「悪質な業者によるトラブルの話は、当店のお客様からも数多く寄せられています」
そう話すのは、東京都内で買い取り専門店を営む金澤裕紀さん。金澤さんは以前からホームページで悪質な業者への注意を呼びかけている。
シニア女性が狙われる!買い叩かれる例も
「被害を受けるのはほとんどがシニア世代の方。特に市場価値に疎い高齢女性が狙われやすい印象です」(金澤さん、以下同)
国民生活センターの発表でも「お皿だけのはずが、売るつもりのなかった貴金属まで強引に買い取られた」「突然訪問してきてしつこく説得され、とにかく家に上がろうとする」などといったトラブルがあったという。
「ほとんどが貴金属狙いの業者ですね。お客様が依頼していないのに、訪問後に『貴金属はありませんか?』と言うのは違反です(※)」※特定商取引法「不招請勧誘の禁止」
今回は金澤さんが見聞きした出張買い取りのトラブルとその対策をご紹介する。
こんな悪徳業者には要注意!出張買い取りトラブル事例
ケース1:大切な夫の形見を10分の1の価格で
70代の女性Aさんの自宅に「不要なもの買い取ります! ペン1本でも大丈夫です」との電話があった。相手の勢いにのまれて依頼したものの、売りたいものがないと気づき、キャンセルの電話を入れたが、「キャンセルはできない」の一点張り。
断り切れぬまま、査定員の男性がAさん宅に来訪。「貴金属はしまってある」と言ったとたん、見せてほしいとしつこく繰り返した。
怖くなったAさんは夫の形見である腕時計や結婚指輪、ネックレスなどを数点見せてしまった。結局、合計4万円程度で買い取られ、あとで息子が相場を調べると10分の1程度に買い叩(たた)かれていた。
「固定電話回線を引いている方に多い事例。通常、私たちは営業電話はほとんどかけません。『なんでも買い取る』と言っても彼らの目的は貴金属製品の格安買い取りです」
また、安く買い叩かれたり、意思に沿わない買い取りをされた際は、クーリングオフができるかご確認を。契約から8日以内なら、売った品物を返却してもらえる。
「住所が知られてしまい、その業者がまた来るか心配になる方も多いですね。営業電話には出ないか、断るのが最善。なかなか電話を切らないなら、話の途中で切ってしまっても問題なし!」
ケース2:善意につけこみ飛び込みで来訪
80代の女性Bさん宅のインターホンが鳴り、ドアを開けると、出張買い取り業者を名乗る男性がいた。
「ご自宅の不用品を買い取るのと同時に、品物を海外の貧困の方にお送りしています。何かありませんか」と言われ、突然のことに戸惑ったが、自宅へ入れることを了承してしまう。
そこからブランド品や貴金属類の買い取りの勧誘が始まり、数時間も居座られた。何か渡さないと帰ってくれそうにないため、Bさんは売る気がなかったブランド物のバッグを渡してしまった。
そもそも飛び込みで訪問し、買い取りを持ちかける行為は法律で禁止されている。
「これもクーリングオフの対象です。当店のお客様のお宅では、『粗品をお配りしています』と言って訪ねてきたパターンもあったそう。しかし粗品はもらえず、それも貴金属目的の買い取り業者だったといいます。
飛び込みで買い取りを持ちかける時点で怪しい。帰らないなら、すぐ警察に通報しましょう」
ケース3:クーリングオフ対象外の百貨店の商品券狙い
60代の女性Cさんは相続した実家の整理のため、出張買い取りを申し込んだ。しかし、現れた業者は引き取ってほしい大型家具には見向きもせず、もっとお金になるものを整理したほうがいいと言う。
Cさんは百貨店の商品券やワイシャツ仕立券などを見つけた。遠方だったり、期限切れで、Cさんにとっては使い道がなかったが、業者は数百円の値をつけてくれたので喜んで渡した(※)。※ワイシャツ仕立券は期限切れでも使えるものがある。販売元へ事前に確認しよう
ところが夫に話すと、どこでも額面どおり使えるはずという。取り消してもらおうと、その業者に連絡すると「クーリングオフ対象外なので無理」とけんもほろろだった。
「大型の家具や本、CD、DVD、商品券などの有価証券はクーリングオフできませんので、事前に十分ご注意を」
口コミを事前に確認してから頼もう
「利用する前には必ず業者のホームページや、口コミを調べて怪しい業者でないか、自分の目でしっかり確認しましょう。また、売りたいものの買い取り価格の相場をネットで調べておくと安心です」
賢く利用すれば片付けやお小遣い稼ぎに役立つ出張買い取り。そこで金澤さんに高い価格で売れるもの、売れないものを教えてもらった。
「残念ながら中には値段をつけられないものもあります。心配なら業者に事前に確認してから来てもらうといいですよ。無料で事前見積もりをするお店も多いですね」
高い値段がつかなくても、引っ越し時や重い物が運べない人にとっては、ありがたいサービスでもある。
「もし初めてで不安なら、家族や友人に同席してもらいましょう。業者を客観的に見てくれる人がいれば自分でも冷静になれますし、金額に納得いかないときでも断りやすいはず。
そのあと売りたくなったら、お店に持ち込んで売るなど、お客様にはほかの手段もあるのですから」
買い取りのプロ直伝!今、高く売れるもの・売れないもの
《高く売れるもの》
◯貴金属類(特に金)
◯ブランドのバッグや財布
◯ゲーム機・ソフト
◯フィギュア
ジャンル問わず人気と知名度があるものは高く売れる可能性が高い。ここ最近は金が値上がりしているため、特にGOLD製品は高く売れるそう。
《高く売れないもの》
×切手
×古い紙幣や硬貨
×汚れやシミのついた着物、衣類
×組み立て家具
古い紙幣や硬貨は売っても基本額面金額にしかならない。かなりまれだが、発行番号の羅列がゾロ目、初版の番号などで、かつきれいな状態であれば高額になることも。
教えてくれたのは……金澤裕紀さん●買い取り専門店リユースマイル代表。ブランド品や貴金属、家具・家電や生活雑貨の買い取り、不用品の撤去、引っ越し作業までトータルでサービス展開。
取材・文/オフィス三銃士