいですよね。そこに、その人だけのスキルが生まれるわけです」
リピーターを獲得して月数万円も
では、シニア層がチャレンジしやすい在宅副業とは、具体的にどういったものがあるのだろうか。
「シニア世代の人たちは、これまでに身につけた技術を何かしらお持ちでしょう。まずは、それを活かした副業がおすすめ。それが自分の好きなことにつながれば、なおいいですね。
『あれもしたい』『こんなこともできそう』と、アイデアがどんどん湧いてくるはずです。最初はなかなか収入に結びつかなくても、工夫しながら継続すれば、結果的に月5万円、10万円の副収入を得られるようになったという人がたくさんいます」
例えば「話し相手」の副業も、あれこれ工夫をしながら根気強く続ければ、当初は1分100円だったのがそのうちリピーターを獲得して、気づけば副収入が月数万円になっていた、ということも夢ではない。
戸田さんおすすめの副業を5つ紹介しているので、ぜひ参考にしたい。
「初心者がまずやるべきなのは、自分がやってみたい副業をやっている人のSNSアカウントをのぞいてみることです。
インスタグラムやX(旧ツイッター)、ブログなどで自分が興味のあるワードを検索すると、いくつもヒットしますので、いろいろ見てみて、自分の得意なこと、好きなことを仕事にしている人のアカウントを探してください。
見つかったら必ずご自分でもアカウントを作ってフォローすること。実際にその人のお仕事の仕方を見ることで、自分が副業する姿がより具体的にイメージできると思います」
戸田さんおすすめ!シニア世代も楽しく稼げる副業5選
ハンドメイド商品の販売
手先が器用な人には、アクセサリーやぬいぐるみなど、自分が作った作品を販売する副業がおすすめ。趣味と実益を兼ねているので、楽しく続けられる。
「ただ初心者の人は、値段を安くつけがち。制作時間3〜4時間の作品を1000円で売ろうとする人もいますが、それはNG。腕が上がればおのずと収入につながるので、そこまで続ける根気と厚かましさが副業には必要です」(戸田さん、以下同)
気になる人はネットで「minne」や「Creema」をチェックしてみて。
悩み相談・話し相手
「『人の話を聞くのが好き』という人におすすめ。特別な勉強をせずとも、すぐにチャレンジできます」
育児経験や介護経験がある人は、ぜひアピールを。その人の人生経験を生かした悩み相談を求めて、ユーザーが集まる可能性大。リピーターがつけば、報酬アップも見込める。「タイムチケット」や「ココナラ」などのプラットフォームをチェックしよう。
好きなことで“ポイ活”
スキマ時間を活用した副業の代表格が“ポイ活”だが、これも自分の好きなことにつなげれば苦もなく稼げる。
「ウォーキングが趣味の人は、歩くだけでポイントが貯まるアプリがおすすめ。スマホにダウンロードしてウォーキングすれば、知らぬ間にポイントが貯まります。世界のさまざまな動画を見るのが好きな人には、『TikTok Lite』がおすすめです。
TikTokと同様の動画が見られるアプリですが、動画を見れば見るほどポイントが獲得できるんです。ポイント還元率の高い今なら、月1万円程度稼ぐことも可能ですよ」
オンラインレッスン
「フラワーアレンジメントや、アクセサリーの作り方など、自分の得意なことを、オンラインで教えるのもおすすめです。中には、オンラインで、ピアノを教えている方もいらっしゃいます」
着付け、メイクなど、自分の特技を生かした副業。報酬は自分で設定可能で、1時間3000円、90分15000円と人によってさまざま。まずは「タイムチケット」や「ココナラ」で相場をチェックしてみては。
雑談をライブ配信
「ぜひシニア層にトライしてほしいのが、自分の雑談をスマホで撮影してライブ配信すること。以前、固まらないそうめんのゆで方を配信した75歳の女性のYouTube動画が大注目されました。
このライブ配信なら、スマホさえあれば配信可能なので、動画編集が必要なYouTubeよりもチャレンジしやすいですよ」
報酬は、視聴者からの“投げ銭”。ライブ配信に特化したサイト「Pococha」や「17LIVE」をのぞいてみよう。
【実践者紹介】國本ヒロミさん(60)
趣味だった手相占いを勉強して副業に。常連をつかみ、法人化も
29歳で結婚、30歳で1人目の子どもを出産。30〜40代は、3人の子どもを育てながら専業主婦をしていました。
実は、一番上の子が不登校になったんです。育児書を読みあさりましたが、通り一遍のことしか書いていない。「手相ならこの子のことを知ることができるんじゃないか」と思い、40代後半の時に、以前から趣味だった手相を本格的に勉強し始めました。
そのうち、ワンコインで知り合いの手相を見るようになったのが副業を始めたきっかけ。徐々にお客さんも増え、今は月に10人ほどの個人鑑定を行っています。
長続きしたのは、興味のあることを、無理せず心地よいと思えるスタンスで続けてきたからかなと思います。
3年前に法人化しましたが、今後ますます仕事の幅を広げていきたいと思っています。
國本ヒロミさんのこれまで
29歳 結婚
30歳 第1子出産。その後、2人出産
40代 子育ての悩みから、手相を独学で勉強。同時に、心理学の勉強も
48歳 専業主婦をしながら、副業で手相占いを始める
58歳 (社)手相心理カウンセリング協会設立
教えてくれた人……戸田充広さん●趣味起業コンサルタント。好きなことを活かした起業・副業を専門にコンサルティングを行う。著書に『1日1時間で月10万円の「のんびり副業」』(現代書林)など。
取材・文/後藤友美(ファイバーネット)